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番外だけど幕間・ご都合主義バレンタイン


【注意】

前話と同じく、この世界の成人は十八歳なので飲酒シーンあります‼︎ですが、お酒は二十歳になってからですよ‼︎


今後も頑張りますのでよろしくどうぞっ‼︎






【ミュゼの場合】



「という訳で、チョコレートです」

「……………という訳で?」


ミュゼの部屋でのんびりしていたラグナは、唐突に渡されたチョコレートに首を傾げる。

ミュゼの手には可愛らしくラッピングされた袋があった。


「リオナ様から聞いたんです。前世の世界では感謝や恋慕の気持ちを込めてチョコレートを渡すんだそうです」

「へぇ……」


ラグナは袋を受け取り、中からチョコレートを取り出す。

それは生チョコと呼ばれるモノだった。


「美味そうだな」

「はい。頑張って手作りしましたし、味見もしたので美味しいですよ?」

「ミュゼが作る料理は全部美味いよ」


ラグナはチョコレートを食べようとして口を開き……そこで止まる。

何かを考えるように暫く固まり……ちらりと彼女に視線を向けた。

ミュゼはその視線の意味を理解できなくて、首を傾げる。

そして、ラグナはニヤリと微笑んで……彼女の唇にチョコレートを押しつけた。


「ふにゅ⁉︎」

「はい、軽く咥えて」

「むぅ?」


ミュゼは訳も分からずチョコレートを咥える。

それを確認したラグナは、そのまま顔を近づけて……。


「ん」

「っ⁉︎」


唇が触れるか触れないかの距離感で、チョコレートを食べた。



要するに、口移しである。



ゆっくりと離れた顔。

至近距離で見つめ合い……ミュゼは顔を真っ赤にして、わなわなと震え出す。


「ラグナッ⁉︎何するんですっ⁉︎」

「あははっ。ここ最近、イチャついてなかったから……良い機会かと思ってな」


そう……ラグナは思っていた。

ここ最近、あの馬鹿聖女の所為で忙しかった。

復讐をしているから、忙しいのは仕方ないのかもしれない。

だが、それでも。

愛しい花嫁ミュゼとイチャつく時間が少ないのは、ラグナにとって問題だった。

まぁ、人前でイチャつくのを許可されたのでそれは徐々に解消してきている問題なのだが。



まぁ、なんだかんだで。

ラグナはイチャイチャできる機会があるのならば逃さないようにしようと思っていたのだ。



まさか……ミュゼ自ら口実を用意してくれるなんて思わなかったので……ラグナはこの状況を利用してしまおうと悪いことを考えたのだ。

何が言いたいかというと……〝ミュゼがイチャつく口実を用意してくれたんだから、我慢せずにスキンシップしていいよな?〟と行動に移すことにした。


「後、七回は口移しできるな」

「あ、ぅ……」


ミュゼが作ったチョコレートは、全部で八個。

ラグナは蕩けそうな笑顔を浮かべてミュゼの口元に次のチョコレートを押しつける。

まぁ……ミュゼも嫌ならば拒否すればいいのだが……彼女の方もイチャつくのは恥ずかしいけれど、満更でもないので。



かくして。


邪竜と花嫁のバレンタインは砂糖を口から吐きそうなほどの甘ったるさを残して過ぎて行った……。





【ヴィクトリアの場合】




「という訳でごめんなさい」

「………どうしたんですか?」


教会にヴィクトリアに会いに来たレイファンは、唐突に謝られて目を丸くする。

気まずそうな顔をするヴィクトリアは、目を逸らしながら謝った理由を教えてくれた。


「その……バレンタインという行事が異世界にはあるらしくて……チョコレートを渡すらしいんですの」

「はぁ……?」

「ですが、わたくしは料理を作るのを許可されてませんし……買い物もできませんわ。流石に…貰い物のチョコレートを渡すのも失礼ですから……結局、レイファン様に渡せなくて……」


そこでレイファンは「なるほど」と納得した。

そんな彼が懐から出すのはラッピングされた箱。

それを見たヴィクトリアはキョトンとした。


「………それは?」

「カルロスからチョコレートを持って行った方がいいと言われて持ってきたんです。〝地域によっては男から渡すものらしいですよ〟とか意味の分からないことを言っていたので……よく分からなかったのですが、こういうことだったんですね」


クスクスと笑いながら、レイファンは箱を開けて丸いチョコレートを摘み、彼女に差し出す。

そして、色っぽい笑顔を浮かべた。


「はい、あーん」

「えっ⁉︎」

「食べて下さい」


有無を言わさない笑顔に押され、ヴィクトリアは恐る恐る口を開く。

彼女の小さな口にチョコレートを放り込み、レイファンも一つ食べる。

ヴィクトリアはチョコレートの甘さに幸せそうな笑顔を浮かべた。


「美味しいですわ」

「えぇ、美味しいですね」


レイファンは今度は箱ごと差し出し、彼女に「食べさせて下さい」と口を開けた。

……頬を真っ赤にしたヴィクトリアは、視線をウロウロさせながら……彼と同じようにチョコレートを食べさせる。


「貴女の手から食べると、さっきより美味しいです」



その後、二人は互いに食べさせ合い……。



こちらも、初々しさを残しつつも、砂糖を吐きそうなバレンタインだった……。





【リオナの場合】



「カルロス様、ありがとうございました」

「いーえ。どう致しまして」


リオナからレイファンへの伝言を頼まれたカルロスは、リオナと酒(弱め)を飲み交わしていた。

教会への不法侵入が通常化したため、リオナは既に彼への忠告を諦めていて。


結果、〝不法侵入黙っててやるから、ちょっとお使い行ってくれません?〟と利用までする始末。

そういう強かさもカルロスは、面白くて仕方なかった。


「にしても優しいですね。ヴィクトリア様がチョコレートを用意できないからって用意するようレイファン様に伝言するなんて」

「まぁ、異世界のイベントですけど……一応、恋人達のイベントですからね。初々しい恋人同士であるヴィクトリア様とレイファン様にも楽しんでもらいたいなぁって」


カルロスはそれを聞いて〝お節介だなぁ〟と思ってしまう。

初々しい恋人だなんて言っているが、それはヴィクトリアだけがという意味で。

レイファンの方はウサギの皮を被った狼なのだ。

つまり、あの人はヴィクトリアに合わせているだけ。

多分、少しでも慣れたら容赦なく食べてしまうのだろう。

……下手に恋人としてのイベントなんて起こしてしまったら、レイファンが我慢できなくなり食べられる時期が早まる可能性だってあるのに。


(まぁ、オレには関係ないけど)


心の中でご愁傷様と手を合わせ、懐から素の箱を取り出す。

そして、なんでもないように彼女に差し出した。


「これは?」

「チョコレートですよ。レイファン様に伝言を頼まれた時に、オレもバレンタインのイベントというのを知ってしまいましたから。それを無視して何も用意しないほど薄情じゃないですよ?」

「………催促した訳じゃないのにすみません」

「いいえ、オレも食いますし」


リオナは素直にチョコレートを受け取り、口に放り込む。

ふんわりと香る味に、リオナはふにゃっ……と微笑んだ。


「美味っ‼︎ウィスキーボンボンですね‼︎」

「ウィスキーボンボンではないんですけどね。まぁ、ちょっと強いので気をつけて下さい」

「はーいっ‼︎」


と言いながらも……ほいほい食べるリオナを見て、カルロスは笑う。


彼女は理解していなかった。

そこにいる男は、とても強かで……小細工が得意な男で。

ついでに……今食べているチョコレートは、カルロスが用意したもので、中に入っているのがお酒ではなく……恋人達が使うようなモノだということを。


リオナは、そんな男に狙われているということをもっと早く理解するべきだった。


「オレも頂きますね」


カルロスは声に乗せずにその続きを呟く。




そして、彼女はパクッと彼に食べられてしまうのだった。






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