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13話



無事にご挨拶を終え、フェルナンド様と一緒に部屋へと戻る。



「イシス、私は仕事に出かけるよ。昼からは行商が来る予定だが、全てメイド長に任せておけばいいから」


「行…商?…はい。あ、お兄様…行ってらっしゃい…ませ?」


「……っ!……」



フェルナンド様が一瞬ピクリと眉を動かした。


ん?私、何か間違った?



「あ、貴族の挨拶とか分からなくてごめんなさい。

その…私、ご迷惑をかけてないでしょうか?」


「もしイシスがそう思っているのなら、それは守ると約束した私の力不足だよ。

迷惑など…ありえない。じゃあ、行ってきます」



『今日は早く帰るようにする』そう言って微笑むと、颯爽と部屋を出て行かれた。



本当にカッコいいなぁ、お兄様。




─────────




「イシスちゃんには、このワンピースが似合うわ!」



うれしそうに私のお洋服を選んでくださるアデリーナ様。

メイド長さんは…笑顔で紅茶を用意してくれていた。



「アンディとフェルは男でしょう?つまらなくって。

孫たちはまだ小さいから、イシスちゃんくらいの年の女の子のお洋服選びは初めてなの。本当に楽しいわ!」



昨日の今日で、グッと距離が縮まった気がします。

“イシスさん”から“イシスちゃん”へと見事昇格いたしました。



アデリーナ様は少女のようなお方。


いや待てよ、私が老けてるのかな?



最終的に…ワンピースを5枚、余所行きの服を5枚…合計10枚も買っていただいた。


行商とは、いろんな商品を持ち込んで販売するお仕事のようで…他にも小物や日用雑貨などを大量に購入。



どうやら、支払いはフェルナンド様らしいのですが…。



「フェルは人嫌いでね、貢ぐ相手もいないのよ。お金はたっぷりあるはずだわ…ホホホ」



と、アデリーナ様が高らかに笑っていらっしゃいました。




─────────




「イシス様、お食事はお済みでしょうか?」



今日もお部屋で美味しい夕食をいただいた。

食べ終えた時間を見計らって、メイド長さんは部屋の扉をノックする。見えているみたい。



「はい、ご馳走さまでした」



メイド長のミリアムさんは、素早い動きで音もなく食器を片付けると、水差しとグラスのセットをテーブルにそっと置いた。



「何かお困りになったことは?お食事の量など、問題はございませんでしたか?」



ミリアムさんは私にとても優しく接してくれる。伯爵家のメイドとは大違い。

自分で好き勝手にやっていた身の回りのことも、今ではミリアムさんが全て担当してくれている…いいのかな?



「大丈夫です。あの…ミリアムさんは、お困りではないのですか?」


「え…?…私が…でございますか?」


「えと…私のことばかりで、大変かなと…」



ミリアムさんは、そっと跪いて…椅子に座る私と目線を合わせる。



「イシス様…フェルナンド様は、イシス様がお邸でゆっくり過ごせるようにとお考えなのです。

私は、そのために最善を尽くすよう命じられております。何もご心配なさらずに…私にお任せくださいませ」



ミリアムさんが、深く頭を下げる。



「ありがとうございます。…あ…変なこと言ってごめんなさい」


「イシス様のお世話ができますこと、私はうれしく思っております。お邸のことは、総メイド長がしっかりと管理をしておりますので、どうかご安心ください」



ミリアムさんはニッコリと笑った。




─────────




少し後で聞いた話によると…


私の部屋はフェルナンド様のお部屋の隣で、しかも…このフロアーはフェルナンド様専用となっているらしい。


私が来てからは、メイド長のミリアムさんとミリアムさんの娘さん(同じくメイド)、そしてフェルナンド様の従者以外、他の者を一切フロアーに寄せ付けない徹底ぶりなのだとか。



「イシス様を軽んじる者など邸内にはおりませんが、ほんの些細な事からも…イシス様をお守りしようとなさっておいでなのですよ」



私が伯爵家のメイドに蔑まれてきたから、侯爵家では絶対に同じことが起きないように細心の注意を払ってくれている。



アデリーナ様が言っていた“過保護”って、こういうことなのかな?







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