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狼くんと望月さん  作者: 牛たんかるび
2/2

お隣さん


春休みも残り数日。


最近は、お気に入りの新居で、高校から出た予習ワークをずっと解いている。


ちなみに私は勉強が苦手だ。嫌いだ。


このお気に入りに囲まれた空間でなら、嫌いな勉強もはかどるだろうと思っていたが。


(最近、隣の部屋が騒がしい……)


こんな感じで、全く集中できない。


私の部屋は、マンションの突き当りで、いわゆる 隣の部屋 は1つしかない。私が入居したのと同じ時期に、お隣さんは出ていったと聞いている。


だから、この音は、4月初めになって、ようやく引越してきた人の存在を示していた。


正直、そんな人が隣にいるなんて不安だと思ったが、なんせ初めての一人暮らし。私、望月あかりはとても浮かれていた。


もしかしたら、美人で優しい、頼れるお姉さんかもしれない、なんて希望を持って、玄関ドアを開けた。


(私はコンビニに行くだけ。私はコンビニに行くだけ。私は……!?)





「お、おおかみくん、!?」





ダンボールの箱に書かれた名前と、彼の目を見て一瞬で気づいた。幼稚園で仲の良かったあの狼くんだと。


そして我に返る。


(コンビニ、私はコンビニに行く。)


大声をだしたのが恥ずかしくなって、小走りになる。


一重のまぶたに、日光に透ける琥珀がかった瞳。そして、


「え、ちょ、おい!」


随分と低くなったけれど、変わらない、ちょっとかすれた声。


(間違いない、あの、幼稚園のとき仲が良かった狼くんだ……!)


「おい!階段!!」


「っ!? ひゃあっ!?」


足が地面を踏まない感覚と、力の抜けた腕が後ろに引かれたのは、同時だった。


背中に軽い衝撃が響いてやっと、私は階段から落ちそうになっていたことに気づいた。




「……変わらないね、あかり、ちゃん。」



覗き込まれた顔は、大人っぽくて、かっこよかった。


「憶えてたの、?」


「そりゃ、まあ、そうだね」


何をどう話せばいいのかわからない。


「助けて頂いてありがとうございました……」


「ああ、いえ、それでは、と言ってはなんですが、お願いがありまして…」


これは、お礼としてやるしかない。


「湿布を、買ってきてほしいんです。」


「あっ……」


私を庇って腰を痛めたのか、と察したが。






「まさか!望月さん庇って腰痛めるとか、これからどうするんですか!」


「いや、」


狼くん家玄関にて。


どうやら狼くんは、引越し準備の時点で、足首を痛めていたらしい。




……ん?




──望月さん庇って腰痛めるとか、これからどうするんですか!




……これから?



「え、あの、さっき言った事って?」


「……さあ? それより望月さん、高校のワーク終わってるんですか?」


「あ、」


「ではまた後日に。」


(うまく話をそらされた…。)


そして、なぜ、高校のワークのことを知っているのか、気付けなかった。









──「やっぱり変わらないなあ。俺の、可愛いあかりちゃん。」






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