第十五話 飛び交う剣撃
描写がほぼないのでわかりにくいですがラビア君は帯刀しています。私が初登場時に書き忘れたせいです。あと帯刀してる理由は私の趣味です。
満を持して屋敷に入ったラビアだったが、そこに仲間の姿はなかった。
「見たところ、この裂け目に入ればあいつらと合流できるんだろうね」
だが、ラビアはいつまでも裂け目に入りはしなかった。
「あんなに働いたのに行く訳ないでしょ…」
ラビアは一応敵の本拠地だというのに、その真っ只中で眠り始めた。
一方、その頃リーフェウスとメイは…
「いくらなんでも速すぎる…!」
「ホッホッ。お主に儂の相手はまだ早かったかのぉ?」
「命知らずな爺さんだな…!」
「リーフェウスさん挑発に弱すぎですよ!」
(でも実際、この人かなり強い方ですね…態度からして余裕が感じられます…私が出来ることなんて、せいぜいリーフェウスさんの傷を癒し続けるくらい…ラビアさんに教わっておいてよかった…)
「小僧、闇雲に向かってくるばかりでは勝てるもんも勝てないぞ?特に儂のような相手はな。もっと相手の戦い方を観察するんじゃ」
(観察って…動きみえないんだが…あ、忘れてた)
リーフェウスの頭上には、「眼」の文字が浮かんだ。
「やっぱり便利だな俺の能力は!」
リーフェウスは、徐々にゼンレルの攻撃に対応出来るようになっていった。だが、ゼンレルもこれが全力ではない。
「まずは合格じゃな。少し速度を上げてみようか」
「速えってんだよ爺さん…!」
(それにしても…あんな速度で動いてたら普通は頭が追いつかない筈…一体どうやって…?)
メイも、リーフェウスとほとんど同じことを考えていたようだ。お互いの剣撃が飛び交う中、メイが大きく叫んだ。
「リーフェウスさん!聞いてください!」
「は?聞く?」
メイは、杖の先から一筋の光を放った。そしてそれは、リーフェウスの頭に直撃した。
「うっわなんだこれ。頭ん中に声が響く…」
「私の思考を伝えてるんです!集中してください!」
リーフェウスは、ゼンレルの攻撃を受け流しながらその声を聞いていた。そして、リーフェウスの表情には段々と自信が表れていった。
「なるほどな…!」
「ほう。あのお嬢さんが何かに気づいたか。ならば少々本気を出しても良いだろう…!」
その時、リーフェウスは先程の声を思い出していた。
(メイが伝えたことは2つ。1つは、あんな速度を出しているなら普通は頭が追いつかない。だから「予め脳内でルートを設定しているのではないか」という仮説。もう1つは、あの速度と小回りを両立させられるなら、身体はかなり軽い筈という仮説…両方仮説じゃないか)
「だが、やってみる他ないな」
速度を上げた影響で、最早ゼンレルの姿は見えず、ただ銀色の刀の軌跡が微かに見えるだけであった。
(爺さんは手練れ…隙を見せればそこを突いてくる…だったらそれを利用すれば良い…!)
しばらく打ち合いを続けた後、リーフェウスが後ろにのけ反った。
「ほれそこじゃ」
(かかったな…!あとはイメージだ。カレアスに行った時の、ラビアが出した気流をイメージして…!)
微かに笑ったリーフェウスの頭上には「旋」の文字が浮かんでいた。すると、リーフェウスの周囲に激しい上向きの暴風が吹き荒れた。
「なんじゃと!?」
メイの仮説は全て的中し、ゼンレルは空中に打ち上げられた。
「よし…!」
「やりましたね!」
「腰がぁ!」
「ゼンレルさん!?」
「爺さん!?」
メイは、ゼンレルの懐から湿布を取り出して腰に貼ってやった。
「すまない爺さん。あんなに飛ぶとは…」
「構わん構わん。戦地にいるならこの程度覚悟の内じゃ。それより、ほれ。これが鍵じゃ」
「ありがとうございます。ゼンレルさん」
「それにしても、あんた本当にすごいな。そんな老体でここまでの実力があるなんて」
「ほ?儂は老人じゃないぞ?」
「え?どこからどうみてもおじいちゃんじゃないですか」
「儂は『精霊』と呼ばれる種族なんじゃ。神の幼体みたいなもんじゃな。一部の例外を除けば、ほとんどの神は元々精霊なんじゃ。ちなみに精霊の術の中には、姿を変えられるものがある。それで儂はこの姿なんじゃよ」
「ほう。あんたは何の精霊なんだ?」
「確か…『刀』じゃったな」
「見た目通りだな…」
「というか、何故おじいちゃんの身体で活動してるんです?不便じゃないんですか?」
「ホッホッホ。ここだけの話じゃがな…」
メイとリーフェウスは、生唾を飲んだ。
「老人の姿じゃと、現世に行った時に色んな人が優しくしてくれるんじゃよ。ええ思いさせてもらっとるぞ〜」
「…そろそろ、行きましょうか」
「そうだな。じゃあ爺さん、達者でな。それと、ありがとう」
「ああ。お主らも、達者でな。主様を頼んだぞ」
リーフェウスとメイは、裂け目の向こうへ消えていった。
一方、灰蘭と硝光は…
「攻撃の手が止まないわね…硝光、どうにか出来ない?」
「任せろ!縁姉!アタシは覚えてるぞ!昔食べさせられた創作料理の味!あの日々を思い出せ縁姉!」
「嫌なこと思い出させたわね…!」
何故か攻撃の手は緩まず、寧ろ激しさを増した。
「おかしいな…あの料理うまかったのに」
「あなたがバカ舌だからよ!姉さん料理苦手だったじゃない!」
そしてもう一方、ヴァルザとベルは…
「あの棘と茨…相変わらず厄介だな…!」
「怪我をしたのか?俺は無傷だが」
「機械は黙ってろ!俺は生身なんだよ!」
双方とも苦戦(?)しているようだった。
ちなみにラビアは…
「zzz…」
快眠だった。
キャラクタープロフィール⑬
名前 ゼンレル
種族 精霊
所属 ヴェンジェンス
好きなもの 和食 武器 戦闘
嫌いなもの 特になし(強いて言うなら騒音)
異能 頭の中で指定したルートを高速で移動できる
作者コメント
ヴェンジェンスのおじいちゃんで、この作品の敵キャラの中でも屈指の善人。善人というより長く生きすぎて大概のことは許容できるようになっただけ。十四話で灰縁が言ってた「おじいちゃん」はこいつのこと。
イメージした言葉は「閃光」「雲水」