第十二話 修行
前にも言ったかもしれませんが誰が話してるのか分かりづらくて本当に申し訳ない。これでも精一杯の努力はしているから許してください。
「色々あった1日だったな」
夕日を浴びながら、リーフェウスが呟いた。
「全くだな」
リーフェウス達に何があったのかと言うと、まず時はアステールがタナトスに殺害された時まで遡る
「消えた…!」
アステールの体が、光の粒子となって消えたのである。だが…
「それに驚いてるのは君だけだよ…」
「この世界の常識なんだぜ?つっても知らねえだろうけどな。この世界の人間は皆、死んだら体がああなるんだよ」
「そうなのか…」
そして別室にて、周囲の者に真実を伝えて周っていたソロンが、新教皇として感謝の言葉を述べている時…
「あの、兄上…相談が…」
「なんだいメイ?言ってごらん?」
「私…リーフェウスさん達と旅に出てよいでしょうか?」
その後の展開は、想像がついた人もいるだろう。ソロンが自分の立場も忘れて、「僕も行く!僕も行く!」と駄々をこねていたのである。
「主に、あのメイのお兄さんのインパクトが強かったわね…」
「確かにな…でも、良いこともあっただろ?」
「ええ、そうね」
良いことと言うのは、此度の問題を解決した報酬として、旅費が支給されたのである。
「全員の当分の旅費を差し引いても、家一軒程度なら買える値段だね。頑張ってよかったよ、ほんと」
「アンタ…なんかしてたか?」
「僕がいなかったらここに来れてないんだよ?」
「まあそう考えれば…そう…なのか…?」
リーフェウスはチョロかった。
「じゃあ次の目的地は奈落か」
「君…流石に頼み事引き受けすぎじゃない?本来の目的がどんどん遠ざかっていってるよ」
「俺の目的は後でも出来る。だが、ベルやメイの問題は今解決しなきゃいけないことだからな。それに結局カレアスにも有用な情報は無かったし、神のことなら神に聞くのが1番だろう?」
「ま…君の好きにすれば?」
「ねえベル。1つ聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「今の私たちがタナトスとやり合ったとして、勝算はある?」
その質問に、間髪入れずにベルは答えた。
「無い」
「無いのね」
「ほぼゼロだ」
「ほぼゼロなのね」
すると、今度はラビアが口を開いた。
「なら、やることは1つだね」
「ああ。修行だな」
「そんな大がかりなことはしないけど…もう内容は考えてあるよ」
「仕事が早えな」
「灰蘭、硝光、ヴァルザはベルと組み手でもしてな。メイは魔法の使い方を覚えよう。僕が教えるよ」
「組み手?そんなので効果あんのかよ?」
「実践をこなさなきゃ、自分の出来ることなんて分かんないでしょ?それに、君たちは習うより慣れろってタイプっぽいし」
「おいおい、俺の修行はどうするんだよ?」
「君は十分強いでしょ」
「期間はどうするんだ?」
「2週間くらいでいいんじゃない?」
「2週間後に、この場所に集まるってことですか」
「じゃあ、少しの間お別れだな」
「ええ。頑張ってね」
灰蘭、硝光、ヴァルザ、ベルの4人はどこかへと消えていった。
「じゃあ僕たちも行こうか」
「なあ、俺は?」
「君は…あー…本でも読んでな」
「…考えるの面倒になったのか?」
「違う違う。戦闘に限った話じゃないけど、自分の出来ることをよく知って、自分の能力の解釈を広げることは成長の為に重要なんだよ?君の能力的に、想像力を養うのが1番の修行だと思ったんだよ」
「よし、本買ってくる」
リーフェウスは、近くの集落へ走っていった。
「異能まで使わなくても…」
「リーフェウスさん、お金持ってるんですかね…」
「支給された金があるから大丈夫だと思うけど…」
それから全員の修行が始まった。組み手をしている3人は、髪をチリチリにされたり、何mも吹っ飛ばされたりしながらも、確実に実力をつけていった。
メイは、ラビアに教わりながら、魔力の調節や支援系の魔法を覚えていった。リーフェウスは本に齧り付いていた。
「上達が早いね。今日はもう終わりでいいんじゃないかな」
「はい…!ありがとうございました!」
2人は、焚き火を囲んで魚を焼いていた。
「ラビアさん」
「ん?」
「アステールさんのこと…どう思いますか?」
「別にどうとも思わないよ。君は?」
「私は…許せないです。私の父親を殺しただけでなく、兄に濡れ衣まで着せたんですから」
「それが普通だろうね」
「でもこの前、教会の人が話してたのが聞こえたんです。『あの死は、罪に対する報いだ』とか、『死を以て行いを償うべきだ』なんて言葉が」
「へぇ…ついこの間まであの男を支持していた奴らがね…」
「それもそうなんですけど…それ以上に私は思うんです。どんな罪を犯しても、死んでしまえば償いになるのは…なんというか、酷いと思います」
「…」
「幸い私は切り替えが早かったので大丈夫なんですけど、普通なら心に一生消えない傷が残ると思うんです。兄上も、ああ見えてかなり心を痛めていたと思います」
「うん」
「それほどのことをしたのに…死にさえすれば贖罪が済むなんて…余りにも酷いです…」
「確かにね…『やったもん勝ち』みたいな風潮は実際ある」
「ごめんなさい…前に、幸福と不幸が交互に来るからこの世界が好きって話をしたのに…」
「君は悪くないじゃんか。でも残念だけど、これが現実ってやつだよ。君が知らないだけでこの星には、避けようのない不幸や、理不尽な苦しみとか、どうしようもなく醜悪な本性を持った人間とかが沢山いる」
「そう…なんですか…」
「それら全てを『どうでもいい』と一蹴出来るなら、幾らか気も楽になるんだろうね。でも、人間はそれができるほど強くはない。ただ懸命に現実を受け止めて、前に進むことしか出来ない。だから、『一生懸命』なんてものが美学とされたりするんだろう?」
「…!」
「あくまでも僕の持論だけどね。僕は一生懸命な君のことは、嫌いじゃないよ。美学に沿っていて、素晴らしいじゃないか。今だって、精一杯頑張って魔法を覚えようとしてるだろう?」
「ラビアさん…」
「あれ、なんの話だっけ…僕の悪い癖だ。持論を語り始めるとすぐ論点が迷子になる…」
「いえ、なんか元気が出てきました。ありがとうございます」
「それはよかった」
「あの…ラビアさんも、この先辛いことがあったら、私を頼ってくれていいですからね?」
「ハハ。ありがとう」
メイとラビアはその後も少し談笑し、やがて眠りについた。
そして、遂に約束の2週間が過ぎた。
メイとラビアが哲学みてえな話するシーンは書いてて楽しい。定期的に書きたい




