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幕間・その淫魔は肉食獣のように笑う


【注意】

タイトルの通り、そーいう系の単語が出てきます。

R-18なことはしてません。表現してるのは、キスまでです。

でも、苦手な人は逃げて下さい。


暫く幕間(本編にするかもしれない)が続くかもしれません。

ローラ目線のと、マキナ君のお話を入れたいのです。

今後も頑張りますので、よろしくどうぞ‼︎









「あ、そーっす‼︎ラグナ様、あの元騎士候補生、もらっていいっすか?」

「ぶふっ⁉︎」



エイスは自身の姉の爆弾発言に思いっきり噴き出していた。

場所はラグナが生み出した闇色の小さな箱庭せかいにある屋敷。

復讐の準備を進めていたラグナ、エイダとエイス、マキナはその発言でピタリと手を止めた。


「……ねぇ、さんっ⁉︎今、なんて言ったのカシラっ⁉︎流石に感情の乏しいマキナ様まで驚いてるわよっ⁉︎」


普段、感情の乏しいマキナも……この発言には目を大きく見開いていて。

エイスは姉の肩を掴み、グワングワンと頭を回した。


「ねぇ‼︎自分の発言、理解してるのっ⁉︎」

「してるっすよ〜‼︎あの元騎士候補生……ジャンが欲しいっす‼︎」

「落ち着けや、姉貴っっっ‼︎」


思わず男声になるエイス。

そこでハッとラグナの方を振り返った。

元騎士候補生……ジャン・ビィスタは、二回目の人生でミュゼを剣で惨殺した男だ。

そして、五回目こんかいもミュゼに剣を向けたり……色々としたため、ラグナが何度となく斬りつけて教会に押しつけた男だ。

確かに、彼は洗脳を受けていたがゆえにミュゼを傷つけた。

しかし、ラグナの大切な花嫁ミュゼを傷つけたことには変わりないのだ。

そんな人間を欲しがるなど……下手をしたら、ラグナの怒りを買うかもしれない。

エイスはそう考えて、顔面蒼白になってしまった。

そんなラグナはなんの感情も浮かばない顔で、エイダを見つめる。

そして……静かに聞いた。


「欲しがってどうする」

「魔物にするっすよ」

「力は?」

「他人から集めた精気を魔力に変換するっす‼︎多分、自分一人でできるっす‼︎」


Vサインを出す姉に、エイスはとうとう崩れ落ちた。

この姉の残念さは救いようがない。

もう、本当にどうしようもない。

しかし……ことの展開は、彼の斜め上をいった。


「好きにしろ」

「ありゃ?いいんっすか?」


流石のエイダも許されると思ってなかったのか、きょとんとする。

それを見てラグナは眉間にシワを寄せた。


「許されないと思ったのか?」

「はいっす。ジャンを欲しがったという理由で殺されると思ってたっす」

「……あぁいう無駄に騎士道とか遵守する奴は自分が闇に堕ちたら、とても苦しむだろうと思ってな。それもお前の力を与えるということは十中八九、淫魔化するだろう?あぁいう初心そうなのは余計に苦しむだろうなぁ」


そう言ったラグナの顔は、本気で楽しんでいて。

その顔を見た瞬間、そこにいた三人は悟る。


〝あ、これは復讐を楽しんでいる顔だ〟ーーと。


「昔、喧嘩を売ってきた人間がいた世界じだいを滅ぼした時にな。ただ破滅させるのなら一瞬で終わってしまう。だから、暇だったから英雄騎士という奴を殺戮騎士に魔物化させてやったんだ」

「「「…………」」」

「その時の騎士の嘆きようが凄くてなぁ……自分が守るべき者達を自らの手で殺し、殺し、殺し。感情と肉体の乖離、魔物化による魔力暴走に精神崩壊。致命傷を負っても動き続けて一年だったか?それ一つで国が五つ落ちたんだ。で、アレは超高温度の攻撃で一瞬で消し炭にすることで終わった。中々の見モノだったな」


サラッとかつての世界が滅びた時の話をされて、その時には生まれてすらいない三人は言葉を失くす。

唯一言えるのは、ジャンはそんな結末よりはマシだろうということだ。


「まぁ、とにかく。騎士道や人を守ることが教え込まれてる人間を魔物化するとそれはまぁ、とてもいい感じにぶっ壊れる。流石に淫魔じゃそこまではならないだろうが……人に仇なす存在になった時点で、アイツは苦しむことになるだろう。だから、好きにするといい」


こうしてエイダはジャンを手に入れたのだったー。



*****




「とゆー訳で。魔物化決定おめでとうっす‼︎」

「………はい…?」



穏やかな木漏れ日が溢れる庭園のなか

エイダは向かい合うようにしてガーデンチェアーに座るジャンにサラッと告げた。

ジャンは険しい顔のまま目の前に座る淫魔サキュバスを見つめる。

そして、大きく息を吐いた。


「冗談も程々にして下さい」

「ところがどっこい。ラグナ様の許可も得てるっす。ジャン君は魔物になるんすよ」

「……………はぁっ⁉︎」


冗談ではないと理解したのか、ジャンは目を見開いて固まる。

エイダはそんな彼を見てケラケラと笑った。


「なんでそんなに驚くんっすか?」

「いや、だって……簡単に魔物にするって……」

「簡単ではないっすけど、ボクには今まで溜めてきた精気があるっすから。それを魔力に変換すればお茶の子さいさいっすよ?実際にラグナ様も花嫁様を人外にしてますし」

「…………え?」


ジャンはそれを聞いて、呆然とする。

エイダは楽しそうに笑って答えた。


「ラグナ様にとって、花嫁様は唯一無二っすから、人間のままだと死んでしまうっすよ。まぁ、魂のままでも捕えることはできるらしいっすけど……器がないから愛でられないんっす。ゆえにラグナ様は花嫁様を《邪竜の花嫁》という存在にしたんすよ」

「………つまり…ミュゼ嬢も、魔物になったと?」

「うーん……それは微妙に違うんっすよねぇ。性質は邪竜ラグナ様に酷く類似してるっすけど……あくまでも《邪竜の花嫁》って括りの存在だと考えて欲しいっす」


ミュゼは今、邪竜と近しい性質を持つ《邪竜の花嫁》というモノになり始めているのだ。

それは魔物とは違う存在。

だが、人外であるのは確かだった。


「あ、ジャン君は普通に魔物っすよ?ボクが君に力を与えるんで」


ジャンはそれを聞いて拳を握り締める。

彼は洗脳されていたがゆえに、婦女子に剣を向けるなど騎士としてしてはならないことをした。

毎夜毎夜、ラグナに与えられた死の恐怖に吐いて、嗚咽を漏らしているけれど……いつの日か許されるのではないかと、甘い考えでいた。

しかし、それは自分ジャンの願望で。

そんなに、甘い世界ではなかった。



ジャンは、人間ではない魔物バケモノになる。



それに拒否権はないのだろう。

しかし、それでもジャンは言わずにいられなかった。


「………自分は…騎士を目指して……」

「あははっ、何言ってるんっすか。確かに洗脳されてたとはいえ……君は花嫁様を傷つけたんっすよ?そんな君の夢が叶うわけないじゃないっすか」


エイダは笑う。

その笑顔はとても色っぽいのに、背筋がぞわりと冷たくなった。


「魔物になるのは君への復讐ばつとしていいらしいっすよ?騎士を夢見ていたのに、人を守る立場から人を仇なす立場になることは、君を傷つけるのに最適らしいっすから」

「………なんで…自分を……」

「なんでって簡単っすよ。君をボクのモノにしたいから」


エイダは艶やかな笑みを浮かべて彼の頬を撫でる。

その色香はまさに淫魔に相応しく。

初心なジャンは顔を真っ赤にして狼狽した。


「背徳的で怠惰的で、こよなく色事を愛する種族っすから……騎士道を重んじる君には苦しいと思うっすけど……」


エイダは笑う。

その笑顔は、肉食獣のように鋭かった。



「淫魔ってのは……異性(獲物)の理性をどろっとろに溶かして、色欲に溺れさせて、本能だけで動く獣にして、二度と離れられなくなるように……骨の髄までしゃぶるんっすよ?」



次の瞬間、ジャンの唇は彼女の唇に塞がれていた。









こうして、そこそこの時間をかけて魔物になった彼は、エイダの精気エサの苗床として夢の中で監禁されることになる。

淫魔は夢の中でも実体を有するがゆえに、自分よりも力の強いエイダが生み出した夢から逃げ出すことも敵わない。



色欲とは無縁な生活を送っていたのに、淫魔化したがゆえに爛れた生活を送るようになり。

色欲に反応する本能と、自分の騎士像(りそう)との乖離に悩み、苦しみ……。



長い年月の果て。

エイダの手に堕ちた彼は、色狂いの獣に成り果ててしまった。




そんな元騎士候補生かれの姿を見て、ラグナは……。



「終わりのない色欲地獄に堕ち、獣と化すのも……復讐はめつの一つだな」



と言いながら、とても楽しそうに笑っていた。






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