(3)紅茶とエド風カルトナージュ
小噺。
「今度、私の家でカルトナージュをしない?」
そう、ハンドメイド仲間のママ友が提案してきた。
カルトナージュとは、厚紙に布を貼り合わせていく西洋の手芸だ。私は二つ返事で、お誘いを受けた。
お誘いの最後に、彼女はこう付けくわえていた。
「エド風のカルトナージュにしましょう」
カルトナージュを作りに行く前の晩になって、ふとそれを思い出した。
……聞きそびれた。エド風って何だろう。
……『江戸』風かな。
私は手芸鋏、それと念のために和柄の布を持って、友人宅に向かった。
彼女の家は、車が三台も停められる広い一軒家。庭先では薔薇が咲き誇り、良い香りを漂わせている。
「ようこそ」
インターホンを鳴らすと、友人が笑顔で迎えてくれた。
机の上のおぞましい布を見て、私は『エド風』が何であるかを理解した。
江戸じゃない――エド・ゲインの『エド』だ。
墓を荒らして、掘り出したものから……剥がして、繋ぎ合わせて。たいへん独創的な、衣類や家具を作った、猟奇犯罪者。米国の悪夢のエド・ゲイン――風。
「これ」
「この布、海外から取り寄せたの」
彼女が、薔薇の香りがする紅茶を注ぎながら、教えてくれた。
「本物の皮膚じゃなくて、がっかりした?」
おぞましい布を前にして、彼女は品良く微笑んだ。