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断罪の幕が開く


ちょっと、病院行ってて書くの遅れました‼︎

短めですみません‼︎







グスタフ・インツィア公爵。

表の顔は王弟であるが、裏の顔は暗部のボスだ。


そんな彼は、手元にある資料を見ながら……先ほどやってきたシェノア家の者達に許可せざるを得なかった任務内容を思い出し、大きな溜息を吐いた。


「………まさか…こんなことになるとはな……」


最初はあの後見人にさせられた青年を調べていたはずだった。

しかし、暗部の者達はなんの情報も手に入れることができなくて。

国王あにと接触するようになった時には、不確定要素として殺そうとした。

しかし、暗部の者を送り込んでも逆に殺される始末。

何も手出しができなくなった……と思ったら、今回の件だ。

まさか、ラグナ・ドラグニカという青年からこんな大事が判明するなんて……思いもしなかった。

そして、その報告を今日、持ってくるあたり……シェノア家もグスタフが拒否できない状況を見極めていたのだ。



だから、グスタフはその任務を許可するしかなかった。


「…………はぁ…」




今日、起こることはまさにこの国史上初の醜聞となるだろう。

グスタフは考えることを放棄して、目を瞑った。






*****





日中に卒業式が恙無く執り行われ……夕方から、煌びやかなシャンデリアが輝くダンスホールで卒業パーティーが開かれた。

参加者は卒業生、在校生、関係者のみ。

もっぱら、学生達は婚約者にエスコートされて参加していた。

そんな彼らの目線の先にいるには、美しい青年と少女。

柔らかな笑みを浮かべるアルフレッド……ことパラサイトと、黄色の可愛らしいドレスを着たアリシエラ……ローラだった。

見た目は美男美女であるが、パラサイトは若干疲れたような顔をしているし、ローラに至っては鬼気迫る表情だ。

まさに卒業パーティーに相応しくない表情を浮かべていた。


(どうしてっ……どうしてアルフレッドと結婚することにっ……)


ローラはギリッと歯を噛み締める。

最後の場面シナリオだというのに、未だに彼女はこの世界がアリシエラヒロインのものだと疑っていない。

この世界がゲームだと、異常なほどに思い込んでいた。

普通だったら気づくはずのソレに気づかないのは、ゲームのラグナに本気で恋をしているから。

二次元と三次元を区別することができないから。

だから、ローラはこの場面にきても……ラグナが自分を選んでくれると思っていた。

それが、シナリオだから。

きっと、ローラ・コーナーという少女も壊れていたのだろう。

ラグナの隣にミュゼがいることで何度絶望しても、彼が最後に自分を選ぶと信じて疑わないのだから……。



ザワッ……。



会場が騒ついたことで、二人はふっと顔を向ける。


「………なっ…⁉︎」


そこにいたのは……。



漆黒のドレスに身を包んだミュゼと、漆黒の正装を纏ったラグナだった。



複雑に結い上げられた蒼銀の髪には無数の花が飾られ、卒業パーティーには不釣り合いだと言われる漆黒のドレスだというのに……そんな風には感じさせない美しさ。

そこにいるミュゼは、今までの中で一番美しく輝いていた。

隣にいるラグナもそうだ。

いつもはボサ眼鏡であるが、その美貌を晒すように髪を掻き上げており……漂う色気はそこらの青年では出せないほどだ。

その顔に浮かぶのは蕩けるような笑み。

ミュゼとラグナは互いに視線を絡め合いながら、会場に入ったきた。


「……なんて美しい…」

「ミュゼ嬢はあんなにも綺麗だったか?」

「お隣の男性も素敵だわ……」


参加者達はその美しさに感嘆の声を漏らす。

そんな中で唯一、それに動揺していたのはローラだった。


「なんでっ‼︎」


響くローラの絶叫。

人々は冷たい視線を彼女に向ける。



「なんであんたがラグナの隣にいるのっ‼︎」



ローラがミュゼに駆け寄ろうとするが、そうなる前にパラサイトが彼女の腕を掴み制止する。

ミュゼは不思議そうに首を傾げて……にっこりと微笑んだ。



「ラグナの隣に私がいるのは当たり前なのです。だって、私はラグナの婚約者で……花嫁なんですから」



蕩けるような笑顔でラグナに寄り添うミュゼは、とても色気のある美しさを出していて。

それは、ラグナに愛されたからこそ出る艶だった。


「違うっ‼︎その隣にいるのは、私のはずでしょうっ⁉︎だって、この世界は私のためのものなんだからっ……‼︎だから、ラグナは私を選ぶはずー」

「………何を言ってるんだ?俺が選ぶのは愛しいミュゼ、ただ一人だ」

「っっっ‼︎」


パラサイトは彼女に「落ち着いて」と声をかけるが、ローラは暴走気味になっていて。

ミュゼは、ただなんの意味もなく普通に惚気て……ラグナがそれに答えただけの会話だったのだが、ローラにとったらそれは精神メンタルが削られるような会話だったのだろう。

ラグナはそれを見て、本来ならばパーティー後半に行うはずだった作戦を変更すべきだと判断した。


『マキナ、始めろ』

『はい』


念話で合図を出すと、バンッ‼︎と勢いよく扉が開いて兵士達がなだれ込んできた。

参加者達の悲鳴に近い声が出る中、兵士団長が令状を持って声をあげた。



「アリシエラ・マチラス‼︎国家反逆罪で貴様を拘束させてもらうっ‼︎」

「きゃぁっ⁉︎なんなのっ⁉︎」



兵士達がローラの腕を掴み、膝立ちにさせる。

彼女は暴れようとするが、普段から鍛えている大人の男性……兵士には敵うはずがない。



「一体、何事だ‼︎」



騒ぎを聞きつけて、現れた国王陛下は拘束されたローラの姿を見て目を見開く。

事前打ち合わせでは卒業パーティーの後半……ダンスが終わった頃に行動を起こすはずだったのだが、それより早くことを起こしたことに若干動揺しながらも、国王は作戦通りに動くことにした。


「何があった。報告せよ」

「はっ‼︎この娘が国家反逆罪を犯していることが分かりましたので、国王陛下の許可なく、緊急時捕縛権を行使しました。この場でよろしければご報告致します」


緊急時捕縛権は兵士達に与えている権利で、軽いもので言ってしまえば盗みを働いた者がいたら捕まえたりする権利のことだ。

今回はそれをローラを捕らえるのに利用した。

国王は予定調和通りに、神妙な顔で頷く。


「報告せよ」


ラグナはその仕組まれた演技シナリオに目を細めて微笑んだ。







こうして、役者は揃った。




断罪の幕が開くーー。








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