学園
少しだけ?続きます
《セイバー王国王宮》
「もう嫌だ! 私は自由な人生を楽しんで過ごしたいんだよ。友人も恋愛も婚約者も仕事も自分自身で選びたいんだ。王子なんて辞めてやる!」
「ヘェ~ 辞めたいんだぁ~ 王子様~ それで何になりたいの? あんたセイバー王国第二王子だよな」
私の王宮の部屋は、かなり厳重な警備に護られている。なのに、何故かフードで顔を隠した全身黒服の男がいた。私の椅子に座ってゆらゆらしながら、ベッドに居る私を見ている。
「お前は誰だ! どうやってここまで来たんだ! 警備を呼ぶぞ」
「呼べば~ みーんな寝てるけどねぇ~」
「そんなわけ……」
私はベッドから飛び起きて扉迄走り、開けた。扉の外に警備の為に居た2人の騎士達が、壁に寄り掛かり寝ていた。揺り起こしても起きない。何故だ?
「何故この様な事に、あの男の仕業か……」
怪しい黒づくめの男を問い詰めようと、先程の場所に戻ったが、誰も居ない?
部屋中見渡しても居る様な形跡がない。ベランダかと思い、出てみたが居ない!? 中庭の薔薇園を見ると、黒づくめの男が1人薔薇の中に立っていた。
私は急ぎ中庭へ出て、その男の元へ向かった。
「おい、お前何者だ! 王宮は、強い魔術で護られている筈だ。そう易々と入れる場所では無い。騎士達を眠らせたのもお前か!」
「えー俺? 俺は王宮へ見頃の薔薇を見に来たんだよ。そしたら王子様の叫び声が聞こえたから、面白そうだから覗いたってわけよ。
お前! 王子様辞めてどんなのになりたいんだ? 俺が叶えてやろうか? 面白そうだし」
自身を覆っていたフードをハラリと外すと、中から淡い紫色の髪と黄色の瞳の若く男なのに、いやに色気のある綺麗な顔が露わになった。
「なっ怪しい感じじゃないだろう。安心したか。で、王子様辞めて何に変わるんだよ」
「呪いとかは無いのか? 変な事等企んではいまいな?」
「面倒だな、変わらないなら帰るぞ」
「まて……」
男が帰ろうとしたのを、とっさに私は引き止めてしまった。私は王子と言う立場を捨ててしまっても良いのだろうか? 尊敬する兄上の将来補佐になりたくて、勉強に剣に頑張ってきたではないか…… それを全て捨て去るのか。
だが、このままだとあのキャサリンと婚姻しなければならないのだ。あの女を私はどうしても好きになれない。
父上にお願いすれば良いのだろうが、私は王族であるから結局は上位貴族の女と婚姻するのだろう。
キャサリンは学園でも、何かと纏わりついてしつこいんだ。態度も上から目線で注意もするし、教養も剣もそつなくこなすあやつは目障りだ。可愛げが無いんだ。あれしろ、これはやめろと邪魔な奴だ。
女は、ニコニコ笑顔でいれば良いものを、あやつとの婚姻だけは嫌だし、そもそも上位貴族の女は似たものばかりだ!
「まて、私を自由な人生を楽しんで過ごせる人間にしろ」
「そんな人間居ないって……そうだなぁ伯爵家の三男なんてどうだ? 家からの期待も無いし、婚姻相手も選び放題自由恋愛だぞ。きっと」
「よし! それで良いぞ! 変えろ」
「……上からだな。まあいいか……目を瞑れ」
目を瞑った次の瞬間、私の身体に引きちぎられる様な痛み、焼かれる様な熱さ、鋭い剣で何度も何度も突き刺された様な何とも言えない嫌な感覚が起こり、立っていられなくて、両膝をついて倒れ込み身体を丸めて鋭い痛みに耐える。
「う! うわぁぁぁぁいたぁぁぁなんだーーー ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」
私は、いつの間にか意識を失っていた。
「馬鹿な王子……無くしてわかる事ってあるんだよ。せいぜい後悔すると良い。俺も陰から見て、楽しませて貰うからさ。頑張れよ王子様」