チャプター4.遠い道のり(12:56~) (1)
(13:04~)
野木は、直後に路線図がクローズアップされる場面(13:29)で分かるように、小山の二つ前の駅である。目的地に近いところでの、そうだとはっきりと分かる情報を見ながらの無意味な停車は、焦燥感を駆り立てるであろう。
(13:45~)
明里とは19:00に岩舟駅で待ち合わせていた。また、貴樹が大宮駅を出た時点では「十分ほどの遅れ」で、17:15大宮発の普通に乗車している。現在の時刻表を参照すると大宮から野木まではちょうど四十分ほどかかるため、この時点ですでに余分に一時間近く長くかかっており、貴樹の元々の予定からはさらに一時間近く遅れていることになる。
(13:51~)
注釈11:48で述べたように、実際そう見えそうな場所もなくはないが、「雪の荒野」という表現は言い過ぎであろう。
(14:05~)
貴樹はここで初めて席に座るが、小説版では大宮を出てすぐに座っていたように書かれている(前述の通り、扉のボタンについての描写はない)。
(14:21~)
「僕よりもずっと大きな不安」という表現に注意。貴樹にとっては明里と離ればなれになるというのは、落胆以上の影響を引き起こすものであった。また、この場面のモノローグの最後の部分がやや聞き取りづらいが、「恥ずかしかった」である。小説版でもほぼ同様の文章でそう書かれている。
シーン1-9:回想(3)(14:30~)
(14:30~)
小学校の外観が大きく写る。探せばモデルは簡単に特定できそうである。筆者はしていない。また、この卒業式の場面は貴樹が岩舟に向かっている時点からちょうど一年ほど前のはずだが、二人の印象が大きく変化しているように見える。小説版ではその間に貴樹の身長が大きく伸びたことなどが書かれている。実際にはアニメ制作上の都合などが理由なのかもしれないが。
(14:46~)
明里の最初の手紙が届いたのは「(卒業式の)半年後、中一の夏だった」とのことだが、この時点でいくらか矛盾している(三月の卒業式から半年後の九月は夏だろうか?)。注釈1:44で述べたように、実際には九月以降だと考えた方が良さそうに思われる。九月でも、東京は暑い時期ではあるだろう。ただしその場合、小説版の表現とは一致しない。これらの矛盾の一番簡単な解決策は、「半年後」という言い方を厳密にとらないことである。
なお台本では、「それから五ヶ月後 中1の夏だった」となっている。明里の手紙の文面(の明里の台詞)は変わっていない。「五ヶ月後」ならば確かに夏なのだが、そうすると八月に手紙が届いたことになり、貴樹が教室で手紙を読んでいる場面(1:44~)が妙なことになる。あまり問題は解決しておらず、むしろ「五ヶ月」という細かい数字を出したために、矛盾が強調されてしまっているように思われる。だから変更されたのであろうか。
また、貴樹が明里の元に向かっている時点は中学一年生の三月であるはずだが、およそ半年前の出来事を上記のような言い方で振り返るのは、その時期には似つかわしくないように思える。第一話が全体的に、後年貴樹が振り返っている視点で語られているように筆者に思われる理由の一つである。
付言すると、会いに行くほぼ半年前に手紙のやりとりが始まり、その半年前に卒業式での別離があったわけで、この半年という間隔が連続していることに何か意味があるようにも思われるが、おそらく筆者の邪推なのであろう。
(14:52~)
貴樹の手紙の内容は、ここである程度読み取れるものの、冒頭部分のみで、核心となる部分については、具体的な文章では示されない。小説版ではどんなことを書いたかが、ある程度詳しく語られる(注釈3:31参照)。
また、貴樹の部屋に引っ越し業者の段ボール箱が置かれているが、それはかつて公衆電話で別れを告げた明里の近くを通っていった業者と同じである。明里から離れていく貴樹の運命を暗示していたか、あるいは、むしろ離れていくのは貴樹の方であったということかもしれない。
シーン1-10:約束の日(4)(15:05~)
(15:27~)
貴樹の時計では19:41となっており、野木から小山までに四十分以上かかっていることになる。通常であれば十分ほどの区間である。
(15:29~)
台本では、アナウンスの内容が「東北新幹線"上り"盛岡方面(以下略)」となっている。「上り」は東京へ向かう便のことであるため、逆になっている。映画版では正しく修正されている。
(15:34~)
横断幕に「開催期間 1995/2/10~3/10」とある。一年先のイベントについて掲示しているのではないだろうから、やはりこの時点は一九九五年と設定されていると考えるべきなのだろう。現実とのズレについては注釈7:48などで述べた通りである。
なお、このあたりは小山駅の改札内の光景で、様変わりしているところが少なくないが、はっきりとモデルとなったことが分かる場所もある。
(15:42~)
貴樹が階段を走り降りていることから分かる通り、岩舟に向かう両毛線のホームは小山駅の駅舎の下部にあり、照明が少なく、かなり殺風景な場所である。
(15:48~)
ここで、待ち合わせ場所の具体的な駅名である「岩舟」は言及が避けられているようである。既に述べているが、固有名詞の発言の省略は、視覚的な情報で代替できるからということ以上に、いくらか現実感をぼやけさせる狙いがあるように思われる。
これは第二話の舞台である「種子島」についても同様である(注釈21:26も参照)。