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1人じゃないという事

すいません!!この話抜けてました。゜(゜´Д`゜)゜。

 何度も何度も口と口を密着させ、肺に届く事を願い、無我夢中に息を吹き込んだ。

 

 懸命の思いで吹き込んだ生暖かい息がガルダの肺を強制的に動かし、肺に溜まった水を外に押し出した。


 「ゴプッーー」


 ガルダの止まっていた肺が息を吹き返す。


 「良かったっ!!ガルダ!!しっかりしなさい!!」


 エマはガルダの身体を強く揺さぶる。

 

 時間が無かった。

 近くにはベァクドルドが居るのだから、ライポイル臭が風に飛ばされた瞬間、私達の匂いは顕になる。


 呼吸を取り戻した肺は血液から脳に充分な酸素を届け、揺さぶられた外からの刺激によりガルダの意識を呼び起こした。

 

 あれ…


 母さん?

 

 あぁ、迎えに来てくれたのか…。


 でも、そんな強く揺さぶらなくても…。


 あ、そうだ…。


 母さんに言わなくちゃ。


 目を薄らと開けるもボヤけていて、ハッキリと母さんの顔は見えなかったが、訳を話した。


 「母さん…俺、ベァクドルドから一人のハンターの命救ったよ。俺は死んじゃったけど。でも…これで良かったんだよな?」


 きっと母さんなら褒めてくれると、返ってくる言葉を待望した。

 

 しかし返って来たのは母さんの優しい言葉ではなくビンタを食らった様な音と頬に感じる激しい痛みだった。


 『バヂーーーンッ!!』


 「全っ然!!良く無いわよっ!!救えてないからね!?寧ろ死にそうだよ!!」


 痛っいっ!!

 打たれた!?


 激しい痛みにより、先程より意識が鮮明になっていき、一つの違和感に気づいた。

 

 ん…母さんの声じゃなかった…。

 

 ガルダはボヤける目を集中させ、目の前に居る人物に焦点を合わせる。


 そこに立っていたのは、助けた筈のエマだった。


 エマが目の前にいる事。激しい頬の痛み。漂う刺激臭。ずぶ濡れの身体。

この状態に一瞬で脳が現況の理を読み解いた。


 「はっ!生きてる!?俺!? てかっ!何で戻ってきてんだよ!?」


 「知らないわよ!!そんな事どうでもいいから!早く立ちなさい!!」


 ライポイル玉の激臭の煙が風によって流され、次第に狂気に陥り殺気を放つモンスターが此方に顔を向けている姿が見える。


 「だよな…生きてるって事は、まずはこれをどうにかしないとな」

 

 だが、その顔にある筈の眼球は溶けた様に崩れている。

 エマが何かしたのだとすぐに考えた。


 「そうよ。目は潰したけど、匂いで私達の位置なんて目で見ている様に分かるでしょうね…」


 「どうする…」


 「分かんないわよ!!何か無いの!?」


 「あったらあんな所で溺れてねーよ!!」


 あと何分だ…睡眠弾の効果が効くまで30分程か…

 此方を向いているのに襲って来ないという事は、まだライポイルの刺激臭により、性格な位置が分からないのだろう。


 ガルダは冷静に状況を確認し、二人とも助かる方法を考えた。


 睡眠弾。

 あと30分。

 眼が無い。

 武器は無い。

 最後のライポイル玉は濡れて使用不可。

 アメーバイム。


 ん?アメーバイム!?


 あった…一つだけ自分達の匂いを奴に嗅がせない方法が。

 

 「エマ…あったぞ。一つだけ」


 「何なのよ!!早く言いなさい!!」


 ガルダはバックにくっ付けて置いたアメーバイムを手に取り、エマに見せた。

 

 「アメーバイムだ」


 「アメーバイム!?そんな少量で何の役にも立たないじゃ無い…」


 ガルダはアメーバイムを脇に軽く挟み、刺激しないよう右手でゆっくりと二つに引き千切り、拳位の大きさにした。


 二つに分かれたアメーバイムを見てエマはガルダのやろうとしている意図が分かった。


 「まさか…鼻に突っ込むつもり?」


 「正解。アメーバイムは刺激すると超強力にくっ付く修正がある。鼻突っ込んで仕舞えば、それを取ろうとしても捥がけば捥がく程、強力に密着する」


 「なるほどね…。悪く無い案だわ」


 「そうと決まれば、鼻の穴にぶち込むのは頼めるか?俺は囮りになる」


 ガルダは無くなった左腕を胸の辺りまで上げる。

 

 「そうね…わかったわ」

 エマはガルダからアメーバイムを受け取る。


 そして二人は直ぐ様、戦闘体制を構えた。

 

 ベァクドルドもやっと二人の匂いを正確に捉えたのか、轟音を森全体に響き渡らせる。


 凄まじい狂気の叫びに一瞬、二人は怯むが恐怖は無かった。


 仲間がいる。

 今は一人じゃない。という事が二人の心の闇を照らしていた。


 「生きて帰れたら…ちゃんと、責任取りなさいよ…」


 エマが何か言った気がしたが、ベァクドルドの声のせいで聞こえなかった。


 「何て!?」


 「何でもないわよ!!3・2・1の合図で左右に分かれるわよ!!」


 少しエマの頬が赤くなった気がしたが…

 気のせいか。


 「あぁ!」


 二人は大きく息を吸い、タイミングがずれない様にお互い横目で見つめ合いシンクロさせた。


 「「3・2・1 GO!!」」


 そして二人は左右に走りだす。最高の結末を思い浮かべながらーー

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