オリオン座を横切って 〜星座を君と探す夜〜
今日の夜は双子座流星群が見えるのだと。
朝のニュースでアナウンサーが言っていた。
流星群も、流れ星のように願い事を叶えてくれるのだろうか。
うちと隣の家に住んでいる家族は仲が良くて、ときどき一緒にご飯を食べたりもする。
一緒に双子座流星群を見ようという話になって、今日は我が家で集まって、みんな庭に出て空を見上げていた。
年が明けたら隣の家はみんな、田舎に引っ越してしまう。
リモートワークでお父さんの出勤が減ったため、東京を離れて実家の近くへ移るのだそうだ。
庭では夜に外に出られて嬉しいらしい弟妹達が騒がしい。
わたしはその家の同い年の幼馴染を屋上に誘った。
「ねえ、上行かない?」
「そうだな、ここはチビ達がうるさい」
わたし達の住む町は、夜でもあちこちの空が明るくて星もあまり見えない。
うちの屋上で2人きり、彼は空を見上げて言った。
「やっぱりもっと田舎のほうじゃないとダメかなあ」
「うん、そうかもね」
「おまえ、双子座ってどこにあるか知ってるか?」
「ううん」
「まあ上見てればそのうち見えるよな」
そう言って彼は空に並んだ三つ星を指す。
「あれがオリオン座だろ。あれくらいならわかるんだけどなあ」
「そうだね」
わたし達はそれ以上、何も話さず空を見続けた。
流星を見つけられたら、彼に告白しよう。
わたしはそう決めていた。
ずっと大好きだった彼。
幼馴染以上になりたくて、でも今の関係を壊したくなくて、ずっと告白をためらっていた。
でも今夜、一緒に流れ星を見つけられたら。
そんな勝手な願掛けをわたしはしていた。
東京の空は明るくて。
ニュースで言ってた見え出す時間はわたし達には遅すぎて。
だけど見えたら絶対言おう。そう決めていた。
空気が冷たい冬の夜は、星が綺麗に輝いて、でも流れ星なんかひとつも見えないまま時間だけが過ぎていく。
そのとき。
「あっ!」
「え、あれ!」
オリオン座を横切って、大きなほうき星みたいな何かが尾を引いて輝いた。
「なんだ、あれ……」
「流星群、じゃないよね……。もしかしてUFO、とか?」
あはは、と笑ったわたしをよそに、彼は手元のスマホを操作する。
「なんか、オリオン座を横切る宇宙ステーションとか人工衛星とかがあるらしい」
「宇宙ステーション!?」
UFOよりは現実的で、だけれど何か凄いものを見たような気分になる。
「ああ。肉眼で見えるかはわからないけど、もしかしたらそれかもな」
「そっかあ……でも凄かったね」
「そうだな」
またしばらく無言になったわたし達に、庭からママが声をかけてくる。
「もうすぐ9時よー、降りてらっしゃい」
「はあい」
返事をして、言えなかったな、とわたしは下を向く。
「……見えなかったね、流星群」
「まだ時間が早いからな」
「そうだね……」
まだぐずぐずしているわたしを見て、彼が言った。
「宇宙ステーション」
「え?」
「いつか、一緒に行こう、宇宙ステーション」
わたしが突然の話にぽかんとしていると、彼が続ける。
「俺たちが大人になったら、きっと行けるようになってる。そのときは、一緒に行こう」
そしてわたしの手を握った。
「電話する。だから、その……、あれだよ、つまり」
暗い中、それでも彼の顔は真っ赤だ。
「だから、他の男と付き合ったりすんなよな……!」
わたしは彼の言葉に泣きそうになって、そして笑った。
「うん!」
屋上から降りる前、もう1度空を見上げたわたしにつられるように、彼も上を向く。
そのとき、夜空を大きく横切って、長く長く流星が伸びていった。