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■庭

「庭を見れば家の人がわかる」らしいから、私は私という人間がばれないよう、いつも庭に気を配っている。

 玄関アプローチには繊細な花。雑草は生やさない。掃除はこまめにして、蜘蛛の巣なんてもってのほか。

 そうして手入れの行き届いた庭にしていれば、誰も、私が××を隠しているなんて気づかない。



■こどものころのゆめ

 自分の中にもうひとつ人格があって、そいつが弱い自分を守ってくれていたり、悪いことをしたりもする。――なんてよく、小・中のころに夢想していたんすよね。聞きかじりの知識から。ああ恥ずかしい。――世間さまがいう悪いことなんて、私ひとりでできますよって。はい、3、2、1、サヨウナラ。



■黒いもの

 部屋のすみに黒いものがある。

 虫じゃない。カビじゃない。泥臭いけれどヘドロじゃない。くしゃくしゃに丸めた髪の毛でもない。

 もっと気持ち悪い「なにか」。わたしが人を恨むときや妬むときに、ぐんと大きくなるもの。

 黒いものはどんどん育ち、今日ついに、真っ赤な口を開けた。



■夏ホラー2019-2021

 寝過ごした。窓の外に知らない景色が続く。

 病院、病院、病院だけでできた街。看護師たちが『ようこそ××様』と、私の名前が書かれた横断幕を広げている。

「次はカクレンボ。カクレンボ駅でございます。お降りの方は捕まらないようご注意ください」

 ……夢から覚めないだけよね?

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