第十話 裏切り者?
作者は頭が悪いので神殿という表現が適切かは不明です。だって宗教なんて関わったことないもん。
「ここにアステールが居るのか」
「大きい建物だね…」
一行がたどり着いた場所は、都市の中心に位置する巨大な神殿であった。
「確かに大きいんですけど、一階しかないので意外と部屋は少ないんですよ」
「アステールとかって奴はどこに居るんだ?」
「1番奥の部屋です」
部屋という表現が適切かはひとまず置いておいて、リーフェウス達は警備の者達をどうにか殺さないようにあしらい続け、ようやくアステールが居るという部屋の前まで来た。
「手加減がここまで疲れるなんて思わなかったな…」
「君たちも魔法覚えればいいのに。楽だよ?」
「お前が1番手加減できてなかったくせに…」
「最後の方なんて素手だったもんな。魔力すら使ってなかったし」
「なんで金属の鎧を素手で凹ませられるのよ」
「おい、雑談はその辺にしてそろそろご対面といこうぜ?」
「そうだな。開けるぞ」
扉を開けると、そこには教皇が座るのであろう玉座と、威厳を感じさせる衣装に身を包んだ男がいた。
「誰だ?ノックもせずに入るとは礼儀知らずな…ああ、報告にあった賊か。なんの用だ?」
すると、メイが前に出て問いかけた。
「…あなたは、何故父上を殺したのですか?」
「そんなことを聞きに来たのか。決まっているだろう?権力の為さ。そんなことすら分からないとは、あの者の娘とはいえ、所詮は子供か…」
その返答を聞くなり、メイは俯いて黙ってしまった。
(予想通りレスバ弱いんだなこの子…)
ラビアが若干の哀れみを向けていると、リーフェウスが静かに言った。
「なるほど、よく分かった。出来るなら人に傷は負わせたくないんだが…アンタになら遠慮なく剣を振れそうだ」
「ほう、私とやる気か…いいだろう。ならば正式に名乗っておこう!私はヴェンジェンスNo.9『星帝』のアステールだ!」
そう言ったアステールの周りに、いくつもの光球が浮かび上がった。そしてそれらは、リーフェウス達を目がけて飛んでくる。
「あいつもヴェンジェンスかよ!やたらとよく出会うな!」
「硝光、集中して。あのおじさん、なかなかやるわよ」
硝光と灰蘭は武器を使って、ヴァルザとリーフェウスは異能を駆使して光球を捌いていた。
「うん?そこにいる機械人は…やはり、ベルか!何故その人間達と共にいる?我らを裏切ったのか!」
「別に裏切ったわけじゃねーよ。ここ最近の主はどうも気がおかしくなってるみたいだからな。俺は主を正気に戻したいだけだ」
「結果的には裏切ったのと同じようなものではないか!ならば裏切り者から先に仕留めるとしよう!」
「…リーフェウス達、3秒経ったら上に跳べ」
ベルの指示の通り、3秒が経ったあたりで、ラビアとメイの後衛組を含む全員が上へ跳んだ。
「腰痛めんなよ!」
ベルは右腕の大砲のような物の砲口を地面につけ、短く叫んだ。すると次の瞬間、部屋の地面、壁、天井、その全てに衝撃波と亀裂が走り、アステールは思わず吹き飛ばされた。
「…俺ら、こんな奴を売ろうとしてたんだぜ」
「全くもって信じられないな」
「何ボケっとしてんだ?隙を作ってやったんだぜ?」
その言葉を皮切りに、灰蘭、硝光、ヴァルザ、リーフェウスの4人は一斉に攻撃を仕掛けた。しかし、アステールもそれだけでやられるほど弱くはない。
(まずい…あの機械人なんぞにここまでの力があるとは…)
だが、ベルがアステールに撃った一撃は確実にアステールの心身にダメージを与えていた。
「君すごいじゃん。てか、ヴェンジェンスのNo.って実力順でしょ?君が5番ならあんなの楽勝じゃないの?」
「あの番号は『フルパワーを出せる状態』を想定して決まるんだ。俺の戦い方と、室内である都合上、もう派手な技は撃てない」
「撃ったらどうなる?」
「生き埋め」
「こっわ」
そんな雑談をしている間、アステールはまた別のことを考えていた。
(せめて誰かをやれれば…賊どもも多少は動揺するはずだ…!)
(誰を狙うべきか…後衛なのは絶対…あの機械人は警戒している。前教皇の娘は位置が好ましくない。あの帯刀している男は…)
そこまで考えたあたりで、アステールの思考は一旦止まった。
(…?なんだこれは…震え?あの男を狙おうと思った瞬間、寒気と震えが…恐れているのか?私が?あの男を…?)
(やむを得ん、消去法で前教皇の娘を狙うとしよう…!恐らく奴は戦いを好まない性格だ、対処も出来まい…!)
アステールの光球は、リーフェウス達の隙間を縫ってメイの方へと飛んでいった。前衛の4人のみならず、その場にいた全員が「しまった」のような顔をした。そしてその光球はメイに直撃した。威力が強めに設定されていたのか、メイの周りには煙が巻き上がった。
(よし…!)
と思ったのも束の間、アステールの思惑は外れ、リーフェウス達の攻撃の手が緩むことはなかった。
(クソ…!何も変わらないじゃないか…!仲間意識というものがこの賊共にはないのか…!?)
さらにそんなアステールに追い打ちをかけるように
土煙の中から、人1人程度なら軽く覆えるほどの大きさの光球が勢いよく飛んできた。
「何…!?」
それが直撃したアステールは、広い部屋の奥の方まで吹き飛んだ。誰もがラビアの仕業だと疑った。だが、ようやく晴れた土煙の向こうにあったのは、杖をアステールがいた場所に向けているメイの姿であった。
キャラクタープロフィール⑧
名前 ソロン
種族 人間
所属 聖教会
好きなもの 妹
嫌いなもの 妹に近づく男
異能 なし(これといった戦闘手段もなし)
作者コメント
キャラ付けの練習も兼ねて作ったキャラ。当初はここまで酷いシスコンではなかった(というかそもそもシスコンですらなかった)今のところ全キャラ中1番印象に残りやすいかもしれないがカレアスが終われば多分もう出番はない。イメージした言葉も無い。