学園3
「おまっ! キャサリン! 何でお前がこんな所にいるんだよ」
目の前に出て来たのは、鮮やかな赤の瞳に赤みを帯びたオレンジの髪をした、昨日迄私の婚約者だった女だ。
「幼馴染みで、隣に住んでるんだから来るでしょ! サミュエルこそどうしたのよ突然動き出すなんて、屋敷中凄い騒ぎになってるわよ。私の屋敷迄、伝わる程なんだから」
なんだこいつ? これが、あのキャサリンなのか? 同じ名前の別人じゃないのか。声も話し方も顔つきまでもが違うぞ。何だよこれは昨日からおかしな事ばかりだ。
「凄い汗よ。これで拭きなさいよ。来週から又、学園が始まるわよね……
学園で何かあったの?だから帰ってきてこんな事しているの?悪い様にはしないから教えなさい。
私なら上手く対処できるわよ。サミュエルの事はずっーと気になってたのよ。けど貴方、構うなって言うから……
ねえサミュエル私に力にならせてよ」
あのキャサリンが、私の顔中の汗を拭いている。この様な優しい言葉などかけてもらった事などないぞ。驚きだ……どうした事だ。
「大丈夫なの? ボーとしてるけど」
「大丈夫だ……少し庭を走ってくる」
私は背後で何やら言っているキャサリンを置いて、走り出した。貰った布は汗を拭くのに丁度良いから、首に巻いておこう。
この身体は汗が良く出るから、直ぐに目に入って痛いからな。良い物を貰った。
「待ってよ! 私も走るわ」
横を見ると、何時ものドレスよりかなりボリュームは少ないが、明らかに走るには不適合な服装で私に追い付き、尚且つ汗だくな私と違い、軽やかに笑顔で走っているキャサリン。
何だがムカつくぞ!私は必死で走る走る走る走る走る走る走る走る…………
30分もしないうちに限界が。芝生の上に寝転び、もう一歩も動けない。ヒューヒュー息が……
喉が熱くて血の味がする。何なんだよ! これは。
以前の私なら一時間は軽く走れていた。それも軽々とな。サミュエルになった私は、これ以上は無理だ。これ以上走ると確実に死ぬ。
「大丈夫サミュエルお水持ってくるから待っててね」
キャサリンが心配そうに見た後、走って屋敷に向かった。良い奴だとは思うが、やはりムカつくぞ!
それにしても婚約者のキャサリンと、今のキャサリンの違いに何が何だか判らないが、今はとにかく痩せてやる!
先ずはそれが第一だ。以前のサミュエルの奴は何故痩せなかったのだ! 少し努力して、食べる物を減らせば確実に体重なんて簡単に減るだろうに? 不思議な事だ。
これからの私の人生がかかっているんだ。こんなところでつまづいてなるものか!
「お待たせ! サミュエルお水持って来たわよ。起き上がれる? 飲めるかしら?」
「ありがとう頂くよ」
こんな水初めてだ。美味い美味すぎる! 水はこんなにも甘いものだったのか? 生き返った。よし! 私はこれから痩せて、思うままの人生を歩むぞー!! 何になろうとも何をしようとも私の自由だーーーーーーー!