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(13)河童の包帯
曖昧な記憶がある。
暗い山の中。迷子の私は膝から血を垂らしていた。
側にはびしょ濡れの女の子がいて、にやにや笑っていた。気色悪かった。
「私は河童だ。遊ぼう」
「やだ」
「やだ? お前は川に落とされたのに。しねばいいって、思われているのに」
女の子の髪から水が滴る。
「だからだ。しんでたまるか」
「仕方ない。助けてやる」
女の子は私の膝に包帯を巻いた。
あれからどう山を降りたか覚えていない。
ただ大人になってから、私は四歳の頃、川で溺れたと知った。原因は不明。
そして私には、産まれなかった兄か姉がいると。
間引きで水死した子が、河童の起源だと、知った。
命と古い包帯が、姉からの贈り物のような気がして、まだ捨てられずにいる。
お題元Twitter@Tw300ss様『包む』




