表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

3分間の激闘 シリーズ

3分間の激闘・場外乱闘編

作者: まい

 カップ麺にまつわる悲劇。


 今回の事態はあまり無いでしょうが、無いわけでは無い。

 大切な大切な休日。


 その日の彼は、体調そのものが良くなかった。


 いつも3分のカップ麺で失敗する、おっちょこちょいな様子も控えめだ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………………風邪かなぁ。 折角の休日に、ついてねーわ」



 これと言って異変らしい異変は感じられないのだが、どことなく調子が悪いのだ。


「しかもごはんはポロポロこぼすし、なぜか取りこぼして物を落とすし。 今日は最悪だぁ」


 彼がなにか忘れ物をしたり、慌てて注意を(おこた)ってなにかに()(つまず)くのはいつもの事だが、それとは違うミスが目立つ。


「ああっ!? パンの袋を開けようとしたら、引き寄せていたゴミ箱へ、袋から飛び出したパンが直接ダイブしたっ!!?」


 ほら。 この通り。



~~~~~~



 そんな彼のお昼は、今日もカップ麺 (しょうゆラーメン)だ。


「くそぅ……ハラの足しにと買ったパンは、さっきゴミ箱に逃げられちまった。 もしこのカップ麺でも何かあったら、厄日確定だわ」


 彼は独り暮らし。


 話し相手が居ない独り暮らし。


 そんな環境でつぶやいていると、ついつい声が大きくなって行く。




「おっ。 お湯が沸いたな?」


 ふと聞こえた、少し離れた所にある電気ケトル(やかん)の音でそれを知った彼は、いそいそと準備を始める。


「あーー。 いつもは、もうお湯を注ぐだけまで準備を済ませているはずなのに、忘れてるって本当にヤバいだろ」


 気落ちする(さま)はいっそ(あわ)れと思う程、彼の背中は(すす)けている。


 お昼のカップ麺のフィルムをはがす姿も弱々しく、フタを開けるのすら時間がかかっている。


「あ、今日のカップ麺に入っている小袋は、ひとつだけなんか」


 そう、ひとつだけ。


 そのひとつの小袋は、お湯入れ前に入れておくものだ。


「想定よりちょっと物足りないお昼だけど、夕飯までのがまんだな。 よし、夕飯は少し良いものにするか」


 (カップ)に小袋の中身をあけながら、小さなご褒美(ほうび)でテンションを上げようと頑張る、健気な彼であった。




 小袋の中身()をカップへ入れ終わり、電気ケトルが置かれている場所へカップ麺ごと向かっていたその時、彼は今日一番の不運に見舞(みま)われた。


「っ!? あ、ちょっと! おい!!」


 どうやら今日の不調は伊達(だて)では無かったらしい。


「おいおいおいマジかよ? …………うわぁ」


 その悲劇に、彼は思わず(なげ)いた。


 その日の彼は不調で、思った通りに体は動くが、細かい感覚は麻痺(まひ)していてどこか鈍い感じだった。


 そんな彼の足下には、ひっくり返った()()()()


 そこからこぼれる、粉。


 そう。 手の力が不調から上手く制御できず、カップ麺を保持(ほじ)する力が瞬間的に抜けて、その瞬間にポロリと取り落としてしまったのだ。



「なんだよ、なんなんだよ。 今日はどうかしてるよ、ホント。 これは本気でヤベーぞ、おい」


 台無しになってしまったお昼。


 まるで(おの)が夢の欠片(かけら)がこぼれ落ちたような、己が半身の命を理不尽に奪われたような、そんな絶望も混じる。


 この惨状に茫然(ぼうぜん)としない者は、そうそう居ないだろう。





「………………あ。 粉の大半はこぼれたけど、麺は床に落ちてないから何とか食えるわ。 うわー、不幸中の幸いってやつだなコレ」


 あんまりにもあんまりな惨状から何とか立ち直り、片付けようとしていたカップ麺を検分(けんぶん)していた彼だが、光明を見出(みい)だした。


「これなら焼肉のたれとか出汁つゆとかを入れれば、食える味になるかな? ……そう言やゴマ油をしょうゆと合わせると、何でも中華風味になるって聞くな?

 ……入れたら、しょうゆラーメンっぽくなってくれるかな?」


 自身の失敗は失敗として、その失敗をカバーしようと考える彼の背中は、少しだけ(たくま)しく見える………………かもしれない。





「あ……沸いてから時間がだいぶ過ぎて、お湯が()めてる」


 逞しく見えるかもしれないっ!!

 半実話。


 コレを書く少し前に、やらかしました。




 なんか腕に力が入らなくて、感覚が鈍くなっていて、本当にポロッと……(´;ω;`)



 んで立ち直って、恐ろしく薄くなった醤油ラーメンの味をどうするかと工夫した訳です。


 結果は成功。


 ごま油が良い味を出してくれて、ちゃんと醤油ラーメンとして食べられました。


 いやあ、マジであの時ゃ焦りましたわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こういうあるあるネタ好きですww [一言] 湯切りしていないカップやきそばに、なぜかそのままソースを入れてしまい呆然としたことがあります。疲れていたんや… 湯を切ってとんかつソースを絡め…
[良い点] それでもカップ麺を食べようとするその意気や良し! [気になる点] 栄養付ける為に卵のトッピングとかは? チキ〇ラーメンのように最初に面の上に入れてお湯を注げば半熟の卵になりますよ~。 […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ