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最後以外はすべて、怪談をテーマにした第6回54字の文学賞『#54字の物語』参加作品です。
■曲がり角
曲がり角のカーブミラーには私や大勢のひとが映っている。
曲がり角のカーブミラーを見る私のまわりには誰もいない。
■寝かしつけ
「ねんね。ねんね」と。
私を撫でる指はびちゃびちゃで。声は天井から響いていて。外の夜風はうるさくて、眠れない。
■終点=始点
車内でうたた寝していたら「もう終点ですよ」と誰かに起こされた。
目覚めると霧深い地。透けた私の体。……隣に鬼。
■メッセージ
『愛している。離したくない』
携帯の液晶にぞっとする言葉が浮かぶ。誰も触っていないのに。ネットも解約したのに。
■メッセージ2
『かーわって』
『かーわって』
『ずっと使っているなんて、ずるいよ』
スマートフォン。タブレット。小型テレビ。
あらゆる液晶画面の端に、知らない子供が映る。物欲しげな目で呼びかけてくる。
『かわって。その体、かわって』




