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健康診断  作者: ぐれはま
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がんばリウム

白衣の天使は大体年食ってる。何にもドキドキしないし、若い連中がいても「私のせいですみません。責任を取ってすっきりさせてあげます」という気概もない。まったく面白くない。

 尿検査の前日どころか採尿の5時間ほど前に気持ち良く擦って放出したばかりだというのに、蛋白で引っかからなかった。

 皮田わたしの精巣が死んでいるのか、ヤブが見たのか。後者に賭けたいところだが、これは2年連続のことなので、少し博打として弱い。


 それはそうと、あれはなんという検査だったか。ベッドで仰向けになって腹を出し、超音波をあてがわれる検査。担当者の指示に従って、息を吸って吐いて止めてを行い、腹にシャワーヘッドのような形の超音波気をあてがわれる。

 皮田はくすぐったがりで、なおかつ相手がそこそこ力強く機械を押し当ててくるので、吸い溜めていた空気を笑って吐き出してしまう。医者も最初は優しくたしなめてきたが、次第に雑な対応に変化する。

 こっちだって面白くて噴き出してるわけでも、ふざけて笑ってるわけでもない。だのになんだそのムッとした態度は。

 一思いにぶん殴ってやりたい衝動が沸く。だがくすぐったくって力が入らないし、すぐに思考も散っていった。担当医の野郎は俺の手で病院から病院送りになるのをなんとか免れた。


 そういえば採尿したのをどうするか失念して、尿の入ったコップを持って受付に行ったら嫌な顔をされた。他人の尿を見て喜ぶよりは正常な反応だが、赤っ恥をかいた。


 眼圧を図るとき、指で瞼を開いて抑えるように指示を受ける。なんでも皮田はまつ毛がかなり長いので、測定のときは押さえていないと邪魔になるんだとか。

 正直まつ毛が長いと言われて嬉しかった。

 お陰で目に風を当てられるのが非常に苦手だったが、今回ばかりはそこそこ気分良く検査を受けられた。


 身長と体重を測られた。デブなのは自分でも十分すぎるほどわかっていたが、BMIだかBMWだかいうデブさの値が高くて注意を受けた。

「もう2キロは絞ってくださっても大丈夫ですよ」

 どういう配慮の仕方をしたらこの言葉に行きつくのか。外周94㎝ある腹が立ったものだ。


 人間ドックといえばやはりこれ、バリウム。ともに飲まされた発泡剤というのはラムネの味がして美味かったが、やはりバリウムを飲むのは噂に違わぬ気持ち悪さ。

 4回に分けて飲まされたが、量の比率は1:1:2:100くらいで、最後に「残りを飲み干してください」と言われたときは面食らった。塩梅がもう少しあるだろうが。

 そこからいろいろな体制、角度で撮られた。台に寝そべって片方の腰を羽化セルだとか、肩パッドに支えられて脚より頭が上になるように台が動いてうつぶせで腹を浮かせるだとか。

 ゲップを我慢しろとは言われたものの、ゲロの方はするなとは言われていないよな。とエチケット袋を求めたくなるようなアクロバティックな個人撮影を済ませると口を漱ぐように促された。鏡を見ると口元にはバリウムが乾いて張り付いている。ぶっかけ物を撮り終えた女優はこんな気持ちなのだろうか。


 最後は内科検診。何か悩みがないかと問われ、頻尿の話を切り出した。

「泌尿器科に行った方がいいですよ」

 皮田だってそう思うわ。


 会計で下剤を渡された。バリウムを出すためだとか。

 それで一発目の排便。湯にシチューのルーを入れて軽くかき回したようなのが出てきた。白く濁った靄を見て、一日のストレスをケツから吐き出した気分になった。

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