第八十七話 侵略者、急襲
申し訳ない話
結構前にセツか誰かが「三神柱は権能を2つ持っている」みたいな話をしたと思うんですが、権能を2つ持っている神自体は他にも居ます。ただ、当然ながら死ぬ程希少です。多分全宇宙を探しても一桁人数です。分かりにくくて申し訳ないです。
リーフェウスの口から語られたのは、とある2人の神のすれ違いの話だった。真月は何かを思い出したのか、黙って斜め下を見つめている。
「…とりあえず、君達は先に戻ってなよ。真月と言葉を交わせるのは僕だけだ」
相手が相手なので、リーフェウス達はそれに無言で頷く。
「ですが…どうやって帰れば良いのでしょうか?」
「簡単だよ」
ラビアは壁を殴り飛ばし、再び穴を開けた。
「セツ、行きな」
「は?」
「君ならここから落ちても受け身取れるし、大体無傷だろ?先に降りて2人を受け止めてやってほしいんだけど」
「ああそういう事か」
セツはその穴から迷わず飛び降りた。一応言っておくが、ここは遥か上空である。
「さ、次は君達だよ」
「「いやいやいや」」
リーフェウスとアルカディアは声を揃えて手を横に振る。
「何、何が嫌なの?」
「全部だ」
「まぁ…確かにセツが手を滑らせる可能性もあるけどさ…」
「そっちじゃない!」
「ラビアさん…下を覗いた事無いでしょう?先程飛び降りた時も仰向けでしたし」
ラビアはアルカディアに促されて穴から身を乗り出す。
「……つべこべ言うな、行け」
「おい誤魔化すな!ちょっと怖かったんだろ!」
「ほら行けって、セツが可哀想だよ」
「…行きましょう、リーフェウスさん」
「仕方ないか…」
2人は渋々飛び降りた。
「あ、同時に行ったら……まぁいいか」
ラビアはこの直後に地上で起こるだろう出来事を予想しながら、真月に向き直る。
「さて…次はこっちだ」
「…私をどうするつもりだ?先程の少年は…どうせ私を救おうとでもしたのだろう。滑稽な話だ…『救済』でさえ、私を救う事を諦めたというのに…」
「本当に…笑えるよ。アイオーンですら救えなかった奴を、自分が救えると思ってるんだから」
ラビアが笑いながら答えると、真月は少し不思議そうに尋ねる。
「何だ…君はアイオーンの眷属の筈なのに、アイオーンとは似ても似つかない性格をしているんだな」
「そりゃそうでしょ。大体僕この世界嫌いだし」
真月の表情には更に疑問の色が増えていく。
「なら…何故命を賭して私と戦ったんだ?」
「…全部が全部嫌いって訳じゃないんだよ。僕は権能のせいで……何なら人間の頃から、本気で怒ったり喜んだりした事が無い。でも…一部の奴らは、僕を楽しませてくれる。そんな奴らが死ぬのは…少しだけ勿体ないからね」
「…やはり理解出来ないな。それより…」
「何?」
「1人になったのを失策とは思わなかったか?」
真月は赤黒い魔力を纏い、ラビアを見つめる。
「じゃあ何で今僕と話してんの?」
「…何?」
「今まで戦った奴らは皆人間性があったからさ、話してる間は攻撃を止めたりしてた。でも君は違うだろ?君自身に何か理由が無い限り、目の前の物を穢そうとする…君ってそういう神じゃんか」
「……」
真月は戸惑ったように黙り込む。
「何だ……何なんだ…私のこの感情は…!」
「…僕なら分かるよ。君…」
「ちょっと人間と暮らしてみたいと思ってるんでしょ?」
「私が…人と?まさか…そんな筈…」
とは言いつつも、真月の中には妙な納得感が生まれていた。
「理由までは言わないよ。僕が知ったところで何の得も生まれないからね」
真月は俯いて沈黙を貫いている。
「…どんな力も使いよう、だろ?君も僕も…悠久の時を生きる種族だ。長い人生の一興として、人と共生してみるのも悪くないんじゃない?」
『どんな力も使いよう』…それは、遠い昔に聞いた言葉。アイオーンが『ゆうじん』などと称した、アイオーン自身から聞いた言葉。アイオーンに対する憎悪も、世界や人々に対する厭悪も、何一つ色褪せてはいない。真月の心は何一つ変わってはいないというのに、その言葉は何故か真月の中に響き渡った。
「……百歩譲ってその感情を認めるとしよう。だが…私は今まで百億年以上もの間、この世界に災禍を齎してきた元凶だ…その罪禍は…何で贖えば良い?」
「うーん…まぁ、君がその感情を認めてくれたのなら急ぐ理由も無いし、一緒に考えよっか」
「ああ…」
(『ゆうじん』……アイオーン、君は何を思って私をそう呼んだ?)
真月とラビアが考えを巡らせていると、2人は何かに気がついた。
「…アルヴィース」
「気づいてるよ。…ハァ、面倒だな」
その頃、地上では…
「リーフェウス殿…上空を見ろ」
「何だあれ…巨大な…船…?」
大きな黒穴から、戦艦のような巨船が姿を現した。
「リーフェウスさん…あれってもしかして…」
メイが不安そうにリーフェウスに聞く。リーフェウスはしばらくピンと来なかったが、やがてその船の正体に気づく。それは、かつて見たラビアの過去の中で聞いた台詞だった。
「そういや…ラビアって他の星から来た奴らからもこの星を守ってたらしいな…」
「え…?という事は…あの人達は宇宙人って事ですか!?」
メイが驚嘆している間に、その船から大勢の人間が降りてくる。何かの魔法で宙に浮いており、全員銀色の鎧のようなものに身を包んでいる。
「まずいな…離れてても分かる…!アイツら1人1人が結構な実力者だぞ…!」
リーフェウスが焦ったように呟き、武器を構える。それは、彼が未来視で見てしまったからだ。その侵略者達の手によって焦土と化した地球の姿を。侵略者の軍団の先頭に立っている、一際豪華な装備を携えた隊長らしき人物は呟く。
「フフフ…もうすぐこの星も、我らの手中に落ちるのだ…!見よ、我が精鋭達よ…あの赤い月を。我々の勝利を祝福しているかのようではないか?」
一方、その赤い月の内部では…
「悪いけど、僕は一旦仕事に……真月?」
真月が、何かを閃いたような表情でラビアを見ていた。
急展開過ぎるな




