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星命  作者: Isel


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第二十六話 嘘

「全く…あんな見え見えの嘘なんて騙される方が悪いだろっての…」

ラビアは夜の空を翔けめぐりながら呟いた。内心多少は焦っているらしく、背中には三角形を描くように『飛天』『探知』『疾風』の文字が書かれた法輪が浮かんでいる。

「どんだけ遠くまで行ったのさ…」

ラビアは更に速度を上げた。

一方、メイは…

「ま…迷ってしまいました…」

どこかの森の中でトボトボと彷徨っていた。

「うーん…土地勘のある硝光さんについてきてもらうべきでしたね…」

その時、前方から6人分ほどの人影が現れた。

「よう、嬢ちゃん。こんな時間にこんなところで何してんだ?」

6人はいずれもガラの悪そうな男であった。こいつらこそこんな時間にこんなところで何をしているのだろうか。

「わ…私は、ゆーふぉーを見に来たんです」

「はぁ?なんだよそれ?何かは知らねぇがよ、そんなもん実在する訳ねぇだろ!?」

1人がそう言うと、他の全員も一緒に大笑いし始めた。

「う…」

メイは、見知らぬ人間が大勢現れたことによる恐怖や、聞かされたことが嘘だったかもしれないという動揺から、何も言えなくなっていた。

「てかそんなもんよりさぁ、俺らと遊ばない?」

「へっ?」

「いいじゃんいいじゃん!俺らと楽しいことしようぜ?」

「えっと…私は…」

「決まりだな!さ、行こうぜ!」

「えっ!ちょっと、あの!」

メイは、何を言おうとしたのか自分でも分からないまま、来た道を走って引き返そうとした。

「あっ!逃げやがった!」

「追いかけろ!」

「なんでですか!」

その時、メイは硝光に言われた事を思い出した。

『メイちゃん、いいか?変な人に襲われそうになったら、大声で助けを呼ぶんだぞ?』

(そうだ…もうそれしか…)

「だ、誰か…」

そう叫ぼうとしたが、残念ながら追いつかれてしまい、地面に押さえつけられてしまった。

「チッ…手間かけさせやがって…」

(日頃からもっと運動しておけば…)

メイが若干ズレた後悔をしていると、地面に伏したメイの視界に、何やら黒い物体が入ってきた。しかも、かなりの速度でこちらに向かってきている。

「あれは…?」

その黒い物体はメイの側を通り抜け、メイを押さえつけていた男を勢いよく蹴り飛ばした。男は木に背中を打ちつけられ、声も上げぬまま気絶した。

「で…出た…黒鴉が出たぞ!」

黒鴉、と呼ばれたその者は、黒い槍を手に持っており、同じように黒く長い後ろ髪を1つにまとめている、男性にも女性にも見える人物だった。

「怯むな!やっちまえ!」

3人が鉄パイプのような物を持って黒鴉に襲いかかる。だが…

「甘い」

黒鴉は1人の腹部を蹴り飛ばした。

「クソが…!」

死角に回り込んだもう1人が、鉄パイプを力いっぱい振り下ろす。しかし…

「…その程度か?」

確かに鉄パイプは、黒鴉の側頭部に直撃した。だが、黒鴉は全くの無傷であり、むしろ鉄パイプが折れた。折れた武器を眺めて唖然としている男は、黒鴉が手にしている黒い槍に心臓を貫かれた。

「テメェ…!」

最後の1人も果敢に立ち向かうが、この者に至っては真正面から鉄パイプごと顔面を殴り砕かれた。

「う…うわぁぁぁぁぁぁ!」

残りの2人は慌てて夜の闇の中へと走っていった。

「あ…あの…助けてくださって、ありがとうございます」

メイは深々と頭を下げた。

「礼には及ばない。助けを求めるか弱き者の声が聞こえたのでな」

「あれが聞こえたんですか…」

「さて、そろそろ続きといこう」

メイは、首を傾げてこう言った。

「続き?何のですか?」

「まだ、2匹残っている」

そう言うと黒鴉は左手に黒い魔力を集めて、鬼を彷彿とさせる仮面を作り出し、それを装着した。

仮面をつけた次の瞬間、黒鴉は槍をくるりと1回転させてから、足に力を込めて地面を蹴り出した。黒鴉の姿は、一瞬にして見えなくなってしまった。

「あ、名前…」

(聞きそびれちゃいました…でも、いい人だったな。今度会ったら改めてお礼を言いませんと…)

メイの顔に自然と微笑みが浮かんできた時、遠くの方から声が聞こえてきた。

「うわぁぁぁぁ!お、俺は何もしてねぇよ!」

「ちょっとナンパしてただけじゃねぇか!」

「この期に及んで許しを乞うか!」

その一悶着が聞こえてきたすぐ後、メイの耳に2人分の短い悲鳴が聞こえてきた。

メイの微笑みは凍りつき、身体がカタカタと震え始めた。

(え……え?あの人、そんなに容姿無い感じの人だったんですか?え…ええ…?)

メイが心底戸惑っていると、近くから苛立ちの混ざった声が聞こえてきた。

「やりや…がったな…!」

「あ…」

最初に黒鴉に蹴り飛ばされた男が、同じように鉄パイプを持ってメイに襲いかかってくる。だが…

「うるさい」

その男の身体に、縦に銀色の線が入ったと思えば、男の身体は真っ二つに切断された。

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うわっ…大声出さないでよ」

「あ…ラビアさん」

「や、無事かい?」

そこにいたのは、なんとなく察しはついていただろうが、ラビアだった。

「さ、帰ろう。また面倒な事が起こったみたいだよ」

2人は、夜の森の中を歩き始めた。しばらく歩いた時、メイが口を開いた。

「あの…ラビアさん」

「何だい?」

「その…ゆーふぉーって、実在しますよね?」

「は?」

「さっきの人達に言われたんです…そんなもの、いるわけないって」

「へぇ…」

「いますよね?ゆーふぉー!私、ラビアさんのことを信じてますから!」

(面倒なこと言ってくれちゃって…)

ラビアは少しの沈黙の後に、こう言った。

「いるよ。UFOはね。ほら、空を見てみな?アレじゃないかい?」

メイが空を見上げてみると、謎の青白い光が空を舞い、彼方へと消えていった。

「わぁ…!」

「ほらね、正しいのは君なんだよ」

目を輝かせるメイと一緒に空を見上げているラビアの背中には『流星』の文字が書かれた法輪が浮かんでいた。

「よかった…私、ラビアさんが嘘ついてたらどうしようって思ってたんですよ?」

(嘘…ね)

「ねぇ、メイ。この前は言いそびれちゃったんだけど」

「はい?」

「僕は…」

…その時、メイが何を聞いたのかは分からない。だが、一通り話を聞いたメイは、小さくこう呟いた。

「…え」

「色々言いたいこともあるだろうけど…今は胸の内にしまってくれるかい?それと、この事は秘密にしてくれるとありがたい」

「…はい」

その時のメイの目からは、一筋の涙が流れていた。

キャラクタープロフィール㉑

名前 ヴァルザ

種族 人間

所属 主人公陣営

好きなもの 肉 酒(一応酒が飲める年齢)

嫌いなもの 野菜

異能 ストックした魂を操る

作者コメント

火力出せるタンク役。アタッカー4人にヒーラー1人にタンク1人というowのクソ構成みてぇな主人公一行を支える縁の下の力持ち。こいつが攻撃に回るとメイが過労で死ぬ。最近ハマっていることは特にないが「旅っておもしれー」とは思っている。イメージした言葉は「強壮」「狼」

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