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34話(ガーラント辺境伯Side)



「ドミニク様、魔導ゲートに反応がありました。まだ距離はありますが、フェルナンド様ではないかと思われます」


「そうか…本当に…来てくれたのか…。周りに魔物がいないか注意しろ。警戒を怠るな」



彼ほどの魔法剣士なら、魔物討伐に問題はない。

飛龍の討伐もコツさえ掴めばやっていけるはず。


彼は…即戦力になる。




この1週間は、私の人生で最も過酷で苦しいものとなった。


飛龍の襲来で“最強の砦”といわれる城の一部は崩壊、復旧作業をしながら魔物討伐を続けるという苦難を強いられている。



大切な子供たち…アレンとシルフィの命も…守ることができなかった。

それでも、3体の飛龍襲来という異常事態の中…臆することなく戦った我が子たちを誇りに思う。


その勇猛果敢な姿は…全ての兵士の心に深く刻み込まれている。


飛龍の討伐で多くの犠牲者を出したが、この城では…悲しみに暮れ…心を癒やす…そんな時間は与えられない。


嘆き苦しむ気持ちすら…剣へ込める力へと変えていかねば生き残れないのだ。




アレンの妻は…帝都の親元へと戻した。


シルフィは生きてはいるが…もう意識はない。

飛龍の毒は内蔵を腐らせ心臓を最後に喰らう。残された時間はわずかしかない。


炎で焼け爛れた全身は、周りの空気が揺れ動くだけでも痛みを伴うという。

その命が尽きるまで、地下の部屋にそっと…ただ寝かせてやることしか私にはできない。




「ドミニク様!」


「どうした?」


「それが…その、フェルナンド様ともうお1人、お姿が見えます。女性の様です」


「女性?…ジェンキンスを呼べ!」



ジェンキンスは、この辺境の地の最高位魔術師として辺境伯軍の魔術師団長を務めている。彼なら何か分かるだろう。



「どうだ、ジェンキンス」


「女性…ですね。それより、この距離でも感じ取れるほどに魔力が凄いな…。あれほどなら、小物の魔物は寄り付かないでしょう。

フェルナンド様は、確か魔法剣士でしたね?」


「そうだ。魔力も十分だし、かなりの使い手だぞ。しかも…異能力者だと…陛下からは聞いている」


「おぉ!異能力者でいらっしゃるのか。ならば、この魔力はフェルナンド様のものかもしれません。…後継者として…相応しいですね」


「…うむ…」



しかし、なぜ女性を伴っているのかが分からない。彼は未婚ではなかったか?


形式的なものとはなるが…シルフィと婚姻契約を結ぶはずなのだが?




────────




「フェルナンド様、ご到着です!」


「皆の者、出迎えよ!」



城門から城の入口にかけて、ずらりと兵士が並ぶ。魔術師も20人ほどが揃い、ジェンキンスと私のすぐ側に控えた。


城の入口から真っ正面に、フェルナンド殿の姿…そして小さな少女?…が見えた。



「…なんと…」



フェルナンド殿が美丈夫であることは知っている。その凛々しい姿を目にしても、今さら驚きはしない。


だが、隣に立つ少女は…何者だ?


長い黒髪をひとつに束ね、小さな顔から零れ落ちそうな金の瞳は、大きくキラキラと光って…まるで太陽か宝石のようだ。


屈強な兵士たちに囲まれても怯えず、柔らかな表情でそれを眺めながら、信じられないほどに細い手足で…フワフワとこちらへ向かって歩いてくる。


兵士たちは、その妖精のような少女を凝視していた。

頬を赤く染める者、何度も瞬きを繰り返す者、口をポカンと開けっ放しの者…。



私が驚いたのは、その兵士たちの姿だけではなかった。



2人が私のほうへ近付いて来ると…魔術師たちが1人、また1人と跪いていくのだ。


何が起きているのか…すぐには理解できなかった。



我が辺境伯軍の魔術師たちは、高い能力を持つ者ばかり。

身分などではなく、魔力量と魔術師としての技量が全てなのだ。


その魔術師たちが…跪き頭を垂れ…相手に敬意を表している。



最後に、ジェンキンスが跪くと…私の周りに立っているものは…誰もいなくなった。







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