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オリオン座を横切って 〜星座を君と探す夜〜

作者: 昼咲月見草
掲載日:2022/12/16

 今日の夜は双子座流星群が見えるのだと。


 朝のニュースでアナウンサーが言っていた。


 流星群も、流れ星のように願い事を叶えてくれるのだろうか。







 うちと隣の家に住んでいる家族は仲が良くて、ときどき一緒にご飯を食べたりもする。

 一緒に双子座流星群を見ようという話になって、今日は我が家で集まって、みんな庭に出て空を見上げていた。


 年が明けたら隣の家はみんな、田舎に引っ越してしまう。

 リモートワークでお父さんの出勤が減ったため、東京を離れて実家の近くへ移るのだそうだ。


 庭では夜に外に出られて嬉しいらしい弟妹達が騒がしい。

 

 わたしはその家の同い年の幼馴染を屋上に誘った。


「ねえ、上行かない?」


「そうだな、ここはチビ達がうるさい」


 わたし達の住む町は、夜でもあちこちの空が明るくて星もあまり見えない。

 うちの屋上で2人きり、彼は空を見上げて言った。


「やっぱりもっと田舎のほうじゃないとダメかなあ」


「うん、そうかもね」


「おまえ、双子座ってどこにあるか知ってるか?」


「ううん」


「まあ上見てればそのうち見えるよな」


 そう言って彼は空に並んだ三つ星を指す。


「あれがオリオン座だろ。あれくらいならわかるんだけどなあ」


「そうだね」


 わたし達はそれ以上、何も話さず空を見続けた。


 流星を見つけられたら、彼に告白しよう。

 わたしはそう決めていた。

 ずっと大好きだった彼。

 幼馴染以上になりたくて、でも今の関係を壊したくなくて、ずっと告白をためらっていた。


 でも今夜、一緒に流れ星を見つけられたら。


 そんな勝手な願掛けをわたしはしていた。


 東京の空は明るくて。

 ニュースで言ってた見え出す時間はわたし達には遅すぎて。

 だけど見えたら絶対言おう。そう決めていた。


 空気が冷たい冬の夜は、星が綺麗に輝いて、でも流れ星なんかひとつも見えないまま時間だけが過ぎていく。


 そのとき。


「あっ!」


「え、あれ!」


 オリオン座を横切って、大きなほうき星みたいな何かが尾を引いて輝いた。


「なんだ、あれ……」


「流星群、じゃないよね……。もしかしてUFO、とか?」


 あはは、と笑ったわたしをよそに、彼は手元のスマホを操作する。


「なんか、オリオン座を横切る宇宙ステーションとか人工衛星とかがあるらしい」


「宇宙ステーション!?」


 UFOよりは現実的で、だけれど何か凄いものを見たような気分になる。

 

「ああ。肉眼で見えるかはわからないけど、もしかしたらそれかもな」


「そっかあ……でも凄かったね」


「そうだな」



 またしばらく無言になったわたし達に、庭からママが声をかけてくる。


「もうすぐ9時よー、降りてらっしゃい」


「はあい」


 返事をして、言えなかったな、とわたしは下を向く。


「……見えなかったね、流星群」


「まだ時間が早いからな」


「そうだね……」


 まだぐずぐずしているわたしを見て、彼が言った。


「宇宙ステーション」


「え?」


「いつか、一緒に行こう、宇宙ステーション」


 わたしが突然の話にぽかんとしていると、彼が続ける。


「俺たちが大人になったら、きっと行けるようになってる。そのときは、一緒に行こう」


 そしてわたしの手を握った。


「電話する。だから、その……、あれだよ、つまり」


 暗い中、それでも彼の顔は真っ赤だ。


「だから、他の男と付き合ったりすんなよな……!」


 わたしは彼の言葉に泣きそうになって、そして笑った。


「うん!」



 屋上から降りる前、もう1度空を見上げたわたしにつられるように、彼も上を向く。


 そのとき、夜空を大きく横切って、長く長く流星が伸びていった。












挿絵(By みてみん)



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