採取クエスト ゲルフォースの糞 20個
「エマ!?」
「何!?アンタ私を付けてきた訳!?ストーカー!?」
「はぁ!?いや違う!違う!俺は採取クエストの素材を取りに行くんだよ」
「何の素材取りに行くのよ!?受注書見せなさい!嘘だったら通報するわ!」
「だから違うって!」
少し抵抗したが、見せないと本当に通報されそうなのでゲルフォースの糞 20個の採取クエストの受注書を見せる。
「げっ…」
エマは受注書に目を通すと、眉を歪ませ口をへの字に折り曲げ、何とも言えない表情をしている。
まぁそりゃそうだ。
なんせ…ンコを拾ってくるんだ。
ンコを広い集め、ンコ匂を纏ったンコ人間とまた帰りの荷車で一緒になる可能性があるんだからな…
まぁ荷車の往復は一日にニ回あるからクエストの内容によっては長引くと別々になる可能性もあるんだが…
「お前は何でバルム山に行くんだ?俺も見せたくない受注書見せたんだから見せろよ」
「絶対いやっ」
「何でだよ…」
「……」
エマは左側を向き、無視をしている。
え〜…でた…すぐ無視…
俺…なんかしたっけ…いや何もしていない。
何でこの子はこんなに冷淡なのですか?
女性という生き物はこんな感じなのでしょうか。
デフォルトでツンツンしているんですか?
もはやこの子の装備には標準装備でツンツンが付与されているんでしょうか。
誰か教えてくれ…
それから、色々話かけて観たが全無視。
流石に俺も諦めた。
そういえば『女性は未知の生物だ』って昔、親父が言っていたな…
親父の世界の店で俺のオキニという子が居たらしいんだが…
自分に好意を持っている仕草を簡単に出来て、いい気になって金を注ぎ込んであげても影では「アイツまぢキモい。金だけ置いて行けばいいのに」とか言われていただとか。
なんかその話は少し違う気もするが…
でも女性と全然話したこと無い俺にはそれすらも全然分からない…
本当に未知の生物だ。
そんな事を思い出し、しばらくすると荷車の揺れは止まり、荷車を引いていた人が目的地に着いたことを知らせてくれた。
ぞろぞろと荷車からハンター達がその地に降りる。
親父から聞いた話や写真で風景は見ていたが実際に己の目で見るのは初めてだった。
バルム山付近 平丘
広大な丘に聳え立つ標高5000メートルの山。山の天辺を溶け残った雪が淡く白に染め、その山を中心に鮮やか緑色の森が囲んでいる。
森の周りには広大な緑地が広がり、所々に苔の生えたゴツゴツした岩が地から出ている。そして所々で草食モンスターがほのぼのと生活している。
写真や聞いた情報よりも絶景だった。
他のハンター達は己のクエストを達成する為にそれぞれ違う方向に歩き出し、移動を始めていた。
「えーと、ゲルフォースは北北西にある草原に居るんだっけ…」
俺もゲルフォースが生息している北北西に歩き出す。
エマもたまたま方向が一緒なのか少し後ろを歩いていた。
北北西の草原までは意外と距離がある為、しばらく歩き進んでいく。
時折後ろを確認するが、エマも変わらず一定の距離を取って後ろを歩いている。
その顔は何か言いたげな表情をしていたが、気にせず進んでいく。
まぁ草原の近くには森や湖もあるしそっちに用があるんだと思っていた。
やがて草原に辿り着き、ちらほらゲルフォースが草原の雑草に顔を埋めている姿が見える。
「よし…今は丁度食事中だな。ンコをする迄待つか」
数十メートル離れた位置に止まり、事前にバックに入れていた袋にンコを入れようと思い、バックを下ろす。
エマの方を確認すると同じくバックを下ろしている。
まさか…
アイツも同じクエストを?ンコを拾いに来たのか?
奇遇だな。それならそうと言ってくれればアイツの分も俺が取ってあげるのに…
女の子なんだし、ンコなんて触りたく無いだろ。
ガルダは温情の思いで声を掛けに行こうとする。
しかしエマはバックを下ろした後、背中の弓を構えた。
そして腰から矢を取り出し、弓にセットし右手で引き、力を貯め此方に狙いを定めている。
え…なんでこっち向けてんの?
「ちょちょ!!まてまて!!俺はお前の分も取ってやろうかって言いたかっただけだ!!誤解だーー!!」
途端エマの右手が矢から離れる。
『ビュンッ』
矢は物凄い速さで通り過ぎ、ガルダの頬を擦り後方へ飛んでいく。
「ヒッヒヒーンッ!!」
後方でゲルフォースの呻き声が響く。
後方を向くと先程の矢が一体のゲルフォースの頭を貫いていた。
ゲルフォースは踠き横向きに倒れていく。
「ああぁぁぁぁ!!!俺のンコがぁぁぁぁ!!大事なンコをする前にぃぃぃ!!」
大事なンコをお腹に溜めているであろうゲルフォースが横たわる光景を見て、もう二度と外の空気を吸うことが出来ないンコの事を思うと胸が痛くなった。
同時にエマに段々と腹が立ってきた。
祝賀会ではめっちゃいい奴だと思ったが、気のせいだ。悪魔だコイツ…
「危ねぇだろ!俺が何をしたっていうんだよ!無視はするし!挙げ句の果てには矢放ってくるし!」
「アンタなんてどうでもいいわ。私はゲルフォースの毛皮を取りに来たのよ」
え…
「早く退きなさい。狙えないじゃない」
あ、そゆこと?俺じゃなくゲルフォースを狙ったの?
ゲルフォースの毛皮の採取クエストですか?
いやでも…
君…俺のクエストの内容知ってるよね。
先にンコ取らせてくださいよ……