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秒速5センチメートル 全シーン注釈  作者: 入江晶
「第三話 秒速5センチメートル」
19/25

チャプター10.26歳の日々(48:31~)(2)

シーン3-3:明里の出発(51:07~)

(51:11~)

 明里や両親が立っているのは、第一話で貴樹が去っていったときと同じホームである。ホームと電車の方面との位置関係については既述(注釈24:23)。

 また、この場面の時点がいつなのかははっきりしないが、直前の貴樹の場面と近い時期だと考えれば(「お正月までいればいいのに」との台詞から、十二月の終わりという点は一致する)、すでに無人駅となっていたと思われる。


(51:33~)

 明里が乗っているのは両毛線の車両で、第一話で貴樹が乗っていたのとよく似た、おそらくは同じ席である。

 また、明里は文庫本を読み終えて閉じているが、小説版では過去の手紙を見つけたことなどのために読むのに集中できなかったことになっている。小さいながら、重大な意味合いのある改変ではなかろうか。岩舟駅での両親の描写と併せて、明里と貴樹の、この時点での心情の違いが際立てられているようである。

 なお、明里が読んでいるのは夏目漱石の「こゝろ」である。


(52:01~)

 明里の部屋(?)に、貴樹に別れを告げる明里の背後にいたトラック(10:41)および引っ越しを控えた貴樹の部屋に置かれていた段ボール箱(14:52)の引っ越し業者の段ボール箱が置かれている。彼らが別の場所へ向かう時には常にそれが見えていたわけだが、制作上の都合以上の意味合いは無いのかもしれない。


(52:07~)

 鳥の群れ。社会の中で生きられる道を踏み出している明里の状況を象徴しているのであろうか。


(52:17~)

 18:24で貴樹の乗る電車の背後にあった、岩船山が見えている。貴樹が去って行ったのと同じ道を辿って、明里は別の生活へと出発する。


シーン3-4:一人の貴樹(52:21~)

(52:21~)

 新海誠作品では、喫煙シーンがほぼ毎回現れる。最近のところでも「君の名は。」では女性が喫煙していたし、「天気の子」では一度子供のために禁煙した人物がそれを破って吸っていた。「すずめの戸締まり」でも、車を運転する大学生が助手席の同乗者(年上の女性、ほぼ初対面)に断りもせずに吸い始め、その女性が唖然とする、という場面など、複数の喫煙シーンがあった。

 タバコ関係の規制が強調される今時としては、珍しい態度であろう。ただ、筆者には監督の嗜好以上の作品解釈のための意味を見いだすことができない。新海誠自身が喫煙者なのであろうか。


(52:36~)

 机には離職証明書があり、退職前後の時期であるようだ。


(52:44~)

 メールの日付は「2008 02/02 15:15」となっている。49:49以降の新宿駅のシーンから、一ヶ月と少し経過しているらしい。従って、新宿駅のシーンの時点で、退職は目前だったことになる。漫画版では、退職まで特に変わらずに仕事をしていたことになっているので、そこから考えると、あの日が最後の勤務日だったということかもしれない。

 貴樹の部屋のディテールについてはいろいろ読み取れる部分もあるが、一つ一つ取り上げる必要性を感じられなかったため、省略する。


(53:41~)

 背景の看板に「北新宿地区」「市街地再開発事業」とある。場所の特定に役立ちそうだ。


(53:48~)

 鳥(カラス?)と、背後にクレーンが見える。意味についてはいろいろと考えられそうだが、一つの解釈としては、集まって生きる人々(社会)に背を向けざるを得なかった貴樹の孤独な状態を象徴しているということがあり得るだろう。

 なお、「君の名は。」でも、意味ありげに建設用クレーンが大きく写る場面があった(こちらは二つ)。


(54:18~)

 プログラミングの画面については見るからにいろいろと読み取れそうだが、筆者にはそういう知識がないので不明。

 なお、こういった描写については、新海誠が映画監督となる前に所属していた日本ファルコム(ゲームメーカー)での経験が影響していそうに思えるが、ここではさておく。


(54:26~)

 貴樹はSuicaを使っている。第一話(8:38)ではタッチパネルで切符を購入し、小説版の描写を援用すればそのことに戸惑っていたが、この時点までに、取り巻く生活は大きく変わっていた。

 なお、Suicaの運用開始は二〇〇一年からである(Wikipediaより)。


(54:43~)

 印象的なモノローグの結尾で述べられた貴樹が退職した経緯については、小説版で詳しく書かれている。それによればソフトウェア開発会社での無茶な案件に回されたことと上司の無理解が原因のようだが、映画版とはどうも印象が違うように思われる。

 ここまでのモノローグについては、「届かないもの」「真剣で切実だった思い」といったことに関していろいろと考えられるだろうが、筆者の解釈は、ここでは述べないでおく。小説版ではもっと詳しく、特に、第二話以降の貴樹の人生について、本作では全く表現されていない部分が述べられているが、それをそのまま本作の解釈に持ち込むのが果たして適切なのかどうかは疑問であろう、と指摘しておくに留める。

 なお筆者の解釈については別ページ参照。(https://ncode.syosetu.com/n1338hs/13/)

 また、台本では「仕事を辞めた」となっている。

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