第十四話 対峙
今更ですが本作のタイトルにこれといった意味はないです。もっとよく考えればよかった
ラビアがバルドラスとの交戦を始めた頃、リーフェウス達のいる広間に無機質な声が響いた。
「君達か。歓迎しよう。私と話があるのなら、私の部下から『鍵』を貰え。健闘を祈る」
「主…」
前方を見てみると、リーフェウス達が入ってきた物と同じような裂け目が3つ浮いている。
「ここに入れってことだろうな」
「アタシ達は1番左のやつに行くぜ」
「俺とベルは真ん中のやつでいいか?」
「じゃあ、私とリーフェウスさんが右ですね」
「皆…無事でいてくれよ」
そのリーフェウスの言葉に、一同は無言で頷いた。
硝光と灰蘭が入った裂け目の先には、赤い長髪を携えた女性がいた。その姿を、2人は見たことがあるようだった。
「マジかよ…!」
「姉…さん…?」
「あら、2人とも久しぶりね。何年振りかしら?」
その言葉を遮るように、灰蘭はその女性に斬りかかった。
「どうして…家族を殺したの…!」
口では「どうでもいい」などと言いつつも、やはり灰蘭は家族を大切にしていたのだろうか。その声からは、微かに怒りが感じ取れた。
「私に勝てたら教えてあげるわよ?主様に『鍵』がどうのこうのって言われたけど…正直どうでもいいわ。おじいちゃんも言ってたけど、最近の主様は様子がおかしいらしいじゃない」
「様子がおかしい?具体的にどうおかしいの!?」
「知らないわよそんなの。私だって最近加入したばっかの新参者だし?私が出会った頃には既にああだったわよ」
「灰蘭!今はそんなの聞かなくていい!戦いに集中しろ!」
「偉いわね硝光。改めて名乗っておこうかしら。私はヴェンジェンスNo.8『魔女』灰縁よ!」
一方、ベルとヴァルザは…
「よう…また会ったな…」
「ディザイア…!」
「ベル、お前の話は聞いてるぜ。なんでも裏切ったとかって話だが…」
「もう説明すんのも疲れたぜ…」
「お前らの目当ては俺が持ってる『鍵』だろ?無駄話なんざとっととやめてかかってきやがれ…!」
「話し合いは出来そうにねぇな…!」
「気乗りしねーけどやるっきゃないか…!」
また、リーフェウスとメイは…
「あの方が私達の相手…なんですかね…?」
「他に人影はないしそうだと思う…が…」
リーフェウス達がくぐった裂け目の向こうには、まあまあ歳を重ねているであろう老人がいた。一応刀を持ってはいるが、その刀は杖代わりになっている。
「あの…貴方は…」
「儂か?儂はヴェンジェンスNo.3『閃光』ゼンレルじゃ」
「やっぱりヴェンジェンスではあるのか」
「でも戦意を感じません…もしかしたら話し合いでどうにかなるかも…」
「なぁ爺さん。俺達はあんたらの親玉に会いたいんだが、それにはアンタがもってる『鍵』とかいうのが必要なんだ。それ、くれたりしないか?」
「鍵…?あぁ、これのことか」
ゼンレルは懐から綺麗な暗色の球体を取り出した。
「お主らのことは聞いとるよ。ベルのこともな。儂も、ここ最近の主様は様子がおかしいと思っとったんじゃ」
「ここ最近って…何年くらい前からだ?」
「何年かのぉ…もう千年以上は経っとるかのぉ…」
「それ最近って言うんですか…?」
「ラビアの話じゃ、神とかの人外には寿命が無いらしいからな。時間感覚も人間と違うんだろう」
「お主らが主様と話をしようというならば、止めはせん。じゃが…」
ゼンレルは刀を構えた。そして、瞬く間にリーフェウスの背後へと移動した。
「儂より弱けりゃ話なぞ出来んじゃろう。儂が稽古をつけてやる」
そういうとゼンレルは「ホッホッホ」と笑った。
「そういうことなら遠慮なくやらせて貰おう」
「私もお手伝いします!」
こうして、全員が戦いを始めた。
その頃、屋敷の外では…
「油断…した…」
光を放つ槍に身体中を貫かれているバルドラスの姿と、冷や汗をかいているラビアの姿があった。周囲の地面には、綺麗に折れているバルドラスの大剣と、ラビアの武器が数本刺さっている。
「あの瞬間に…勝利を…確信して…気が緩んだか…」
「驚いたよ。君、魔力が全く無いんだね。どうりで僕が接近に気づけなかったわけだ」
そう言うとラビアは、バルドラスの傷を癒した。
「…?なんの真似だ」
「もう勝敗はついただろ?それに聞いた話じゃ、ヴェンジェンスって元々は治安維持組織らしいじゃないか。そこの最強である君が死んだら、奈落の治安が地に落ちる」
「…恩に着る」
「君の為じゃない。そんなことより、君ほどの実力者がどうしてこんな組織に?」
「…私はかつてのこの世界で、英雄と称された戦士だった。貴様は知らないだろうが…昔の世界は、今よりも現世の魔物や魔族の数は多く、そして凶暴だった」
「それはなんとなく知ってるよ。本で読んだからね」
「私は、主に魔族と戦っていた。人間に害をなす魔族を屠ることが、至高の善行なのだと信じていた」
「否定はしないよ。目の前に同族に害をなすものがあるなら、誰だってその思考に至るだろう」
「だが…私はある日見てしまったのだ。人間が、今まで身を粉にして守ってきた人間が、魔族を虐げているところを」
「…」
「結局、人間も魔族も同じだったのだ。周囲が悪だと言ったものを、本質を理解しようともしないままに虐げる…私はその日から、戦うことを辞めた。馬鹿らしくなったのだ。こんな者たちの為に戦うのが」
「昔から…変わらないね」
「しかし、そんな時私は出会ったのだ。今の主様…タナトス様に。私の心情を全て理解した上で、あの方は言ってくれた。『その力を、私の為に使ってくれ』と。どのみち人間の身体には寿命という限界がある。だから私は、この組織に入ったんだ」
「ふーん…君も大変だったみたいだね」
「同情など不要だ」
「ねえ、君の主様さ、最近おかしなところとかない?」
「無いぞ?ゼンレルやベルはそのようなことを言っているが…まあ彼らは主様の人間時代からの付き合いらしいからな。多少なり人格も変わるものだろう」
「そう。ありがとう、僕はもう行くよ」
「達者でな、若き強者よ」
(No. 1ってことは右腕的な存在の筈だ。そのバルドラスが知らないってことは…タナトスを改心させるのも一苦労かもね)
ラビアは、一足遅れて屋敷の扉を開けた。
(没)キャラクタープロフィール①
名前 ソロン
種族 人間
所属 主人公陣営
好きなもの 自然 狩り
嫌いなもの 自然を破壊するもの
作者コメント
ネタがないので没キャラのプロフィールを書きました。あのシスコンとは全くの別人。能力は考えてないが、武器は弓。名前だけあのシスコンに流用した。ちなみにヴァルザの幼馴染だった。
没理由は以下の通り
・キャラが増えすぎると私が死ぬ
・弓の使い方が分からん
・こいつが旅をする理由がない




