第二十七話 作戦会議、行動開始
ちょっと小話
ラビアの能力はぱっと見強そうですが、よく考えたら結構なゴミ能力です。この能力の真価を発揮する為には数々の熟語と、その意味を知ってなければならないからです。仮にラビア以外の人間がこの能力を持っていたとしても、大して強くはなれないと思います。博学なラビアだからこそ、使いこなせる能力なのです。
「ただいま」
日付が変わる少し前、ラビアとメイが帰ってきた。
「遅かったな2人共。何かあったか?」
「僕には何もないよ」
「アンタには聞いてない。何かあってもアンタならどうせ何とかするだろ。俺はメイに聞いてるんだ」
メイの側で『え?』みたいな表情をするラビアをよそに、メイは先程あった出来事を話し出した。
「…なるほど、ナンパ集団に絡まれてたのか。そこを、ラビアに助けてもらったってことか?」
「いえ、私を助けてくれた人は、別の人です。名前は…聞きそびれちゃったんですけど」
「見た目の特徴とか覚えてない?」
「暗くて…よく見えませんでしたが、真っ黒な仮面と槍を持っていて、長い黒髪の人でした」
そのメイの言葉を聞いたカロスは、少し真剣そうな表情で考え事を始めた。
「その特徴…いや、しかし…」
「どうした?カロス」
「何でもない。メイ殿、その者について思い出せることはもう無いか?」
「えっと…あっ!1つあります!」
「聞かせてくれ」
「『黒鴉』って呼ばれてました!いつかもう一度お会いして、お礼を言いたいです!」
元気いっぱいに言うメイを見ながら、メイ以外の全員は固まった。
「あのな、メイちゃん…」
硝光は、黒鴉の都市伝説をメイに教えた。
「えぇ!あの人、そんな危なそうな人だったんですか!?」
「でも、メイちゃんを助けてくれたんだよな…実は黒鴉って良いやつなのか?」
「とりあえず、目的が1つ増えたな」
「そういえば、どうしてカロスさんがここに?」
「話せば長くなるな…」
カロスは、部下の故郷に来てみたら偶然リーフェウスと会ったこと、街中で淵族を見かけたからその調査に向かおうとしていることを話した。
「なるほど…分かりました」
「さて、これでようやく本題に入れるな」
「黒鴉を探す方と淵族の方で二手に分かれるんだな」
「何かに書いた方が分かりやすいだろう。平安殿、すまないが、紙と筆を貰えるだろうか」
カロスは、紙にそれぞれのグループのメンバーを書いていった。
「こんなものでどうだろうか」
黒鴉班
・メイ殿
・私
・ヴァルザ殿
淵族班
・硝光殿
・灰蘭殿
・リーフェウス殿
・ラビア殿
「通常ならば、淵族の相手は私がした方が良いのだが…今回は少し事情があってな。私は黒鴉の捜索に当たらせてもらう」
「まぁいいんじゃない?正直、誰が行ったってあんまり変わんないだろうしさ」
「というか、アンタ字上手いな」
「であれば、今日のところは寝るとしよう。明日の朝から行動開始だ」
ここで、リーフェウスがとある問題について言及する。
「寝るって…アンタの分の布団は無いぞ?」
「問題無い。私には『コレ』がある」
カロスはそう言いながら、自分の後ろの空間を手で引き裂いた。
「それでは。君達が夢無き夜を過ごせることを願っている」
カロスの姿は裂け目の向こうに消え、裂け目も同時に消えた。
「…旅に向きすぎてるな。アイツの能力」
そうして一行は眠りについた。
そして翌朝…
「おはよう皆の衆。昨夜はよく眠れたか?」
空間を引き裂いてカロスが出てきた。だが、ラビアと硝光以外は全員まだ布団の中である。
「おはようって…今何時だ…?」
「4時だが」
「早いわよ…まだ寝かせてほしいわ…」
「4時間も寝られれば充分すぎるだろう?」
「…そういや、死神って結構な激務なんだよな…前にヴェンジェンスの連中から聞いたぜ…」
「ていうか…あなたが空間を裂く時の音うるさいのよ…」
「それは申し訳ない」
「そういえば灰蘭、硝光はどこに行ったんだ?」
「どうせまたランニングだと思うわ…あの子昔からそうだもの」
その時、部屋の襖が開いて、硝光が顔を見せた。
「お前ら今頃起きたのか?もう4時だぞ」
「『まだ』4時だ」
メイは依然として、気持ちよさそうに眠っていた。
そんなこんなで朝8時、一行は昨晩の会議通りに分かれ、行動を開始した。
「それで、目撃者の話によるとこの古民家に入っていったらしいな」
「てか、見つけたとしてもその後どうすんのさ」
「それは…カロスを呼ぶしかないんじゃないかしら」
「まぁ光が弱点って話だし、何とかなるだろ」
「意外ね硝光。もっと怖がるかと思ってたわ」
「幽霊じゃないなら怖がる必要なんてないからな!行こうぜ!」
元気よく古民家に入っていく硝光。それを見ていた3人が『カロスも幽霊みたいなもんだけどな』と思っていたのは内緒である。
一方、黒鴉班は…
「で、黒鴉とやらの行方はどうやって探すんだ?」
「聞き込みしかないでしょうね…」
「だよなぁ…」
「待て、2人共。向こうの男達…何か話しているぞ」
カロスが指差した先には、痩せ気味の男と、ガタイの良い男が何かを話し合っていた。
3人が近くに行くと、メイが静かに声を上げた。
「あ…あの人達、昨日の人達です!」
「おおマジか!じゃあアイツらから使える話が聞けるかもしれないって事だな!」
3人は物陰で耳を澄ます。
「クソ…黒鴉の野郎…!俺達の仲間を4人も殺しやがって…!」
「落ち着け、俺達に復讐が出来ると思うか?」
「やるんだよ…仲間を殺されて黙ってられるか!」
メイとヴァルザは、声を潜めて話し合う。
「あの人達…相当怒ってますね」
「逆恨みだけどな」
「あれ?カロスさんは…」
気がつくとカロスは、2人の男の前に立っていた。
「私の同行者に暴行を加えただけでなく、制裁を受けて尚やる事が逆恨みとは…全く愚かしい」
「あぁ?誰だお前!こっちは今イラついてんだよ!」
ガタイの良い男がカロスに殴りかかる。
「カロスさ…」
メイが言い終わる前に、カロスは既に対処を済ませていた。
「君に用は無い」
カロスの背後から4本の淡く光る針が飛んでいき、男の四肢に突き刺さった。
「なんだ…これ…」
「さて、私は君に聞きたいことがあるんだ」
「クソ…仲間の仇…!」
激昂するもう1人の男を、カロスは手刀で気絶させた。
「…そういえば、アイツ死神だったよな」
「忘れてましたけど、カロスさんって凄い強いんですよね…」
「2人共、魂からこの者達の記憶が読み取れた。どうやら黒鴉は…『北西の廃村』にいるようだ」
「おう、じゃあ向かうとしようぜ」
「はい、行きましょう」
(この者達の記憶に断片的だが映っていたあの姿…やはり似ている…どういうことだ…)
カロスは内心困惑しながらも、3人で北西の廃村へと向かった。
キャラクタープロフィール㉒
名前 硝光
種族 人間
所属 主人公陣営
好きなもの 運動 魚
嫌いなもの 待つ事 虫 幽霊
異能 なし
作者コメント
雷属性スピードタイプアタッカー。当初は放電的な事もさせる予定だったが、某ゲームのショットガンが似合う通り魔みたいになるのでやめた。最近ハマっている事は変わらず運動。シンプルに楽しいかららしい。イメージした言葉は「稲妻」




