(8)窓を閉めろ
怖い話しろっつってもな。あたし霊感とかないし。
つまんないのしか話せないよ?
ああ、そうそう。
うちの兄貴がガタイいいわりに、けっこうな怖がりでさぁ。
眠るときも豆電球つけてるし、家のドアや窓が少しでも開いてると、怯えんのよ。
「なにかが入ってくるようで嫌だ」って言いやがんの。
うちの兄貴ってば、ヒップホップ聴いて、ラグビーやってる癖に、面白いでしょー?
あたしはそんなの気にしないから。
真っ暗でも平気だし。よく窓を開けて、網戸だけを閉めて眠っているよ。
兄貴の奴「窓も閉めろ」とか言ってくんの。ダサ。
ん――ここからちょっと怖くなるから。
オチはバレバレだろうけど、続けるね?
家族で旅行に出かけたときも、あたし、窓を開けて寝てたんだわ。
窓から壊れた社が見えてんのに、気づけば良かったんだけどね。
夜中……隣部屋の兄貴が、壁を叩いてきてさ。
「窓、閉めろ。早く!」って叫ぶの。
寝ぼけまなこで窓のほうを見たら。そしたら。
いたんだ。網戸の網目からぬるぬる入ってくる、
なにかが。
あたしってば、そいつに口から入ってこられてさ。
もうさ、バリバリーっと。中身を食われたあとなのよ。
はい、おしまい。




