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邪竜と暗躍する者達の密会(2)


引き続きシリアスですが、密会はここで終わります。


沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます‼︎

今後も頑張りますので、よろしくどうぞ‼︎

次はお久しぶりのミュゼとのイチャイチャになる予定です。






ミュゼとラグナ。

唐突に公爵子息に婚約破棄を願い出て、婚約した二人。

そして、まるで壊れたようにおかしくなった伯爵令嬢。



国王がその二人に手を出すなと命令したのもあって、その二人に何かあると踏んでいた暗部はその情報を手にしようとしていたのだ。



しかし、情報収集に出た者達は全員、何も・・覚えて・・・いなかった・・・・・



国王の護衛をしていた者も、とある部屋に入った瞬間から意識が途切れていて。

毒物、薬物耐性のある暗部の者達から記憶や意識を奪うのは、簡単なことではない。

つまり、それほどまでにミュゼとラグナの二人の情報を得ようとすればするほど……無事では済まなかった。



まるで禁忌に触れたかのように。



いつしか、暗部の者達はその二人の調査を行えなくなった。



だが、二人に近づいた者の中で唯一無事だった者達がいる。

それが身内ゆえにこの二人の調査から外されていたエルドリック、ベラーゼ、エドワード、ビビアンの四人だった。



結果から言えば、ミュゼと自分のことを調べようとする人間をラグナが記憶を奪うことで始末していただけなのだ。

国王があの部屋に入った時や、教会で会っていた時も……自分達がいるから暗部に情報がいかないように追跡者の意識を刈り取っていた。

その理由は簡単。



ただ、ミュゼを守るため。



人間というのが、どれほど強欲かを知っている。

どれほど臆病なのかを、知っている。

邪竜じぶんが側にいるだけで、ミュゼは危険な人物だと認識されるだろう。

事実、ラグナが暗部の者達を対処せずにそのままにしていたら……利用、もしくは殺害されていたに違いない。

ラグナはミュゼのためならばなんでもする。

だから、彼女が人質にでもなったとすれば。

ラグナはもしかしたら、ミュゼを人質にした人物の命令を聞かなくてはいけなくなるかもしれないし……逆に、そんなことをした人物を、組織を、国を滅ぼすかもしれない。

ミュゼが邪竜と繋がっていることで殺害されてしまったら。

ラグナは世界を終わらせるだろう。

だが、愛しい花嫁がそんな目に遭うのは許し難い。

平和に、なんの憂いもなく……笑っていればいい。



人の世に飽きて、ミュゼが完全に・・・人間では・・・・なくなったら・・・・・・



彼女を連れてこの国を去るつもりではあるが……それまでは彼女が苦しむことなく暮らせるように。



だから、ラグナは暗部ではなく……この四人に接触したのだ。





*****




「どこまで、と言いますと?」

「シラを切るのが好きらしいな。なんのために俺がお前ら四人を見逃してやっていたと思っている」


それを聞いたエルドリックは内心、舌打ちをした。

外されていても、少しばかり情報を流してくれる者がいた。

彼らから聞いたのは、ミュゼとラグナを探ろうとすると記憶を失ったりして、二人の情報を一切得ることができなかったということ。

だというのに、この四人で動いている時はそんなことはなく……普通に情報を手に入れることができていたのだ。

そして、その情報は暗部に所属しているとはいえ……人間である四人には理解し難い事実だった。



ミュゼが何度も死を繰り返したこと。

邪竜の花嫁となったこと。

秘匿されし聖女の存在。

重要人物、学園での洗脳。

しかし、その聖女の身体が違う女に乗っ取られていたこと。

その乗っ取った女も人生かこを繰り返し、手に入れてきた知識を使って、五回目こんかいの人生で邪竜を手に入れようとしていること。

………転生者、なる者の存在。



そして……愛しい花嫁を殺されたことに対する、邪竜による復讐。



信じられなかったが、ラグナの力を目にすればするほど……信じるしかなかった。

彼らの話を聞けば聞くほど……凄惨な死を繰り返したミュゼが、唐突に壊れたようになった理由が分かってしまった。


その事実に。

全てをおかしくしたその女ローラに。

ミュゼの身内である彼らが、憎しみを抱かないはずがない。


ミュゼが壊れたことに。

ミュゼが邪竜の花嫁になったことに。

ミュゼが人間では・・・・なくなって・・・・・きていることに。


ミュゼの異常に気づくのに遅れたことに。

邪竜、という存在が家族であるエルドリック達よりも先に……ミュゼの支えになったことに。

少しでも気づいていたら、ミュゼは今も人間のままだったのかもしれないのに。


暗部に所属していたとはいえ、普通の家族だったのだ。

その普通の幸せを壊した原因を、恨まずにはいられなかった。

そして、無力だった自分達を恨まずにはいられなかった。


だから、準備を進めていた。

邪竜とは別に、家族を壊されたことに対する復讐の準備を。



そこまでの流れが全て、目の前にいる邪竜ラグナ仕業ワナだったというのに。



………本当は上手いように動かされているのでは…?と、分かっていたが……身内ミュゼへの情に動かされて、見て見ぬ振りをしてしまった。

だが、今その代償を払う時なのだ。

見逃されていたというのは、この四人に利用価値があるということ。

邪竜ラグナはこの四人に何かをさせたいから、接触してきたのだ。


「………わたし達に何を望むんですか?」

「簡単だ。俺の手駒になればいい」

「………手駒、ですか?」

「喜べよ。お前達にも特別な舞台で、復讐する機会を与えてやると言っているんだ」


ラグナは笑う。

その笑顔はとても美しいのに、背筋が凍るほどに恐怖を覚えるモノで。

本能的に、逃げ出そうとしたくなる。


「インビシブル、マキナ」

「ほいっす‼︎」

「はい、ラグナ様」


ラグナが呼ぶと、部屋の隅……何もない空間から、目に見えない存在感を持つモノと幼い少年が現れた。

少年の方は灰銀の髪に金の瞳を持つ……可愛らしい男の子だ。

その隣には、確かに何かしらの気配があるのだが……目視できず、エルドリック達は困惑する。


「俺の眷属だ。お前達を監視させていた」

「「「「なっ⁉︎」」」」


インビシブルはその気配遮断能力を使って、彼らに張り込んでいた。

そして少年……マキナは、その特殊能力・・・・を買われて、インビシブルと共に行動していた。


「こいつらが得た情報は?」

「問題なく。外部には少したりとも漏れておりません」

「よくやったな」

「お褒め頂きありがとうございます、ラグナ様」


マキナはその顔に少し喜色を滲ませ、頭を下げる。

その姿に似合わぬ姿に、エルドリック達は呆然としていた。


「今後、伝令はこのマキナに託す。文句は受け付けない」


しかし、エルドリック達は素直に頷けなかった。

断ることはできないだろう、と確信していたが……ミュゼを人外にしたラグナにも少なからず憎しみを抱いているのだから。


「我々が、素直に従うとでも?」

「………あ?」


ぞわりっ……。

数ある修羅場を潜り抜けてきたエルドリックは身体が凍りつく。

他の三人に至っては尻餅をつく始末だ。

しかし、それでも……エルドリックは引かなかった。


「確かに、全ての原因……ローラ・コーナーを恨んでいます。ですが、ミュゼを人間ではなくした貴殿にも、少なからず恨みはあるのですよ」

「貴様っ……‼︎」

「待て、マキナ」


マキナが大きく手を上げて振り下ろそうとしたが、ラグナはそれを止めた。

このままそれを許していたら、目の前にいる四人は潰れて・・・いただろう。


マキナを抑えながら……ラグナは笑っていた。

その瞳は全てを見透かすように……呆れた顔をしていた。


「確かに……俺はミュゼを人間ではないモノに……まだ完全ではないが、《邪竜の花嫁》に変えている」

「………………」

「だが、生死がどうなろうと構わないと壊れたミュゼを、邪竜おれという存在に執着させた事の何が悪い?」


ラグナは笑う。

その笑顔は愛しい花嫁ミュゼを思って、蕩けたものになっていた。



「あのままいっていれば、あいつは今よりも酷い壊れ方をしただろうな。生きることも、死ぬことも諦めた人間というのは……本当に人間か?」



ミュゼをあのままにしていたら、それこそレイドと同じような状態になっていただろう。

あの時のミュゼは人間自体を信じられなくなっていたのだから。


繰り返した人生。

誰も救ってくれることのなかった人生。


救いの手はいつも差し伸べられず、ミュゼは死ぬことになった。

しかし、ラグナだけは……四回目だけの短い時間だったが。

彼女に寄り添った。

慈しんだ。

最後は、婚約者アルフレッドを信じて……その凶刃に斬られてしまったけれど。

力を封じられていたラグナは、救うことができなかったけれど。



ラグナだけは、五回目こんかいもその手を伸ばした。



もし、彼がいなかったら……ミュゼは心の拠り所もなく、死の恐怖に怯えて。

いつかくる死を待つという思考しかできずに、生きたいと思いながらも生きることを放棄する。

そんな矛盾した思考回路の果て、今よりももっと酷い……どうしようもなく壊れた存在になっただろう。


だが、今のミュゼは壊れているが……そんな姿とは違う。

ラグナだけを愛し、ラグナだけを唯一とし。

生死を問わず、邪竜ラグナの側にいることを望ませた。

生死を諦めたという矛盾を、生死を問わずラグナの側にいたい……というカタチに変えたのだ。

ラグナのいう心の拠り所。

頼るべき存在に依存させた。

そこにはちゃんと愛もある。

冷たい関係ではなく、互いだけを求めるような……狂おしいほどの愛が存在する。



「人間でありながらも、誰も信じられずに壊れた人形同然になる結末と……人間ではなくなるが愛を持って愛しい存在と結ばれる結末。どっちが、マシなんだろうなぁ」



その質問にエルドリックは答えられなかった。

しかし、ラグナは呆れたような溜息を吐いた。


「どうにも人間というのは、俺を……壊れた者を人間じぶん達の尺度で測ろうとする傾向があるらしい」

「………」

「ミュゼと血の繋がりがあるからと……親しいからと。俺が貴様達に手を出さないと思うなよ」


次の瞬間。

ラグナはその腕を一瞬だけ竜の姿に戻し、中央に置かれていた机を木っ端微塵に叩き割って、消滅・・させた。



「俺を恨むなら、何か行動を起こせばよかったんだ。何もしなかったクセに俺を恨むなど、お門違いも大概にしろ」



その言葉は、確かに彼ら四人の逆らう力を奪うには充分で。

ラグナはつまらなそうな顔をして、溜息を吐いた。


「貴様らにはそれ相応の舞台を用意してやるから、そのまま復讐の準備を進めておけ。じゃあな」




ラグナはそれ以上何も言わずに、インビシブルとマキナを連れ立ってその場を後にする。





その場に残された四人はただ、悔しそうな……悲しそうな顔をするだけだった……。






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[一言] 正に、正論 家族ほど厄介な傍観者はいない
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