第一話概要
・主な舞台
世田谷近辺の貴樹(と明里)の生活圏と、小田急線で豪徳寺駅から新宿駅へ、そして乗り換えを経て岩舟駅までの道のりが舞台となる。生活の匂いの濃い都会の情景から、一転して密度の低い、落差のある田舎の駅へと向かう。第二話の種子島ほどではないにしても、本作のキーワードとなりそうな「距離」が、それぞれがいる場所、そこに広がる光景や生活そのものの相違という、ただその間にある空間的な位置の違い以上にどうしようもない形で強調されているようである。
0.タイトル
「抄:長い文章などの一部を書き出すこと。また、そのもの。ぬきがき。(小学館 デジタル大辞泉)」
単純に書物のタイトルにも使われる言葉。「桜花抄」で「桜の花の物語」といったところか。桜は、冒頭とクライマックスにおいて、極めて重要なキーワードとなる。
あるいは、注釈という意味もあるため、明里が述べる桜についてのこと、ということかもしれない。そう考えれば、第一話終盤で見られるように、二人の世界の重なり、結びつきを象徴しているとも言えそうであるが、ここまで解釈するのは読み込みすぎのきらいがあるだろう。