表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/82

邪竜ルート、あるいは異なる世界の物語(4)


沢山の方に読んでいただき、ありがとうございます‼︎


【注意】

今回は本作の主人公ミュゼがいる世界ではなく、ゲームの世界において、ゲームヒロイン(アリシエラ)とのラブシーンがあります。

ついでに残酷表現もあります。

苦手な方は逃げて下さい。



多分、次の更新は14日ぐらいなるはず……。

邪竜ルート編は後一回で終わる予定なので、よろしくどうぞ‼︎







「……………」

『……………』



何度静まり返ればいいのだろう。

カルロス達はドス黒いオーラを出すミュゼとラグナから、スッと視線を逸らした。


「………ゲームとはいえ…なんで俺がアイツを慰めなくちゃいけないんだ……それも抱き締めるだと……?」

「…………アリシエラ様のこと、ぎゅーぅって抱き締めてましたね……ゲームとはいえ、ムカッァ……ってします」


ゲームの世界のラグナは、アリシエラを慰めるようなスキンシップをしていて。

あくまでもフィクションだと分かっていたが、二人はそれでも苛立つ感情を抑えきれなかった。

ミュゼからしてみれば、ラグナが自分以外の女性に触れることに対して。

ラグナからしてみれば、ミュゼを殺した原因となった女と親しくしている自分の姿に怒りを覚えていたのだ。



「………えっと…見るの、止めますか?」



リオナは、なんとかこの負のオーラが満ち始めている状況を打破したくてそんなことを言う。

ミュゼは大きく息を吐き……リオナに仄暗い笑顔でにっこり笑いかけ、答えた。


「いいえ、ローラ様がどうラグナに接触してこようとしているかを知るためなので……我慢するのです」

「あの……ですが……」

「大丈夫です」

「あ、はい……」


有無を言わせないミュゼの笑顔に、リオナは早々に引き下がる。

リオナはこれ以上何かを言ってとばっちりを受けるのを恐れたのだ。



かくして、邪竜ルートは続く。





*****





慰めてもらった晩。

その翌日。


私は驚きを隠せなかった。


「ラグナ・ドラグニカです。よろしく」


そこにいたのは、学園の制服を着たラグナだったのだから。







〜〜カフェテリア〜〜



「もうっ‼︎驚いたわ‼︎」

「すまん、驚かせようと思って黙っていた」


ラグナはクスクスと笑う。

ずっと夜しか会えなかったから、明るい時間帯に会えることが嬉しくて……なんだか頬が緩んでしまう。


「でも、なんで急に学園に?」

「お前を悪意から守りたいと思ったから」


ストレートな物言いに、私は言葉を失くす。

だって嬉しくて仕方ない。

ラグナが私のために学園に通ってくれるなんて……。


「これからは俺が側にいる」


胸の中に甘い感情が満ち溢れる。

あぁ……この気持ちにどんな名前をつければいいの?









それから、私はずっとラグナと一緒にいたわ。

授業を受ける時も、ご飯を食べる時も。

やっぱりミュゼさんは忠告してきたりしたけど……ラグナが守ってくれた。


「お前がミュゼ・シェノアか」


ミュゼさんから私を隠すように立ったラグナは、彼女を睨みつける。

ミュゼさんは酷く怪訝な顔をして、私とラグナを見ていた。


「………また、違う男性と親しくしてるのですか」

「貴様には関係ないだろう」


ラグナの低い声に怯むことなく、ミュゼは肩を竦めて嘲笑う。


「いいえ、関係あります。彼女が親しくしている男性の中には私の婚約者……公爵家子息だっていらっしゃいます。ならば、婚約者である私が自分の婚約者や親しくしている女性に文句を言うのは正しいでしょう?」


なんで、分かってくれないの?

私と殿下達は、ただの学友なのに。


「婚約者がある身で他の異性と仲良くするなど、不貞でしかありません」

「私と殿下達は学友だわっ‼︎どうして信じてくれないのっ⁉︎」


私の言葉にミュゼさんは目を見開き……そして呆れたような顔をした。



「逆にどうして信じてもらえると思っていたのですか?第三者の目から見たら、学友以上の親しさなのに?」



ミュゼさんの瞳には蔑みが入っているようで。

私の身体がビクッと震える。


「…………私は忠告しました」


彼女は諦めたのか、それだけ言ってその場を去って行った……。






〜〜空き教室〜〜




そして、その日の放課後。


私は誰かに空き教室に呼び出されて、一人で向かったところ……その場所に閉じ込められてしまった。


「誰かっ‼︎誰か助けてっ‼︎」


何度も何度も叫んで。

どれくらい経ったのだろう?

窓から差し込む夕日が傾いて、夜の世界になり始める。

余りの寂しさから、頬に一筋の涙が伝ったその時ーー。



ガチャリ……。



「あぁ、ここにいたのか」



ラグナが、来てくれた。



「ラ、グナぁ……」

「怖かったな。大丈夫だ、俺がいる」


そう言って強く抱き締めてくれるラグナの体温が心地よくて。

冷めきった身体に、その熱が移って……安心した。


「ラグナ……抱き締めて……」

「あぁ……勿論」


ラグナがいてくれると、ドキドキするけど……安心するの。



あぁ……きっとこの気持ちは。




〜〜星明かりの丘〜〜





満点の星空の下。

ラグナが連れて来てくれた花畑で、私達は向かい合っていた。


「アリシエラ……俺は、お前に話さなきゃいけないことがある」

「………え?」


彼はとても不安げな……でも、覚悟を決めたような顔で私を見つめていた。


「お前は俺を、嫌うかもしれない。でも、俺はずっと隠し事をしたまま……お前といたくないんだ」


そう言った彼の身体を黒い靄が包み込んでいく。

そして……それが晴れた瞬間とき、そこには漆黒の竜がいた。


「……ラ、グナ……?」

『………隠していてすまない。俺の名は《破滅の邪竜》。世界を滅ぼす存在だ』


月の光を受けて輝く鱗。

煌めく金の瞳。

本能的な恐怖を感じてしまったけれど……その瞳は。

泣きそうな瞳は、優しいラグナのままだったわ。


『俺が、怖いか?』

「………怖くないと言ったら、嘘になるわ。でも、その優しい眼差しはラグナよ」

『……………』

「竜だって関係ないわ。ラグナはラグナだもの」


不安だったのね。

花嫁を探していた、という言葉……貴方の理解者を探していたのね。

私は、彼の身体にゆっくりと触れ……抱きついた。


「好きよ、ラグナ」

『………アリシエラ…?』

「貴方が好きなのよ」




そうして、人の姿に戻ったラグナと。





私はファーストキスをした。







〜〜庭園〜〜




いつものように庭園でラグナを待っていた私。

そんな時、漆黒のローブを纏う美しい女性が話しかけてきた。

金髪碧眼の、見たことがない女性ひと


「あぁ……いらしたわ。失礼だけど、貴女がアリシエラ・マチラスさん?」

「えっと……はい…貴女は?」

「わたくしは邪竜様の使徒ですわ。貴女にご用があって参りましたの」

「ラグナの?」


私の問いかけに彼女は微笑んで頷く。

そして、優雅な仕草で手を差し出してきた。


「違う場所に連れて行くように指示されましたの。ついて来て下さいますか?」




とても優しい笑顔で笑う彼女に……私は素直に頷いて、従った。







〜〜テグノー遺跡〜〜




そして、連れてこられた遺跡で、私は縄で動かないようにされてしまった。

「どうしてっ⁉︎」と叫んだら、「簡単に騙されてくれて、楽でしたわ」と言われてしまった。

ここでやっと、自分が誘拐されたのだと理解したわ。



恐怖で震えていたら、ジャラジャラと装飾をつけた黒ローブの人が告げた。


「安心なさい。怖がることはありません。貴女は我らが邪竜様の生贄……《邪竜の花嫁》となるのですから、光栄に思わなくては」


ラグナの花嫁が、生贄?

それを聞いた瞬間、私は激昂して叫んでいた。



「違うわっ‼︎花嫁は生贄なんかじゃないっ‼︎ラグナの理解者のことを言うのよっ‼︎」



そう、ラグナにとっての花嫁は彼の理解者のことを指し示すのだから。

生贄なんていう言葉で、汚さないで欲しい。



「アリシエラっ‼︎」


そんな中、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

地上への入り口……そこに立つのは……。


「ラグナ……っ‼︎」

「貴様らっ……‼︎」


遺跡に乱入してきたラグナの姿を見て、思わず泣きそうになってしまった……。

でも、私の首にスッと剣が添えられた。


「お会いしとうございました、邪竜様。消え去られてしまった時はとても心配致しました。さぁ、真の姿にお戻り下さいませ」


黒ローブ達が何かの呪文を唱えると、ラグナが苦しみ出して……本来の竜の姿へと変わっていく。

一体、何が起きてるのっ⁉︎


「邪竜様は元々、我らの……この遺跡にいらっしゃったのですよ。ですが、勝手に消えてしまわれて……とても困りました」


ラグナの身体を光の鎖が拘束する。

「止めてっ‼︎」と叫んでも、それは止まらない。


「ですが、邪竜様がこの小娘に傾倒していらっしゃるというのを聞き、利用したのですよ」


彼らは言う。

ラグナは元々ここにいて、でも逃げ出した。

そこでラグナと親しくなった私を誘拐することで、再びこの場所に連れ戻したのだと。

そして、ついでなので邪竜が気に入った私を花嫁として生贄に捧げることにしたということを。


「そんな……私の、所為でっ……‼︎」


ラグナは私と親しくなったから、私のためにここまで戻ってきてしまった。



仲良くならなかったら、ラグナは囚われることがなかった?



でも、仲良くならないなんて……無理だったわ。

私は、一目見た時からラグナのことが好きになっていたのだから。

だから、悩んでいてもこの状況は解決しない。

ボロボロと溢れる涙を拭い、私は手を強く握り締める。

そして、私は自分が生贄にされてしまう恐怖を押し留めて、剣を握る人に叫んだ。


「一体、ラグナに何をさせるのっ‼︎」

「……何を?あははっ、愚かなことをお聞きしますね。簡単ですよ……我ら……《邪竜教》の願望はただ一つ」


口元に笑みを浮かべて、視線をラグナに向ける黒ローブの人達。

そして、彼らは答えた。



「世界の破滅きゅうさいですよ」



ぞわりっ……。

その声の恍惚とした感じが、なんだか不気味で、鳥肌が立つ。

彼らは聞いてもいないのに、どんどん説明してくる。


「世界を滅ぼして、ゼロの世界からまた新たに始めるのです。この世界は穢れた存在が多過ぎる。一度、浄化すべきなのですよ」


あぁ……そんな。

この人達は、ラグナに世界を滅ぼさせようとしているの?



『グァァァォァァァァァァァアッ‼︎』



ラグナの叫び声が空間を震わせる。

痛みに満ちたその声に、私の目から再び涙が溢れた。


「止めて……ラグナは、世界の破滅なんて望んでないの」

「お黙りなさい。貴女は大人しく殺されればいいのです」


そして……その人は剣を高く持ち上げて。



「さぁ、邪竜様。世界の滅亡を始めましょう」



私の心臓に、突き立てた。



「…………ぁ…」


ラグナの目が大きく見開かれる。

そして、その身から一気に漆黒の粒子を放出させて。



『アァァァァァァォァァァォァォォォァァァァァア⁉︎』




世界が震えるような咆哮を、挙げた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ