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六九 オシラサマ 1/1

 今(明治)の土淵には大同だいどうという家が2軒あります。


 そのうち山口の大同当主は大同おおほら万之丞まんのじょうという人です。

 この人の養母は『おひ』という名で、80歳を超えた今(明治)もお元気です。

 例の佐々木さんの祖母の姉(つまり大伯母さんです)です。

 彼女は魔法に長けています。

 まじないで蛇を殺し、木に止まる鳥を落としたりするのを佐々木君(佐々木喜善ささききぜん、作者である柳田國男先生に遠野物語の元となる遠野地方の民話を伝えた重要人物です)はよく見せてもらっていました。


 昨年(明治)の旧暦1月15日に、この老女が佐々木君に語った所によると、昔ある所に貧しいお百姓さんがいました。(東北地方のどこかです。遠野に限りません)

 妻はいなくて美しい娘がいました。

 また1匹の馬も養っていました。

 娘はこの馬を愛して夜になれば厩に行って寝て、ついに馬と夫婦になりました。

 ある夜に父はこの事を知って、その次の日には娘に伝えずに、馬を連れ出して桑の木に吊り下げて殺しました。

 その夜に娘は馬がいないのを父に尋ねてこの事を知り、驚き悲しんで桑の木の下に行き、馬に縋り付いて泣いたのを、父はこれを憎んで斧を持って後ろから馬の首を切り落とすと、たちまち娘はその首に乗ったまま天に登り去りました。

 オシラサマはこの時から成った神様です。

 東北の人々は馬を吊り下げた桑の枝でオシラサマの像をつくります。

 その像は遠野に3つあります。

 初めに作られたのは山口の大同にあります。これが姉神です。

 次に作られたのは山崎(栃内)の在家ざいけ権十郎こんじゅうろうという人の家にありました。

 佐々木さんの伯母さんが嫁いだ家ですが、今(明治)は断絶して像の行方は知りません。

 最後に作られた妹神の像は附馬牛にあると言います。

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