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星命  作者: Isel


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第二十五話 騙される方も悪いだろ

ちなみにカロス君の主な仕事は以下の通りです

・なんらかの理由で現世に取り残された魂を奈落に連れてくる

・書類の整理など

・部下に指示を出す

・悪霊などを祓う(霊媒師的な仕事。現世でもたまにやる)

カロス君の主な収入源は4番目の霊媒師的な仕事です

あんまり儲かってないらしいです

スケイドルに着いた翌日、宿泊先の家にて寝そべっているリーフェウスの姿があった。そしてその側では、ラビアが何かをボリボリと食べている。

「暇だ…」

「まぁ最近忙しかったからね」

「他の皆はどこに行ったんだ?起きたらもう居なかったんだが」

「スケイドルって温泉が有名らしくてさ。硝光が皆連れて温泉巡りに行ったんだよ」

「温泉か…俺も機会があれば行くとしよう」

「そうすれば?」

リーフェウスは、さっきから部屋に響いている音が気になっていた。

「…何食べてるんだ?」

「芋けんぴ」

「くれ」

「もうない」

「チッ…」

ほのかなイグサの香りがする部屋の中で、2人は久方ぶりの穏やかな時間を過ごしていた。

「僕達もどっか行かない?どうせ暇だろ?」

「ああ…だが、どこに行くっていうんだ?」

「北西の廃村」

「…は?」

こうして、リーフェウスとラビアは先日『近づくな』と言われたばかりの廃村に訪れた。

「そんなに遠くなかったね」

「立ち入り禁止って訳じゃないんだな」

「まあ…あくまでも噂だしね」

「それにしても酷い有様だ…ディザイアはここでどんな扱いを受けていたんだ?」

「それは本人にしか分からないよ。でも、この辺りにはまだ微かに魔力が残っている…相当強い憎悪を抱いていたんだろうね…」

「そんなこと分かるのか?」

「この世界の生き物は全て、強い感情を抱いた時に力が増すんだ。原理は分からないけどね。少なくとも千年以上は経っているのに、まだ魔力を感じ取れるなんて…驚きだよ」

そして2人は、崩壊した村の跡地をただ眺めていた。

「さて…僕はそろそろ帰ろうかな。君はどうする?」

「俺はまだここにいる。俺自身はここと何の関係もないが、もう少し…感傷に浸っていたい」

「…そう」

ラビアは、ゆっくりと歩いて行った。ラビアの姿が見えなくなった頃、リーフェウスはもはや見慣れた姿を見つけた。リーフェウスがいる場所から、少し離れた場所に建っている、四畳ほどの小屋に向かって手を合わせているカロスの姿である。

「カロス、来てたのか」

「ああ、最近君とはよく会うな。ディザイアも生き返ったことだし、彼の故郷に来てみたんだ」

「何でその小屋に手を合わせていたんだ?」

「ここは…かつてディザイアが幽閉されていた牢であり、彼の幼馴染…星導殿と出会った場所でもある」

「…アンタ、意外と部下思いだよな」

「その台詞を部下から聞いてみたいものだ…」

その時、町の方から悲鳴が聞こえた。

「カロス、聞こえたか」

「ああ、行こう。リーフェウス殿」

「えっ…仕事は大丈夫なのか?」

「安心しろ、頼れる部下に任せてきた」

同時刻、奈落。ヴェンジェンスの屋敷にて…

「あんのクソ上司がァァァァァァァッ!」

「頑張って生月!あと7割だよ!」

「まだ励ます段階じゃない!」

ヴェンジェンスの幹部達が…主にディザイアが、カロスの残した書類の整理などに追われていた。

「ディザイア…やばいわよ…」

「なんだ灰縁!忙しいのは見りゃ分かるだろ!」

「お腹空いたわ…」

「知るか!!!!」

「ディザイア…やべーぞ…」

「今度はなんだ!?」

「書類…燃やしちまった…」

「やってくれたなお前ェェェェェェ!」

一方、硝光達は…

「温泉が有名なだけあって、良い湯だったな」

「だろ?温泉の後は皆牛乳とか飲むんだぜ!」

「そうよ。コーヒー牛乳とか、フルーツ牛乳とか、色々あるの」

「私、フルーツ牛乳っていうの飲んでみたいです!」

もう午後の5時だというのに、朝からずっと温泉巡りをしていたようだ。

「この後はどうする?まだ巡るか?」

「今日のところはもう辞めとこうぜ?のぼせちまう」

「あ、だったら私、先に帰っててもいいですか?」

「いいけど…何かあるのか?」

「フッフッフ…秘密です」

そういうと、メイは足早に去っていった。

「アタシ達も、ちょっと町をぶらついたら帰るとするか」

「ええ、そうしましょう」

と、その時、付近から悲鳴が聞こえた。

「なんだ?ここからそう遠くなかったが…」

「とにかく行きましょう」

「そうだな!」

3人が悲鳴のした場所に向かうと、そこにはリーフェウスとカロスの姿があった。

「リーフェウス!家に居たんじゃなかったのか?」

「暇だから散歩でもしようってなってな」

「カロス!まさか現世で会うなんてな!」

「全員、元気そうで何よりだ」

「皆、挨拶は後にして、騒ぎになってる方に行きましょう」

人が集まっている方に行くと、地面に座り込んだまま慌てふためく若い女性がいた。

「失礼。そこの婦人、少し話を聞かせてもらっても良いだろうか?」

カロスは目線を女性に合わせ、落ち着いた口調で話しかける。

「は…はい…」

「なんかあの人顔赤くなってねぇか?」

今まで言及はされていなかったが、カロスは端正かつ中性的な顔立ちをしている。年頃の女性ならば、多少なり心も動くだろう。もっとも、カロスにその気は全く無いが。

「あ、あの、黒い、インクの塊みたいな、化け物が、私の前を、よ、横切って…」

女性は途切れ途切れに話した。『黒いインクの塊のような化け物』、そう聞いた全員の頭の中に浮かんだ物は同じであった。

「ありがとう。助かった」

「おかえり、カロス」

「あれ…淵族のことだよな。リーフェウスから深淵のことは全員聞いてるんだ」

「なら話は早い。恐らく、あの女性が見た物は淵族で間違いはないだろう…」

「そういえば…カレアスでも似たような話を聞いたわよね」

「何はともあれ、一旦帰って話し合おう。ここにはラビアとメイがいないからな」

リーフェウス達は、平安の家へと帰ってきた。死神を連れて。

「おかえり、皆。…おや、新しい顔がおるのう」

「初めまして。私はカロス。訳あって彼らと同行している…」

『死神』と言いそうになって、カロスは慌てて口を噤む。

「…霊媒師だ。よろしく頼む」

「ああ、よろしく」

一行が泊まっている部屋に入ると、寝そべっているラビアが今度は干しイカを食べていた。

「遅かったじゃん」

「ラビア殿、実は…」

カロスは、一連の流れを説明した。

「ふーん…淵族ね…」

(面倒臭えなぁ…休暇もこれで終わりか)

ラビアが心の中で愚痴をこぼすと、突然平安が部屋に入ってきた。

「おや?1人足りないようじゃが?」

「足りない?そういや、メイちゃんはどこいったんだ?」

「メイさんか。あの子は確か…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

平安が庭で茶を飲んでいると、目の前をトテトテと走っていくメイの姿が目に入った。

「メイさんや。こんな時間にどこへ行くと?」

「私、ゆーふぉーを見に行くんです!」

「『ゆーふぉー』?若者の間で流行ってる言葉かのう…?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…なんて言っていたな」

それを聞いた途端、ラビアは顔が青ざめ、持っていた干しイカを落とした。そして、五感の鋭い灰蘭はそれを見逃さなかった。

「さ…さて、僕は散歩にでも…」

と、退出しようとしたラビアに全員が不信感を抱いた。

リーフェウスが足を払い、灰蘭が地面に押し倒し、カロス含めた全員の武器が、畳に突き刺された。そして全員は同時に言う。

「「「「「何か知ってるだろ」」」」」

「わ…分かったよ、話す、話すから…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スケイドルに来る少し前…

「ねぇメイ、知ってるかい?日が落ちてから空をずっと見上げてると、UFOっていう謎の飛行物体が見られるんだよ」

それを聞いたメイは、数秒間真顔で考え込んだのち、心底驚いたような表情でこう言った。

「ええっ!!!???」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…なんてことがありまして」

「どうすんだよ…メイちゃんの夢を壊さないように誤解解けよ?」

その時、不安そうに平安が呟いた。

「メイさん…『黒鴉』に会ってなければ良いんじゃが…」

「黒鴉?じいちゃん…またその話かよ」

「いや、最近また出るようになったらしいんじゃ」

「なんだ?その黒鴉ってのは」

「スケイドルに伝わる都市伝説じゃ…真っ黒な見た目故にそう呼ばれておる。なんでも、目についた全ての人間に襲いかかり、心臓を突いて殺すのだとか」

平安は、変わらない口調で続けた。

「じゃが、黒鴉に殺害された者の素性を調べると、全員どこかで問題となっている悪人だったそうじゃ。善人ならば致命傷こそ負うものの、命に別状はないそうじゃ」

その話を聞いていたリーフェウス達の台詞は同じだった。

「「「「「今すぐ探しに行ってこい!」」」」」

ラビアは、急いで夜のスケイドルへと出ていった。

キャラクタープロフィール⑳

名前 ラビア

種族 人間

所属 主人公陣営

好きなもの 和食 風 刀

嫌いなもの 面倒事 虫 牛乳の味がするもの

異能 熟語で表せる物の力を操る

作者コメント

クソチート最強オールラウンダー。耐久力が低いという弱点があるにはあるが、大して弱点として機能していない。余程の不意打ちじゃない限り避けられるし。時によって背中の輪っかが出たり出なかったりしているが、真面目な時は輪っかが出る。最近ハマっていることは、メイにしょうもない嘘をつくこと。世間知らず故にアホみたいに引っかかってくれるから面白いらしい。

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