(9)
■どういう関係なんですか?(54字の物語参加作品)
『関係者以外出入リヲ禁ズ』と書いてある扉の向こうへ、私の夫と片手が猿の女が仲むつまじく手を繋いで入ってゆく。
■39(お題元Twitter@140onewrite様)
3月9日。
ある男が友人と駅前で、39円のチューハイをたらふく呑んだ。
酔い始めたところで梯子酒。
3軒目。9人の客が、卵を手に、瞑想していた。
横を見れば、友人も卵を持っていた。虚ろな眼差し。
「すぐ巣立つ」
卵と友人の額にひびが入る。
どうか酔いの幻覚であれ。男は冷めた頭で、願うばかり。
■涙の裏(お題元Twitter@140onewrite様)
昨夜未明、マンションの室内で三十代の男性が死亡しているのが発見された。
被害者男性の妻は死亡推定時刻にアリバイがあったが、警察は彼女を疑っていた。
「再度、夫人を調べろ」
巡査長の指示に、新米警官は力強く頷いた。
巡査長は記者会見の動画を、ノートパソコンで再生している。
「どうも平静すぎる」
「……『今の国の兵制についてどう思いますか?』なんてズレた記者の質問に『学がないのでわかりません』て返してきましたからね。泣きながらも」
平生の話題の避け方。
夫が殺害された女が、取れる手段ではない、と。
■こぐま君のお出かけ(お題元Twitter@140onewrite様)
こぐま君は襟を正し、北極星のネクタイピンをつけました。
「星座の代表らしくなったな。さ、急ごう」
お父さんのおおぐまさんが、こぐま君をせかします。
こぐま君はお父さんと手をつなぎました。
今日は地球さんのお葬式。
地球さんは他の惑星たちと喧嘩になって、ぶつかり、粉々に砕けたのです。
■急停止の理由は?
バック運転の途中で車が揺れて、急停止した。自動ブレーキが作動したのだ。
「おい、どこにぶつける気だったんだ?」
助手席の彼が、私を笑う。
「問題なかったって!」
私は心臓をばくばくさせていた。すぐ横に柱がある、狭苦しい駐車スペースだった。だけど慎重に運転していたはず――。
私は外に出て車の後ろに回った。そこには大きな水たまり。
「これ。水たまりに自動ブレーキが反応したのよ!」
私は彼に大笑いされた。
だが彼はドライブレコーダーを見たあと、顔面蒼白になった。
「馬鹿にして悪かった。あれは……水たまりに反応していたんだな」
車内の交通安全御守りは、真っ二つに切れていた。
ドライブレコーダーは確認させてもらえなかった。




