第5話 恐怖
今回は時間がかかりました。
4月26日日曜日。
天制学園は土日祝日などなく「月月火水木金金」と言う信条を掲げており、日曜にも関わらず授業がある。
メタルシルバーによって鍛えられた弥太郎は、課題を直ぐに終わらせた。
そんな彼に生徒が声をかけた。
「万部 弥太郎、君に話たい事がある」
「俺にだと?」
「闇についてだ。校舎裏に来てくれ」
弥太郎は、闇についてだと聞いてひとまず行こうと思った。
校舎裏には呼び出し人である土御門 清也だけいた。
人払いの結界が張ってある。
「それで、話とは何だ」
「ぬらりひょんと戦闘するから今夜、土御門家に来てくれ」
ぬらりひょんとは、闇を率いる最上位の闇である。
現れると10万に及ぶ死者をもたらす。
これまでに3度討伐されているが、その被害から記憶され再び具現するループになっている。
弥太郎は、土御門 清也から詳細が書かれ紙を読む。
「了解、最上位の護符を頼むぜ。ぬらりひょん相手なら生身だとキツイぜ」
「承知した」
「じゃ、あとで」
「待て、万部 弥太郎」
「なんだ?」
弥太郎が振り返ると真剣な顔して、お見合い写真を見せてきた。
「この人はどうだ。かなり美人だぞ」
「だから、要らねーってそういうの」
退魔会は弥太郎の血を取り入れるつもりで招き入れた。
だが退魔の血は厳しく管理されており、年頃の女は相手が決まっていた。
つまり、弥太郎の相手は既婚者か未亡人しかいないのだった。
弥太郎は、他人の女に手を出す下衆さが無い。
「やめろよ、そういうの」
「万部 弥太郎。君の血は人類の為、退魔会に入れなくてはならない」
今回もまた、土御門 清也の猛攻から逃げた。
退魔会は弥太郎が人類を守る為に忙しい事を知っている。
だから、最小の時間で済ませる。
討伐作戦開始の3分前に呼び出し、直ぐさま行動する。
ぬらりひょんの周囲にいる闇を強引にどけ、弥太郎が通る道を作る。
弥太郎がぬらりひょんを対処したら、全て解決出来るからだ。
「さて、お仕置きの時間だ。ぬらりひょん」
「人間風情が吠えるでない」
ぬらりひょんが、火の妖術を繰り出す。
空中や地面で爆ぜる火球を避け、弥太郎は近づいて行く。
「速いのぉ」
ぬらりひょんまで後15メートルになったその時、ぬらりひょんは嗤う。
「甘いわ」
ぬらりひょんは火をばらまいて、逃げ場を無くしていたのだった。
逃げ場の無い弥太郎へ、火が放たれる。
「予測通りだ」
常人なら即、灰になる妖力の火を突き抜ける。
護符が光り、身を守る。
最上位の護符でもぬらりひょん相手なら、1秒しか持たないが問題ない。
ここからなら、超能力の有効範囲まで1秒せずに着く。
その時、ぬらりひょんが超常の身体能力で引いた。
「お主は、近づいてきた。なら近づくと何かあるじゃろう」
弥太郎も超常の身体能力を発揮して追う。
「何ぃ」
人間が超常の身体能力を発揮して、微かに硬直した瞬間に距離を詰める。
ぬらりひょんを超能力の有効範囲に捉えた。
ぬらりひょんが闇を率いて去っていく。
「人を殺さないようにした。ひとまず、旧本邸に行かせた」
「承知した。助力感謝する」
「いいってことよ!」
「ところであの女性はどうだろうか?いい身体だろ」
(助けてメタルシルバー)
『では、帰宅する』
(お願い致します)
『帰宅完了』
(助かったー)
ぬらりひょんに勝てるのに1人の人間からは逃げる弥太郎だった。
人間のほうが恐ろしいと思う万部 弥太郎である。