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秒速5センチメートル 全シーン注釈  作者: 入江晶
「第二話 コスモナウト」
15/25

チャプター8.サーフィンと告白(39:18~)

シーン2-7:波に乗れた日(39:18~)

(39:18~)

 この場面のBGM「空と海の詩」は、花苗のモノローグや映像と併せて、タイトルも含めて見事に調和している。また楽曲のタイトルは、漫画版最終話(何度か言及した、花苗の将来が描かれる漫画版独自のストーリー)でも使用された。

 ただ、この後の展開を考えると、何か空回りしているようにも感じてしまう。


(39:25~)

 34:47とほぼ同じ場所である。その時点では写っていなかった情景も、同じようなところがモデルになっていると思われる。


(39:30~)

 35:38で貴樹と花苗が座って見下ろしていた草原と全く同じ場所。


(39:50~)

 花苗がサーフボードに塗っているのはワックス(サーフワックス)で、サーフボードに乗せた足の滑り止めのためのもの。


(40:21~)

 この花苗のモノローグの場面は傑作だと思う。ただ、やはりこの後花苗の身に起きることを考えると、どうしても素直にただ感じ入ることができない。

 また、花苗が波に乗ることに成功したこの日は「十月の半ば」だという。年にもよるだろうが、種子島においては、長袖で過ごすにはまだ暑い時期のような気がする。

 なお、小説版では「あの日」(花苗が紙飛行機を投げた日)から二週間と明言されているが、その間に通り過ぎた台風は「一つ」となっている(ただしこちらでは時期が具体的に示されない)。明確にはならないが、映画版でも大差はないと考えてよいと思われる。そうすると、第二話は全体で一ヶ月ほどの間の出来事ということになるだろう。

 もっとも、二週間で「いくつか(=複数)の台風が通り過ぎ」るというのはなかなか無理があるようにも思える。そういう理由で、本作では「二週間」という具体的な日数を出さなかったのかもしれない。あるいは、明確な数字を出すことで固定的なイメージが出来るのを避けたというような狙い(感覚)があったのだろうか。


シーン2-8:花苗の決意(41:13~)

(41:13~)

 この場面の情景については注釈32:51参照。


(41:17~)

 天気予報の放送。風速の予報まで放送されたところで次の場面に切り替わっているが、台本ではさらに続いて「18時20分からの打ち上げ予定に今のところ変更予定はありません」とある。台本の台詞のカットとしてはかなり大きい箇所。また、その内容が物語に関わるという意味でも重要に思われる。

 後のシーンを予告していたわけだが、結局カットされたのは、印象が強すぎるためであろうか。映画版の打ち上げの場面は、他の場面でもほのめかされているとはいえ、まだ唐突な気がしないではないので、どちらが良いかの判断は難しいように思われる。無論、監督はカットすることを選んだ。

 なお、リアリティという点で言えば、発射場(宇宙センター)のある自治体ではない中種子町でこのようなアナウンスが行われるというのは、疑わしいかもしれない。これもカットされた理由となった可能性もあるだろう。ただし、宇宙センターの所在する南種子町以外でも、ロケット打ち上げ時期には、種子島の各所で打ち上げの予定について表示がされるようになるので、この放送の内容も、あり得なくはなさそうにも思われる。


(41:23~)

 中種子町のカットから高校の校章につながるが、注釈32:51で述べている通り、直前の画面内に高校が見えていたわけではない。


(41:25~)

 半袖のままでいる生徒と、花苗のようにセーターを着ている生徒が入り交じっている。そういう微妙な時期ということだろう。種子島の季節感についての筆者の印象は注釈40:21参照。


(41:44~)

 第一話(8:52)の貴樹との対比に注意。


(42:01~)

 これまでに貴樹を待ち伏せしていた場面に比べて、かなり明るい。それぞれ夜七時を過ぎていたようだが、この場面の直後の時刻(42:14で見られるアイショップの時計)は六時過ぎである。本作の描写では、花苗が貴樹と一緒に帰ることができない方が珍しいかのような印象だが、小説版などでは、ずっと頻度が低かったということが語られている。貴樹の下校時間が、まちまちだったのであろう。

 この日には、告白のためにサーフィンにも行かずにかなりの時間待っていたようである。ただし、明るさを考えると貴樹が来たタイミングは相当早かったことが伺える。花苗の驚きぶりも、そういうことが理由なのであろう。


(42:53~)

 この場面では貴樹が実際に声に出した言葉しか描写されていないが、小説版や漫画版では、その胸中の明確な拒絶の言葉が、悟ってしまった花苗の視点で直接描かれている。貴樹の印象が大きく異なる箇所である。


(43:27~)

 37:45で、貴樹の後ろを走る花苗の原付が、若干遅れているのが描写されている。「加速で息継ぎ」とは、このことであろうか。


(43:40~)

 貴樹は「ここまで来れば近いから」と言っているが、明らかに現実の地理には対応していない。貴樹の家の位置が不明なので、ひとまず澄田家までを考えると、澄田家は高校を挟んでアイショップの反対側にあり、この三地点は正三角形に近い位置関係になっている。このため、まず澄田家までに高校~アイショップ間くらいの距離を歩かなければならず、貴樹の家はどの程度かは不明ながら、そこからさらに離れているはずである。そもそも、澄田家の方面に向かうならば、高校からアイショップに行くのは逆方向なので、「ここまで来れば近」くなるはずがない。

 ついでに言えば、既述の通り、現実に高校から澄田家方面にまっすぐ向かうと、自然と立ち寄りやすい場所に別のアイショップが存在する(注釈31:29参照)。そちら側は本作での種子島の描写からすると意外に思えるほど建物が多く、町らしい外観を持つ。作品全体の雰囲気のため、あえて触れるのを避けたのであろう。

 以上のように、本作の種子島は、作品の調和のために作られた空間なのである。

 作中では実際に澄田家までどのくらいの時間かかったのかは不明だが、アイショップの時点で夕焼け空だったのが後の澄田家の前の場面では完全に日が落ちているので、ある程度長時間歩いたと考えることはできる。上記の事実と合わせれば、貴樹の発言は花苗に見せる過剰な優しさの程度を推し量れることになるが、このように現実を前提に解釈するのは、本作では適切とは言い難いと思われる。

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