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欲しがり特急

転生したら欲しがり妹だった件~~裏組織の幹部になった欲しがり妹の話

作者: 山田 勝

「メアリー、お前は我が儘娘だ。故に、孤児院に追放する!この欲しがり妹が」

「そうよ!そこで質素な生活を学びなさい!」


「分かったの~~」


 ・・・私はメアリー、10歳、ゼーダ伯爵家の次女だ。

 お姉様の婚約者にそう宣言された。

 お父様とお母様は何も言わない。


 我家はビジネスをしているが、最近、芳しくないようだ。

 領地経営の他に、カジノを経営している。




「メアリー様、グスン」

「私らも、いずれ解雇になりますが、これはヒドイ」


「いいの~、我が儘娘なの~~」


 手持ちの荷物は、鞄に下着数着と、ヌイグルミのミディちゃんを抱え、今着ているヒラヒラのドレスの状態で、孤児院に連れて行かれた。

 王都の貧民街にある。


 カジノに客が入らない。

 今、絶賛リストラ中だ。

 私までリストラされるとは、トホホだ。


 まあ、仕方ない。




 ☆☆☆数ヶ月後、ドングリよい子孤児院



「メアリーのバーカ!バーカ!我が儘娘!」

「バーカという方がバーカ!トムの大馬鹿、壮大な馬鹿、馬鹿の三乗!」

「な、何だと!さんじょうって何だよ。グスン」

「ホ~レ、何か言ってみるの~~~フガー!」


 とトムを撃破した。

 今日は善い日だ。


「グスン、シスター様、メアリーが虐める!」

「まあ、まあ、ケンカするほど仲が良いのよ」


「メアリー、年下の子に勉強を教えて上げてね」

「分かったの~~~」





「皆で、お歌を歌うの~、九九の歌~」


「「「「は~い」」」

「「「「22が四~・・・・・」」」


 シスター様は、10代でお若い。元貴族のようだ。どこか、令嬢特有の甘さが抜けきれていない。

 だが、それが良い。


 勉強が終わった。おや、執務室で声が聞こえてくる。



「そ、そんな。寄付を打ち切るって、お考え直し下さい」

「フン、孤児院のくせに、孤児たちに、新品の服と靴を渡す。もったいない」



「グスン、グスン」

「シスター、どうしたの?」

「な、何でもないわ。メアリーちゃんには関係ないことよ」


「そーなの」



 大人は子供に経済の事情を説明しない。それが、有難くも、頼られていない感じがして寂しい。


「まあ、仕方ないの~~内職頑張るの~~~」

「「「は~い」」」


 しかし、内職、売れないというか、お情けで買ってもらっている状態だ。

 ここで、造花を作り。朝、街角に出て、買ってもらう。

 一端、売上金を集めて、材料を買い。残りは、平等に分ける。お小遣いにさせてもらっているが、寄付しても、孤児院の運営の足しにもならないな。


 何か良い商売はないか?


 と思って、寝ていたら、


 奇妙な夢を見た。





 ☆☆☆夢



「先生、人権の広がり。何とかの宣言とか、箇条書きに書かれていても、さっぱり分かりません。どうして、広がったのですか?特に社会権は分かりません。労働組合ですか?」



「ほお、星苅君、良い所に、気がついたな。

 実は、富裕層からの恐怖もある。貧困層が革命を起こしたら、という意識も強かったが、

 好奇心もあった。19世紀末から20世紀に掛けて、貧困ツアーなるものが流行ったのだ。

 真の金持ちは、貧困を珍しいものと思う。貧困層は、一部屋に10人家族が暮らしている時代だ。ツアーの結果、貧困は本人の自堕落だけが原因ではないと実感した。金が貧民に落ちるようになった。他にも原因があるが、富裕層からの働きかけも大きいのだ」



 ・・・・・・



 チュン♩チュン♩


 目が覚めた。

 ドワーフ帝国みたいな国で、私はアカデミーの学生だった夢だ。黒髪だったな。

 あれは、何だったのだろう。


 そうか、貧困ツアーか。


 朝、造花を売りに行くと言って、私は裏組織に向かった。


「なんだい。嬢ちゃん。ここは子供の来るところじゃないよ」


「知らないの。良い儲け話があるの~~~」


「帰った。帰った。あ、親分!」


「おう、儲け話だったら、話だけは聞いてやる。無料だよな」


「はいなの~~~」



 ・・・・




「ほお、俺らが、貧困家庭体験ツアーを斡旋する?安全を保証しろと、さすがに、裏組織の名では誰も話を聞かないぞ」


「シスター様の女神教会の名を使うの~、『友愛促進事業団』の名前を貸すの~一割ぐらい欲しいの~~」


 ・・・友愛促進事業団、孤児達が作った造花を売る時の正式な法人名だ。

 微々たるお金なので、一応、年長の私が、仕切っている。



「まあ、やってみるか?」



 ・・・・



 当たった。大人気ではないが、三世代12人家族への一泊ツアーが、金貨1枚で売れた。

 絶対にお化けが出るお化け屋敷だ。

 怖いもの見たさで、若い貴族が来た。


「ヒエ~、一つのベットで6人寝る!夫婦生活はどうしているのだ?」


「お客さん、聞かない約束だよ。ほれ、皆、詰めて」

「貴族のお兄ちゃんはこっちだ。娘と女房の反対側だ」



「ヒィ、朝飯は、こんな貧しい。何だ。この魚の揚げ物は!」

「魚って安いのさ。これでも豪勢だよ」

「奥方は作らないのか?」

「はん?今は買う方が安いのさ。薪代がね。あたしも行商で朝早いんだい」



 絶対に安全なダークな遊園地で、評判は上々だ。



 勿論、この家族には銀貨2枚が支給される。売り上げの二割だ。

 だから、貴族が無礼な事を言っても我慢してくれているし、説明もしてくれる。



 やがて、テーマパークのようになった。

 貴族のカップルのデート場所にもなった。

 なら、それからも、お金を取ろう。


 演出を考えた。



「メロディ、ここが貧民街だよ」

「まあ、小汚いわ。あそこに鼻水を垂らしている子供が物欲しそうにみているわ。お小遣いをあげなきゃ」



「コラ!金を出せ!」


「ヒィ、強盗?!」

「メロディ、ここは僕が守るよ!背中に隠れて!」

「ロメオ!」


 強盗かと思わせて、


 パチパチパチ!


 住人達が拍手をする。


「兄ちゃん。彼女さんを庇って、偉いね」



「ええ、演技?本物かと思ったよ」

「エへへへへ、不用意に、貧民街で、財布を出してはいけませんぜ。その教育です」


「なるほど、迫力があった」

「エへへへ、本職なもので」


「そうだ。素晴らしい演技にチップをあげよう」


「毎度!」



 勿論、貴族の兄ちゃんには事前に知らせておく。

 ゴロツキたちも、協力的だ。


 人は犯罪よりも安全なことで金を稼げれば、そっちに行くのだ。

 富の再分配か?



 夜、また、夢を見た。




 ☆☆☆夢



「何なの~~、これ、アリスの作家なの~」

「星子、これね。イギリスで、19世紀ぐらいに、可愛い女の子に、物乞いの格好をさせた写真が一部の上流階級で流行ったのよ。意味不明だわね。」


「へえ、今で言うコスプレ?」



 ・・・・・



 チュン♩チュン♩



「・・・やってみるか」



 この孤児院で、マリーちゃんが、可愛い、いや、よそう。

 私が実験台になるべきだ。


 シスター様は、寄付でもらった服は、孤児には着せない。

 前に、孤児院の年長組が、寄付でもらった服を来て、平民学校に行ったら、その服を寄付した家の子がいて、イジメの対象になったそうだ。


 シスター様は偉い。

 倉庫にあった小汚い服を着て、魔道写真店に行く。



 ☆☆☆魔道写真



「帰った。帰った。ここはお前みたいなガキが来る所ではない」


「おい、撮ってやれ」


「フランクの親分さん・・・分かりました」



 パシャ、パシャ。


 ミディちゃんと一緒に写った。

 自分でも、あれだけど、可愛い。

 ミディちゃんのヌイグルミは高級品だ。まだ、伯爵家が没落する前に買ってもらったヌイグルミだ。


 これは、売れるか?


 と思ったが、


 売れた。



「・・・この高級そうなヌイグルミと、貴族の顔立ちの美少女、これは、・・・・かわいそー!没落した令嬢か。僕が保護してあげなきゃ!」


「ウホ!こんな子がいたら、妹にするでごわす!」



 ドサ!


 ファンレターが沢山、届くようになる。

 お金が入っている。

 これは、もらっていいのか?



「ヒィ、メアリーちゃん。教会に、友愛促進事業団から、沢山の寄付金が届くようになったわ!貴女、何の商売をしているの?」


「そうなの~、シスター様のお人柄のおかげなの~~~」

「嘘をおっしゃい!」


「実は・・・・」


 と本当の事を話した。


「ヒィ、金貨300枚・・・どうすれば」

「いきなり、待遇を良くしたら、堕落するの。お金があって、何に使って良いか分からなかったら、教育と貯金なの」


「そうね。そうするわ」


 教師を雇い。孤児に本格的な教育を施すようになった。


 あのトムも、鼻水を垂らしながら、食いついていく。


 教育終了の証明書をもらえば、商会に入れるかもしれない。




 やがて、貧民街に、人が押し寄せるようになり。更に、豊かになってきた。


「「「お嬢様!お久しぶりです」」」

「事務をお願いするの~~~」


 友愛事業促進事業団に、元ゼータ伯爵家の使用人たちを雇う。

 専従事務員だ。やはり、大人で無いと、上手くいかないことが多々ある。

 私も、日中教育を受けるから、留守しがちだ。



 しかし、親分から相談を受けた。


「貧民を雇って、道や下水道の整備をしようと思うちょる。メアリーの意見を聞きたい」


 え、そうしたら、貧民街で無くなる。

 人が来なくなる。

 どうしようか。


「少し、待ってほしいの~~」

「頼りにしているぜ」




 これは、アカン、普通の平民街になったら、飽きられる。


 と思っていたら、また、夢を見た。




 ☆☆☆夢



 ☆大東京ドイッチュランド村



 野外の舞台で歌っているお姉さんの夢を見た。



「♩ヨ~デル、ヨ~デル、オホホ~~~♩」


 うわ。綺麗な金髪のお姉さんが、歌っているけど、何故、ヨーデル?ドイツで、スイスに近いところは、ヨーデルを歌っているのか?

 でも、ヨーデルはないだろう。


 歌い終わったら、お姉さんは、確かに言った。


 手を振り満面の笑みで、拍手に応えながら。


 パチパチパチ!


「Thank you!Thank you!」


 ドイツ語じゃないのかよ!


 7歳の私は、世界の秘密を知った気分になった。


「星子、綺麗な歌声だったな。さすが本場だ。観覧車に乗ろう」

「グスン、何で、サンキューなの~~、ドイツと観覧車、関係あるの?」

「まあ、どこも、そんなものよ。お母さんもね。子供の頃、テレビの番組に、観客として行ったのよ。もうね。やらせだらけだったわ」




 ・・・・・



 バサッ!


「うわ。これでは、飽きられる!その前に・・・」


 私は、フランク商会に行った。

 案は一つ。

 観光と割り切り。

 貧民街の一角を、貧困層テーマパークにする。

 貧民を雇う。

 貧民に、それらしい貧民の演技をさせるのだ。


「まあ、やってみるか・・・・」



 やがて、私のいた貧民街は、貧民テーマパークとなり。

 強盗、追い剥ぎ、の元現役が、演技する。

 殿方が婚約者を守る。

 みたいなアトラクションも磨きを掛けた。


 好評だ。

 しかし、目玉がない。

 どうしようかと、思っていた。


 もう、さすがに、変な夢は見ないだろう。

 これで、頭打ちだ。





 ☆☆☆夢


 やっぱり、夢を見た。今日は二つだ。



 ☆☆☆大学食堂


 アカデミーの食堂だ。

 鏡の中で人がしゃべっているのを、皆で見ている。




『カジノ法案反対です!ギャンブル依存症の対策はされておりません!』

『あの、パチンコは?』

『政府はしっかり、ギャンブル依存症の対策をとるべきです!』

『だから、パチンコは?』




 ・・・・・


「カジノ?別に良いんじゃない?」


「いや、俺、K国のカジノに行ったことがあるけど、カジノの前に、人が屯っていたよ。K国でも所得で入場制限をしているけど、普通に地元の人が入って、高額なギャンブルにどっぷりはまって、社会問題になっているみたいだね。

 アメリカのように、砂漠のど真ん中に作るとか・・・しないと、日本では難しいかな」


「うわ。日本は、パチンコだらけ。江戸時代は賭場があったし、この国はおかしいよな」


「でも、江戸時代の賭場は、賭けすぎる人には、親分さんが、小言を言って、帰らせたそうよ。狭い共同体だから、破産したら、もう、これ以上お金を落としてくれない。

 持続可能な搾取を目指していたそうよ。

 それを、江戸時代の儒学者が、勘違いして、義民伝とか書いたみたいね」


「ふ~~ん」



 ☆家


「星子、インターネットで検索してくんろ」

「大爺ちゃん。何を?」


「国会図書館じゃ。ワシが、戦後、発刊した雑誌が載っているかもしれんのじゃ。老人会で聞いたのじゃ」


 え、大爺ちゃん、カストリ雑誌を刊行していた?


「おほ、さすがに、内容は載っていないが、表紙と目次だけみれるのう~、長生きするものじゃ」


「うわ。下宿生と未亡人・・・若奥様の夜の事件帳・・・これ、曾孫に探させるものじゃないよ」


「ホホホ、エロ、グロ、ナンセンスが大衆娯楽の基本じゃ。最近のアニメつうのも、これを上手く隠しているのじゃ。ほら、ワシがいつも見ている時代劇は、エロ、グロ、ナンセンスがぎっちりつまっとるぞ。いつも、女忍者が、お風呂に入るシーンがあるじゃろ」


 ・・・うわ。よくGHQに捕まらなかったな。







 ・・・・・・・




 チュン♩チュン♩


「何で、こんな夢」


 と思ったが、この日は、フランク商会の幹部会だった。





 ☆フランク商会幹部会



「あ~、資金も貯まったし、賭場から、カジノにしようと思うちょる。皆の衆の意見は?」

「「「賛成!」」」


「反対なの~~~」


「メアリーの姉御!何故?」


「持続可能な搾取にならないの。必ずこの中でも行く人がいるの~~、親分さんは、賭けすぎる地元民がいたら?」


「おう、説教して帰すな・・・借金は返せるギリギリをねらっているけえ」


「そうなの。きめ細かい管理が出来なくなるの~~~」


「でもよ。どうする?」


「賭場はそのまま、娯楽の基本は、エロ、グロ、ナンセンスなの~~」




 ・・・・・・




 それから、売れない脚本家に、夢で見た時代劇を、書かせて、シスターを通して、女神教会の許可を得た。


「ほお、これは、布教になる。入浴シーンは却下じゃ」


 いろいろやりとりをして、初めて、箱物を作った。



 カン!カン!カン!


「しかし、これほど、大きな劇場を作って、いいんですかね?姉御」


「分からないの~~~」


「ええ」



 しまったか?

 と思った。


 しかし、蓋を開けて見れば、好評だった。


 私も出演をする。



「ゴホゴホ、いつも、すまないね」

「お父ちゃん。それは言わない約束なの~~」



「「「「可愛いーーーーー」」」」

「メアリーちゃん!」


 やがて、劇の中盤になると、

 女カゲのアクションが始まる。


「エイヤー!」


「「「ギャアアアーーーー」」」


 女の子の蹴りだ。半ズボンの衣装、生足の御御足をあげて、チアガールのように・・・

 あれ、チアガールって、何だっけ?



 そして、最後は、



「静まれ!静まれ!この方はどなたと心得る。法王猊下なるぞ!」

「この聖剣が目に入らぬか!」


 ピカッ


 と剣が光る演出をする。


「「「「ハハハハハハハハーーーーー」」」

「そ、そんな。おしまいだ。悪さがバレた」

「観念します」





 そして、最後にイケメンを出す。これは、貴族役だ。貴族に配慮する。



「ご領主殿、しかと、処罰をお願いしますぞ」

「はい、法王猊下、民を正しく導き。ゴロツキを成敗します」



 ゴロツキが、ゴロツキを成敗する劇をしている。


 親分さんは、器が大きくて、助かった。


「まあ、ワシらが面に出たら、おしまいじゃけえ」




「さあ、法王様世直し旅、パレードを行いますよ!」


「「「「ウワーーーーーー」」」

「見る。見る」

「「「「メアリーたん!」」」


 最後は、パレードをして、おしまい。


 これを、月に四回公演、演劇と、貧民テーマパークで、やがて、皆が、ウハウハしていたときに、


 お姉様を見かけた。劇の観客席だ。


 熱心にメモを取っている。


「フン、低俗ね」


 真似をするのだろうか?

 いや、絶対にする。お姉様はズルいのだ。





「大変だ。勝手に、本が出版されている。オリビア・ゼータが作者だ」


 お姉様だ。


「どれ、どれなの~~」


 本の内容は・・・


『ゼータ伯爵家のオリビーは感心な令嬢だ』


『とんでも、ございません。ご老人に親切にするのが、貴族ですわ』


『ええ、それに引き換え。妹のメリーは』


『ウワ~ン、法王様としらないで、ジジ呼ばわりしてごめんなさい!』



 パタと本を閉じて、


 ポイッ


 した。これは、売れない。売れて欲しくない。典型的なメアリースーだ。

 って、何で、こんな言葉を知っているのか?私の名前が入っているじゃん。

 確か、主人公を自分に重ね合わせて、異常に優遇する。


 私は夢を見る・・・これは、もしかして、転生者?

 なら、もっと、スゴイ発明をする。

 いや、でなければ腑に落ちないことが多々あった。


 もしかして・・・・



「お嬢様!ゼータ家の方々が来ました!」


「え、お父様と、お母様が?」



 ・・・・・・


 やつれている。もうすぐ、破産だそうだ。


 うわ。婚約者、上を向いている。ズボンのチャックがしまっていない。放心状態だ。お姉様の本、失敗したな。



「メアリー、後ろ盾になって差し上げます。だから、顧問料を上納しなさい」


「やーなの。法王様が後ろ盾なの~~~」


「ヒィ、何、その免状!」


 この劇をやれるのだから、女神教会が、後ろ盾と分らなければおかしいだろう。

 免状を見せた。



「・・・何か、良いビジネスはないか?カジノを廃業して、破産間近だ」


「領地経営で我慢すればいいの~~~~」



 あまりにしつこいので、絶対に、儲かる方法を教えたら、



 お姉様は言う。


「フン、これくらいの方法、知っていたわ!」


「ごめんなさいなの~~、これぐらいしか分からないの~~」


・・・いや、こいつ、絶対に知らないだろう。まあ、いいか。





 しばらくして、ゼータ伯爵のタウンハウスの前に、『売家』の看板が立てられた。

 綺麗な文字だ。



 売家と貴族風に書く三代目って慣用句あったな。

 事業が成功して、成り上がって、三代目ぐらいに、没落する。


 三代目は、高度な教育を受けて、綺麗な貴族の文体を身につけている皮肉だ。


 まあ、いいか。


「あのお屋敷を買うの~~~」


「はい、メアリー様、凱旋をなさるのですね」


「違うの~~、今度は、逆なの、金持ちツアーなの!」


 ・・・小金持ちの平民に、貴族体験ツアーを提供する。

 皆、元、貴族の使用人達だ。本物だ。


 これは、イケるか?


「グシシシシシシシシシシなの~~~」


「メアリー様・・・」


「トムたちと見回りに行くの~~~」


「はい、お気をつけて、話を通しておきます」



 ・・・・・・





「ところで、メアリーの姉御、絶対に、儲かる方法って何ですか?」


「ギャンブルなの~~~~」

「え、そんな馬鹿な」


「二倍以上の配当の単純なギャンブルをやるの~~~」


「それで?」


「トム、考えるの~~、負けたら、二倍の賭け金でまた賭けたら、損を取り戻せるの~~~勝つまでやれば儲かるの~~」


「なるほど」


「なるほどじゃないの~~、6回も負けたら、損を取り返すには、64倍の賭け金が必要なの~~~」


「うわ。馬鹿だな」


 すっかり、トムは舎弟になった。

 今日も孤児院の子を引き連れて、見回りに行く。

 これで、お小遣いを渡している。


 ただ、あげても良いけど、それではためにならない。



「メアリーの姉御!お野菜です。持って行って下さい!」


「有難うなの~~」


「巫女様。今度、相談に乗って欲しいです」


「いいの~~、商売ならお金頂くの~~」



 あれ、巫女?それに、私、裏組織の幹部のようになっていないか?



 アカン、アカン!


 メアリーは、いつの間にか、巫女と呼ばれるようになった。

 夢と言う託宣を受けるので、あながち、間違いではないだろう。


 貧困層と富裕層の架け橋になれる貴重な存在として、王宮から声がかかるのは、もう少し先だ。


 異世界も地球もそう変わりないのかもしれない。






最後までお読み頂き有難うございました。

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