幕間・慟哭の裏側、幻竜と淫魔と寄生虫は語り合う
前話の裏側です‼︎
よろしくどうぞ‼︎
レンブル公爵家のアルフレッドの部屋。
品のいい黄色を差し色にしたアンティーク調の家具が配置されたその部屋で、アルフレッドことパラサイトは肩を揉んだ。
「………いやぁ…中々、上手くいきましたな」
その声に合わせて霧が晴れるように現れた少年……幻竜マキナ。
闇から這い出てくるのは、ナイスバディな淫魔エイダ。
三人は互いに顔を見合わせて、息を吐いた。
「眷属としてやっとお役に立てると思ったら、魔物扱いが酷いっすね〜‼︎過労死するっす‼︎」
「魔物が過労死なんて聞いたことありませんよ。それにラグナ様と花嫁様がご一緒にいられる時間を作るためです」
「そうですなぁ。今まで働いてなかったのですから、これぐらい忙しい方が帳尻が合いましょう」
エイダはマキナとパラサイトに注意されて、ワザとらしく「ぶー、ぶー」と言う。
そんな彼女に、パラサイトは「ところで」と問うた。
「侍女のフリをしての証言はナイスフォローでしたが……あの媚薬はどうされたのです?」
今回の三人の任務は、アリシエラとアルフレッドの結婚を確定させることだった。
ラグナに恋慕を抱いている彼女が、他の男と肌を重ね、結婚することになったら。
それは恋する乙女にとって、絶望的だと言えるだろう。
だから、アルフレッドもといパラサイトは、マキナの幻術でラグナの外見になり……彼女と肌を重ねた。
その後、眠りについたローラ……アリシエラの身体に、マキナが〝復讐の要〟を埋め込む。
翌朝……目が覚めたところで、昨夜のラグナが本当はアルフレッドだったと知り、絶望し……彼女が彼を部屋に引き入れたことをエイダが扮した侍女が証言することで、結婚を逃れられなくする。
これが三人が行なったことだった。
なので、元々媚薬なんてモノは使う予定がなかったのだが……エイダはにっこりと笑った。
「いやぁ……あの女の聖女の力で、パラサイトさんが誘われたという予定だったっすけど、聖女の力をあのオジイさん達が認めなかったらアウトかなっと思ったんっすよ。なんで、精神的にも影響があるタイプの媚薬を保険で用意してたっす」
「………なるほど。それは盲点でしたのぅ。流石、色事に強い種族だ」
「でも、よくそんな媚薬持ってましたね」
マキナの疑問に、エイダは笑う。
その顔は蕩けるような……しかし、どこか飢えた肉食獣のようだった。
「うふふっ〜…なんで持ってたかって理由は簡単っすよ?ジャン君の調教に使ってたっす」
「…………………あー……」
「ジャン?」
事情を知ってるマキナは視線を逸らし、パラサイトは首を傾げる。
エイダは楽しそうに答えた。
「花嫁様を傷つけた元騎士候補っすよ。今はボクが魔物化させて、調教中なんっす」
「…………マキナ様。聞いてはなりませぬ」
パラサイトはマキナの耳を塞ごうとするが、彼はそれにストップをかけた。
「………いや、パラサイトより歳上ですからね?」
「…………あ、失礼致しました……」
マキナは見た目こそは少年だが、歳はパラサイトとエイダよりも上だ。
そして、種族的にも竜であるマキナの方が上位種になる。
しかし、眷属の彼らとは少し違うが……ラグナに従う立場として、彼らと親しくしていた。
だから、たまに見た目に引っ張られてマキナを子供扱いする魔物がいるのだ。
パラサイトは精神的にお爺ちゃんといった感じなので、ついマキナを子供扱いすることが多いのだ。
「まぁ、とにかく。これでアルフレッドとの婚姻は確定したことで、精神的にダメージを負ったはずです。後は卒業パーティーですかな?」
「えぇ。暗部の彼らも滞りなく準備を進めていますので……後はラグナ様の復讐になります」
「きっとラグナ様のことっすから、肉体的にも精神的にも追い詰めるんだろうっすね‼︎」
その後、取り留めない話をした三人は、しばらくしてから解散する。
パラサイトはこのままアルフレッドとして。
マキナは最終段階の打ち合わせをするために暗部へ。
エイダは調教中の愛しい眷属の元へ。
こうして、慟哭の裏側で暗躍していた彼らは……《破滅の邪竜》のための舞台の前座を終えた……。