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■置いてっちゃうよ
「早く早く乗り遅れちゃうよ。もう先いくからね!」
収集車に回収されていく生ゴミが、今日も執拗に呼びかけてくる。
■抜群サプリ
「仕事、子育て、地域活動。一人でやるのは大変ですよねぇ。……そんなストレスを解消する、抜群のサプリをご用意しました!」
と。セールスはサプリで私を増やした。
私は七人で頑張ろうとしたが、いざこざがあり、一人に戻った。
難しいものだ。六人の自分を処分するのは、ストレス解消になったけど。
■人の顔
「人の顔を見て話すの、楽しいよね」
恋人がカクテルを含んで笑う。
「相手によるよ」
僕は苦笑いしてウィスキーを呷った。
最近、夜になると。
体に、鱗のように顔が生えてきて、話しかけられるようになった。
不気味に並んだ顔。そいつらの話。思い出せば、どんな強い酒でも酔えない。
■トンネルを走る
暗いトンネルに入ったバスの窓に、私やほかの乗車客が映る。
……錯覚だと思うが、私以外の乗車客はみんな顔が見えない。
……ずいぶんと長く走ったのに、バスはトンネルを抜けない。
振り向く気になれず、私は窓の外を見続ける。出口はまだか。
■日暮はどこへ
みんみんみん。
あの鳴き声は? と僕が聞くと、お父さんは「セミだよ」と答えた。
ジージーも、ツクツクホーシも、セミ。
庭がうるさいけど、夏の間だけだからがまんしろって。
それにしてもいろんな鳴き声。
ごりごりごり。ズルズル。ぎっ。
今日も庭のセミがうるさい。夏はいつ終わる?




