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幕間
それは、ひどくシンプルな一つの性質の突き詰めた結果だった。
一切の無駄をそぎ落としたその体も、その性質も。
ソレがソレであるために、必要不可欠なものだった。
ゆえに、無駄なものは何一つ持ちえなかった。
ただ定められた役割を為すために、それは不要なものだった。
しかし、芽生えてしまった。生まれてしまったのだ。
ソレに必要ではないものを、すなわち自我が。
そうすればもう、ソレはソレ以外の何かでしかありえなかった。
余分なものを得てしまったソレは、もう違う何かになっていた。
人々に疎まれ、駆逐されるべきソレは、気づけば、人の姿によく似ていた。
しかしそれでも、やはりソレは人ではありえなかった。