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邪竜ルート、あるいは異なる世界の物語(2)


短めです。


著者の事情が終わりました、少しずつ更新頻度が増量してまいります‼︎

ですが、プロットがほとんど残ってないのです。

ついでに言うと、なんか書きたいと思って書いた作品も連載(明日から)していくことにしたので、不定期更新かもです。



後ちょっとで五十話です。

沢山の方に読んで頂きここまでこれました、ありがとうございます‼︎

なので、何か記念企画とかしたいと思います(具体的には決めてませんが)。

気になる人の話などリクエストがあったら、チャレンジしてみたいと思います。


今後も頑張ります、よろしくどうぞ‼︎






あの日の、泣きそうな彼の顔が頭から離れないの。



「はぁ……」


可愛らしいピンクを基調とした私のお部屋の中で、思わず溜息を吐いてしまう。

目を閉じる度にあの人の顔を思い出す。

艶めく漆黒の髪。

宝石のように煌めく金の瞳。

人ならざる美しさを誇る美貌。

そして……悲しそうな彼の顔。


(あの顔を思い出す度になんだか胸のあたりが苦しくなるわ……)


胸元を握り締めて、目を開ける。

煌めくお星様が、なんだか彼の瞳みたいだった。




〜〜ダンスパーティー〜〜




淑女教育の一環として、毎月開かれるダンスパーティー。

先月のように庭園に出てみたら、そこに彼はいたの。

彼は私を見て驚いたような顔をして……逃げようとしたけれど、それより先に彼の手を掴んだ。


「待ってっ‼︎」

「っ⁉︎何をっ……」

「お願いっ‼︎お話ししたいのっ‼︎」

「……………」


彼は泣きそうな顔をして、その場に留まってくれる。

私はにっこりと微笑んだ。


「ねぇ、私と友達になりましょう?」

「………は?」


彼はその言葉を理解できなかったのか、怪訝な顔をする。

でも、私は再び繰り返した。


「友達になりたいの。はい、決めたわ。今日から私達は友達ね」

「…………………はぁっ⁉︎」

「私はアリシエラよ。貴方のお名前は?」

「……………………」


逃がすつもりはないと、手を強く握ると……彼は呆れたような、泣きそうな顔で答えてくれた。


「…………ラグナ、だ」

「……………ラグナ……」


彼の名前を心の中で反芻すると、胸がずくんっ……と疼いた。

前は教えてくれなかったのに。

でも、今日の彼は教えてくれて。

なんだか嬉しくて……私は彼に微笑んだ。


「うふふっ、ありがとう。ラグナ。よろしくね」


遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。

私は彼とまた二日後の夜にここで会うことを約束して、その場を去った。








〜〜数日後〜〜



あれから何度もラグナと同じ時間を過ごして分かってきたことがある。


彼は凄く寂しがり屋なこと。

甘いお菓子が好きなこと。

そして……誰かの温もりを求めていたこと。


彼のことを一つずつ知るたびに胸がドキドキする。




この気持ちは……一体……?




*****




『……………』



全員が黙り込んでいた。

いや、正確には言葉を発することができなかった。

何故なら……それほどまでにラグナの放つ黒いオーラが恐ろしかったからだ。


「ラグナ、大丈夫ですか?」


膝の上に乗せられたミュゼが彼の頬に手を添える。

ラグナは険しい顔をしつつ、答えた。


「………俺が寂しがり屋だと?ふざけやがって……」

「寂しがり屋じゃないんですか?よくくっついてますよね?」

「それはミュゼにくっつきたいだけだ。寂しがり屋な訳あるか。眷属達もいるのに……」


グチグチと文句を言うラグナ。

ミュゼはクスクス笑いながらそんな彼を宥めた。


「というか……ゲームなるもののシナリオとはいえ、息子達が一人の少女に言い寄っているのは親としてなんとも言えない気持ちになるな……」


国王がそんなことを呟く。

ラグナルートは、四人との交流をしつつ、ラグナと交流するという内容だった。

つまり、王太子レイド宰相子息ヴィクター騎士候補生ジャン公爵家子息アルフレッドの四人がアリシエラに言い寄り……アリシエラはラグナと仲睦まじくしているのだ。

父親である国王は、ゲームの中とこの世界の息子の軽率な行動に呆れていた。


「兄上は頭が軽いみたいですね。婚約者を放って、爵位の低い女性に現を抜かしていたのですから。それも未来の要となるだろう者全員が……」

「そう…ですよ、ね……王族だからこそ婚約者じゃない女性を贔屓にするのは、アウトですよね……」


レイファンの言葉にカルロスは険しい顔をする。

不思議に思った皆は首を傾げ……心配するような視線を受けながら、カルロスは国王とレイファンにゆっくりと頭を下げた。


「すみませんでした、国王陛下。レイファン様。従者とはいえ殿下の愚行を止められず……」


謝られた二人は顔を見合わせ、静かに首を振る。

そして、国王は優しい声で告げた。


「いいや、カルロスは悪くない。王族……王太子付きの従者だったのだ。逆らえるはずがないだろう?」

「父上の言う通りです。それに頭の足りない兄上ですよ?あの偽聖女関連で君が逆らったら、君が何をされるか分からなかった……だから、責めるようなものじゃないですよ」

「…………ですが…止められていたら……殿下は……」


カルロスは考えていた。

従者や使用人、騎士、国民は王族を敬い従う。

そして、王族はそれに答えるように国を、人々を導く。

だからこそ、従者が王族に逆らえないのは仕方ないことだが……もし少しでも逆らっていたら。

レイドの行動を諌めることができたのなら。

レイドは廃人同然にならなかったのではないかと、思わずにいられなかった。


かつて彼に救ってもらったからこそ……どうにかするべきだったのかもしれないと。


「カルロス」


そんな彼の思考を遮ったのは、ラグナだった。

彼はミュゼに慰められているまま、笑う。


「お前が止めようが止めまいが結果は変わらなかったぞ」

「………え?」


その言葉にカルロスは止まる。

ラグナはクスクスと黒い笑みを浮かべながら、続けた。


「もし、五度目こんかい、馬鹿王子が何もしなかったと仮定しよう。だが、俺はいつの日か目覚め、ミュゼを見つけていた。俺の花嫁がいるんだ。微睡んでいたから時間はズレるだろうが、必ず起きていたぞ。あぁ……もしかしたらあの馬鹿女に強制的に起こされていたかもな」

「………えっと…つまり?」

「もし五度目こんかい、馬鹿王子達が何もしなくても。俺は愛しい花嫁のために、問答無用で復讐したさ。だから、お前のもしも止められたらは愚考でしかないんだよ。止めてあいつらが何もしなくても、止めないで何かをしてても俺に始末されるのは決まっていたのだから」


カルロスは黙り込む。

そして……ゆっくりと息を吐き、苦笑した。


「ラグナ様ってば優しい〜。オレを慰めてくれたんですか?」

「調子乗るな、殺すぞ」

「申し訳ございません、少しばかり調子に乗りました。お許し下さい」


軽いノリで言った次の瞬間には、ビシッと九十度の角度で頭を下げていた。

それを見てミュゼは笑う。


ラグナはカルロスの罪悪感は結局、関係ないと言ったのだ。

言葉では慰めていないと言っているが、それは嘘だとわかっていて。

どうやら、ラグナは多少慰める程度にはカルロスを気に入っているらしい。


「ラグナは優しいです」

「……………」

「あははっ、照れてます」


プイッとそっぽを向くラグナに、ミュゼは更に笑みを深める。


そのままイチャイチャに突入しそうなところで、ヴィクトリアが「あぁっ‼︎皆さん、見てくださいっ‼︎」と声をあげる。

彼女の視線の先に全員が目を向けると……。




空中に浮かぶ映像に映っていたのは……。






*****




赤と黒を基調とした制服を着崩すことなく着た彼女は、真剣な眼差しをしていて。

雪に水色を混ぜたような蒼銀の髪。

煌めく菫色の瞳。


私に向かって歩いて来た彼女は、私の目の前で止まると……優雅な仕草で頭を下げてきた。


「アリシエラ・マチラス様ですね?」

「は、はいっ……」

「私はミュゼ・シェノアと申します。アルフレッド・レンブル様の婚約者ですわ」

「アリシエラ……です……」


彼女は笑っているのに笑っていないような顔で見つめてくる。

ドクドクと心臓が煩い。



ミュゼさんはとても綺麗なのに、なんだかとても怖いの。



「お話があります。少し、よろしいですか?」


私は、その言葉に頷くしかできなかった。

ミュゼさんに連れられて行った先は、人気のない庭園。

いつもラグナと会っていた場所。

彼女は真っ直ぐに私を見て、言ってくる。



「私の婚約者を含め、レイド王太子殿下方に近づかないで下さいませ」



ミュゼさんは言う。

婚約者がいるのに他の異性と親しくしているのは醜聞になると。

他の令嬢達も、婚約者がいる殿下達とは親しくなり過ぎないように……二人っきりになったりしないように距離を置いていると。

他の令嬢はいけないことだと分かっているから、恋心を胸に秘めているのに……婚約者でもない私がその方達に近づいているのが許せないのだと。

私と殿下達の距離感は近過ぎて、令嬢達が怒っているのだと。


レイド殿下の婚約者マデリーン・ティガレット公爵令嬢は、王妃教育のため学園に来ていない。

宰相子息のヴィクター様の婚約者ビビアン・マルタ侯爵令嬢は病弱のため学園に来ていない。

そうなると注意を促すのがミュゼさんの役割になったため、こうして言いに来たのだと。


「そんなこと言われてもっ……私が殿下達に近づいた訳じゃっ……」

「勿論、殿下達にもご忠告しました。ですが、殿下達は貴女との距離感を変えられることがなかったのです。ならば、貴女にも注意をするしかないでしょう?」


ミュゼは呆れたような溜息を吐いて、ゆっくりと頭を下げる。



「どうか平穏のため、殿下達に近づかれるのを止めて下さいませ」




そう言ってミュゼさんは去って行く……。

その場に残された私は、どうすればいいのか分からなかった………。








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