表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星命  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/108

第二十一話 神として

ちなみにもうお気づきかと思いますが、素のラビア君は結構口悪いです。

ラビアの策(?)によって生まれた隙をつき、カロスに大きなダメージを与えることに成功したリーフェウス達。だが、カロスも伊達に死神を名乗ってはいない。

「この姿で戦うのはいつぶりだろうか…誇るといい。君たちは、私にこの力を使わせるほどの実力者達だ」

その声が聞こえた瞬間、カロスを覆っていた魔力の渦が晴れた。

「あれ…カロスか…?」

渦の中から現れたのは、乱れた銀色の長髪、そして背中には赤黒く鋭利な触手、枯れ枝のような2枚の翼を携えた異形であった。その姿からは、威圧感を通り越して畏怖すら感じさせられた。

「ベル!アレも反魂とかいうやつか?」

「いや違う…アレは主の本来の姿だ。俺もあの姿で戦う主はほとんど見たことないぜ…!」

(アレ本来の姿なのかよ。気色悪っ)

ラビアは内心苦笑していた。

「さぁ…続きといこうか」

すると、カロスの周りに淡い光を放つ、突剣のようにも針のようにも見えるものが現れた。それらは一斉にリーフェウス達目掛けて飛んでくる。

「うわっ」

幸いほとんど全員は回避できたが、リーフェウスの腕に一本刺さってしまった。

「大丈夫ですか!?リーフェウスさん!」

「いや…なんか…全く痛くないんだが…っていうか…感覚が無い」

「それが主の権能…言わば神としての力だ!その針だか剣だかが刺さった物体は否応無く全機能が死ぬぞ!」

「じゃあなんで俺は生きてるんだ」

「君達に敬意を表して、私が補足しよう。この力は生物に使った場合、残念ながら刺さった『部位』にしか効果を発揮しない。その上対象が生きていれば、一定時間経てば元に戻ってしまうんだ…」

「へぇ…『生きていれば』ね…」

ラビアは何かに気づいたようだった。

「そう…仮に心臓などの重要器官に刺さった場合…その者は即死だ」

「なんだよそれ!ずるいぞ!」

「戦いにずるいも何もないわよ…」

子供のようなことを叫ぶ硝光に対して、灰蘭が返す。

「さぁ、避けてみろ」

光の針の雨が降り注ぐ。勿論当たれば大損害が出る上、最悪即死である。誰もが大なり小なり焦っている中、意外にも1番忙しい心情をしているのはラビアだった。

(なんで僕だけ人1人抱えて逃げなきゃならねぇんだよ…!)

魔力を使い果たして動けないメイを運ぶ役割は、大分前からラビアが担っていた。心の中とはいえ、口調が変わるくらいにはラビアは余裕が無くなっていた。

(そしてあからさまに僕に割かれる攻撃の数多くねぇ!?可哀想だと思わないのか!?)

「あの…ラビアさん?その…大丈夫ですか…?」

「話しかけるな気が散る!」

「はい!すみません!」

一方リーフェウス達は…

「攻撃を仕掛ける暇すらないな」

「当たればほぼ死ぬしな!」

「なんでそんなに余裕そうなのよあなた」

「アンタらより肝が据わってるんだ。それに、ラビアが狙われてるおかげで避けるくらいはできるだろう?」

「なんでこの状況でちょっとマウント取ったんだよ」

その時、突然硝光が呟いた。

「なぁ灰蘭…なんか地震起きてないか?」

「地震?ベル、なんかやった?」

「1つ前の戦いでエネルギーはほぼ使い果たしてるから俺じゃないな」

「お前やけに静かだと思ったらそういうことかよ」

「これ…地震か?」

リーフェウスのその疑問は的を射ている。地震(?)の正体に真っ先に気づいていたのは、今まで誰1人として近づけすらしなかったカロスであった。

「なんということだ…」

カロスは思わず攻撃の手を止め、呆然としていた。

「な…なぁ…揺れ…大きくなってないか?」

「そういやなんか外が明るいな」

ヴァルザが窓の外に一瞬だけ目を向けると、周辺一帯に青白い光が満ちていた。

「誰の仕業だ…?」

とは言いつつも、全員薄々分かっていた。

「礼をしてやるよ…受け取りな!」

ラビアがそう叫んだ瞬間、天井が崩れて、青白い彗星のような魔力の塊がカロスに直撃した。

すると、この建物が崩れていないのが奇跡と思えるほどの大爆発が起き、辺りを煙で包んだ。

「同じ人間とは思えねえな」

「どれだけ神に愛されればあんな実力を得られると言うのよ…」

「僕の努力とは思わないのかい?」

「努力で辿り着ける境地か?」

「さ、メイ。もう歩けるかい?」

「は、はい!ありがとうございます!」

だが、まだ戦いは終わっていない。土煙の中から、鋭い触手が数本伸びてきた。ほとんどの者は警戒を解いてはおらず、各々の対処で事なきを得たが、ストレスを発散して油断しきっていたラビアは腹部を貫かれた。

「チッ…!まだ生きてんのかよタコもどきが…!」

「ラビアさん!」

「僕はいい!自分でどうにかする!」

奇跡的に重要な器官や血管は避けられたようだが、今の一撃でも倒れないという事実が、全員の戦意を削っていた。

「現世にもこんな伏兵が居たとはな…私じゃなければ跡形も無く消し飛んでいただろう」

「ハッ…お褒めに預かり光栄だね」

「私はもう、君達を侮らないこととする。ここからは本物の戦いだ…!」

「何突っ立ってるんだいリーフェウス!もっと出しゃばれ主人公!」

「主人公ってなんだ!?」

氷を纏った鎌を握り、カロスもいよいよ本気を出す。光の針や巨大な氷柱、そしてカロス本人がリーフェウス達に襲いかかる。

「まだ死ぬわけにはいかないんでな!」

リーフェウスは、ゼンレルとの戦いで発現させた『旋』の力を使い、カロスと距離を空けようとした。だが、本気のカロスの動きは想像よりも素早く、捉えることが出来なかった。

「まずは1人か…」

その時、リーフェウスが考えていたことはただ1つ。

(なんとかなれ!)

だった。

すると、リーフェウスの頭上に『纏』の文字が浮かび、カロスの目の前から姿を消した。カロスの背後には、剣と身体中に風を纏ったリーフェウスの姿があった。

「速度が上がった…?面白い…!ここまでの高揚は久方ぶりだ…!」

氷を纏った鎌と、風を纏った剣が激しく打ち合う。

「リーフェウス!こっちに氷飛ばすな!寒いんだよ!」

「無茶を言う暇があれば援護の1つでも頼みたいんだがな!」

「リーフェウス!前!」

言われた通りに前を向くと、何本もの触手がリーフェウスに襲いかかろうとしていた。だが、ここでカロスとリーフェウス達の決定的な違いが出た。

「させるか!」

ベル以外の近接組全員が、触手を切り落とした。リーフェウスは、1人で戦っている訳ではない。

「1箇所にまとまってくれて有難い限りだ」

カロスの正面に、膨大な量の魔力が集まっている。だが…私の台詞は先程と同じだ。リーフェウスは1人ではない。カロスの脇腹を、一筋の光が貫いた。

「お返しだよ」

「小癪な…!」

「悪いなカロス。チームワークの勝利だ」

その瞬間、リーフェウスの剣がカロスの胴体を袈裟状に切り裂いた。

「見事…だ…」

カロスはもう、起き上がらなかった。

「私達…勝ったんですか?」

「そうだよメイちゃん!勝ったんだ!」

場の全員が口々に喜び合っている中、リーフェウスはただ1人別のことを考えていた。

(えっ…死んでない…よな…?)

まぁ当然の思考である。

「素晴らしいな…私の負けだ。煮るなり焼くなり好きにするがいい」

「ああよかった!生きてた!」

「君は…リーフェウス殿と言ったか。先程まで敵だった者によくそんな言葉が吐けるな?」

「確かに敵だったが…俺は戦闘中ずっと思ってたんだ」

「ほう…何をだ?」

「あんたは戦いの前に『改悛』って言ったよな。それってつまり…自分のやってることが悪い事だってことは分かってたってことだろう?だから…あんたってそんなに悪い奴じゃないんじゃないかってな」

「…」

「勝ったのは俺達だ。約束通り聞かせてもらうぜ?あんたの過去をな」

「燃料切れのくせに偉そうに…」

「…ああ、そうだな」

そして、彼はゆっくりと口を開き始めた。

豆知識①

カロスのあの針ですが、無機物にも有効です。仮にその辺の岩に刺した場合はその岩が粉々に崩れ去ります。やろうと思えば、異能と組み合わせて別次元から一方的に心臓とかに突き刺すというクソおもんない戦法も取れます。作中でもトップクラスのやべー能力です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ