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■手放せない女 (お題元Twitter@memo_kiri様)
歩道に佇む女を目がけて、空から重いものが落ちてくる。
遠いビルの大型ビジョンを眺めていたその女は、異変に気づいて上を見た。
過去の男。依存心。恋人を奪った元親友。道で拾った変なもの。幼い頃に異形の者と交わした約束。
その女は手放せないものが多すぎて。
どれかのせいで命を手放した。
■お昼にカレーを作ろう (お題元Twitter@140onewrite様)
もはやそれは腐り落ちる寸前。ひび割れている所もある。鳥が啄んでいる。
吊り下げられているものからは汁が滴る。くさい。
台所戦線に立つ。庭で痛んでいたトマトと玉葱を刻む。酒と香辛料を使い、先日まで住人だった、肉も、香ばしい匂いに変える。
トマトカレーを完成させた私は、ガラス容器にお茶を注いだ。
■肉の家 (お題元Twitter@140onewrite様)
毎日肉料理が食べたいと言ったのは僕だよ。でもね。来る日も来る日も肉だけで皿の上が茶色と赤色だけではね。食卓から彩りが消えたよ。冷凍庫も冷蔵庫も肉でびっしりなのに庭には鶏。天井からは牛が吊るされている家じゃあ落ち着かない。いなくなった息子の気持ちもわかる。前言撤回が無理なら僕を肉に
■タイムリープ (一行怪談参加作)
私がタイムリープで行き来できるのは、刺されてから死ぬまでの時間だけ。
■暗い部屋
「体を見られると恥ずかしいの。灯りを消して」
そう言った君の腰は細くて、だけど肩を噛む顎の力は凄かった。
僕の全身にすがる腕の数は、二本だとは思えなかった。
背後から君を抱きしめた筈なのに、どうしてか頭から喰われている。
せめて部屋を明るくしてほしい。今の君でいいから、最後に一目見たい。