かくして話はまとまり、巻き込まれた人々の恋が始まる
あけましておめでとうございます。
お待ちして頂いてる方達には、遅くて申し訳ありません‼︎
そして短文申し訳ありません‼︎
相変わらず不定期続きますが、よろしくどうぞ‼︎
話をまとめると、こうなった。
主人公になれなかったから、アリシエラの体を乗っ取った。
多分、手に入れたタイムリープの能力がその攻略対象達を攻略するためだと勘違いして使っていたんじゃないかと。
「そして、このゲームには四人の攻略対象……予想はついてると思うが、王太子、宰相子息、騎士候補、公爵家子息のルートをクリアすると俺を攻略できるようになるらしい」
「……………ローラ様が言っていたラグナルート、というヤツです?」
「…………そんなこと、聞いてたのか?」
「はい。その時は理解できませんでしたけど……ルートって道筋って意味ですよね?つまり、ラグナのお話ってことですよね?」
ミュゼが聞くと、ラグナとリオナが頷く。
彼女は顎に人差し指を当てながら、首を傾げた。
「もしかして、他の人達はその攻略?というのが面倒で……ラグナのお話に入ったと思ったから、五回目で体を入れ替えたとかありえます?」
ミュゼのオブラートに包まない言葉に、しんっ……となる。
つまりは、他の男の相手は面倒だからアリシエラにやらせたと言ってるようなもので。
カルロス達は〝嫌、そんな横着した理由で身体を入れ替えるとか……〟といった感じだったが、ラグナとリオナはそれに「なるほど……」と納得していた。
「……………推しキャラ以外は、ルートやりたくない勢だったらあり得ますね……」
「………オシキャラ?」
「あ、自分が一番好きな登場人物のことです。ローラ様はラグナ様がその推しキャラだと思うんです」
それを聞いたラグナはミュゼを抱き締めながら、面倒そうに溜息を吐く。
「王太子どもはどうでもよさそうな態度を取ってたから、可能性は高いぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ。四回目までは、他の男の相手は面倒だからアリシエラにやらせて……自分は裏からシナリオ通りの展開になるように動いていたってところか。確か、友人として振舞ってたんだよな?なら、友人だからこそ嘘を信じ込ませられたかもしれないしな」
「…………なるほど…人間特有のアレですね。友人という信頼関係の上で、嘘を真実のように語れたから、素直なアリシエラ嬢は信じてしまったというんですね」
レイファンが納得したように語る。
王子として過ごしているからこそ仮面をかぶって接する輩も多いのだろう。
嘘を誠のように語る奴を何人も見てきたからこそ、彼はそれに納得していた。
「…………なんか、報われないっすね……殿下達……」
カルロスがなんとも言えない複雑そうな顔になる。
言ってしまえば、彼らはローラがラグナの寵愛を得ようとしたがために利用されていたに過ぎなかったのだ。
それが理由でミュゼを傷つけ、邪竜の怒りを買い、苦しむことになったのだから……哀れんでしまうのも仕方のないことだった。
「というか……そもそもの話、この世界でそのシナリオが確実に起こるって勘違いしてる方がおかしいんだ。平行世界って知らないのか?」
「えっと……確か、沢山の世界があるってヤツですよね?」
リオナの言葉にラグナは頷く。
「そもそもの話、異世界もあるし、平行世界も存在する。そのゲームを作った転生者がいた時には、ゲーム通りのシナリオが起こったようだけど……さっき言ったように、その四人ごとの主軸になる場合もあるし、まるっきり起きない場合もある」
「今回は?」
「今回は邪竜が花嫁のために大暴れって感じだろ」
声に出さなくてもその場にいる(ミュゼ以外の)全員が納得した。
簡単に言えば、傍迷惑な自己中女の自己陶酔に付き合わされた……という結論だった。
「………なんすっかね……この、真実に辿り着いた感があるのに、すっごく残念感が漂うのは……」
カルロスが遠い目をして言うと、漂う残念感が増したようだった。
「まぁ、元婚約者と自己中女を潰すのは卒業式として。それまでは自由行動、何かあったら集合だな」
ラグナの言葉に全員が頷く。
そんな中、ミュゼがリオナに声をかけた。
「リオナ様」
「はい、なんでしょう?」
「ついでなんで、そのオトメゲーム?とかいうモノのラグナのシナリオを教えてくれませんか?」
「え?」
急にそんなことを言われると思っていなかったリオナは首を傾げる。
そんな彼女の疑問に答えるように、ミュゼは少し頬を赤くして……拗ねたような顔で答えた。
「ローラ様がそのシナリオ通りに動いて、ラグナに近づこうとしていたのは気分が良くなかったのです。でも、まだ期間はあるでしょうから、また近づくと思うのですよ。だから、今後の対策を兼ねて……」
「ミュゼっ‼︎」
「きゃぁっ⁉︎」
それを聞いた瞬間、ラグナはミュゼに抱きついた。
そして、蕩けるような笑みを浮かべながら何度も彼女の頬や首筋、目尻にキスを落とす。
「ふふっ……あのクソ女は殺したいほど嫌いだが、ミュゼが嫉妬から可愛いことを言ってくれることに関してだけは感謝してもいい……」
「むぅ。感謝でもあの方に好意的な感情を向けるのは嫌です」
「あぁ、ごめん。俺にはミュゼだけだ。可愛い人」
指を絡めて至近距離で見つめ合い、蕩けるような視線を向け合う。
林檎のように赤く色づく頬を撫でながら、二人は徐々に顔を近づけて……。
「リオナ、ごめんなさい。ストレートの紅茶を用意して下さる?」
胸焼けしそうなほどに甘い空気に耐え切れなかった、ヴィクトリアの声で中断された。
ミュゼとラグナが視線を向ければ、そこにはとても気まずそうな皆の顔。
ラグナはギロリッと邪魔してきた彼女を睨んだ。
「おい、聖女」
「えぇ、たとえ何を言われようと中断させますわ。せめて二人の時になさって下さいませ。お二人の纏う空気は甘ったる過ぎて砂吐きそうなんですわ。独り身にはキツイんですのよ。最近、聖女でありながら恋愛してみたいとか思うようになってきてしまったんですのよ。どうせ次の聖女が現れても、どうせ意に沿わない結婚をさせられるのが分かっていながら。叶わないと分かっていながら。この気持ち、分かりますの?」
聖女は、基本的に祭事でしか教会の外に出ることはできない。
そして、次の聖女を発見して上級貴族(教会に懇意にしている貴族と政略で)に嫁ぐか、または聖女を見つけずとも王族に嫁ぐ以外には自由になれないのだ。
ゆえにヴィクトリアは目の前の二人の、相思相愛の姿を見て自分もそんな風に恋愛をしたいと思ってしまった。
叶わないと分かっていながら……。
「なら、僕の花嫁になられますか?」
「……………へ?」
だから、ヴィクトリアはその言葉に固まってしまった。
それは彼女だけでなく、周りにいた人達も。
その声の主……レイファンは、ニコニコと微笑んでいた。
「えっと……レイファン様?」
「えぇ、それがいいです‼︎意に沿わない結婚をするぐらいなら、僕と結婚しましょう?僕は貴女をただ一人、慈しみ愛し抜くと誓います」
「はいっ⁉︎」
ボンッ‼︎なんて効果音がピッタリな赤面っぷりに、レイファンは益々笑みを深める。
そして、彼女の元に歩み寄るとその手を取って手の甲にキスをした。
「側室など取りません。貴女さえいてくれればいい。どうぞ僕の妃に」
「あ、ぅ、あ……」
顔を真っ赤にして涙目になったヴィクトリア。
彼はその頬に手を伸ばして……。
「あまぁぁぁぁぁぁぁぁぁあいっ‼︎」
リオナの芸人顔負けのツッコミで、中断された。
それを見ていたカルロスも「うわぁ〜」とケラケラ笑っている。
「いやぁ〜まさか、噂は本当だったんですね」
「僕の噂ですか?」
「はい。レイファン様が式典で聖女様に一目惚れされて……だからその歳まで婚約者を作らなかったとか」
「おや、噂になってたんですね。まぁ、事実ですが」
「えぇっ⁉︎」
レイファンは大人顔負け(実は十五歳)の色気を帯びた笑みを浮かべた。
「豊穣祭の式典で貴女に出会った瞬間、恋に落ちたんです。その後、直ぐに留学となりましたが……僕は貴女を忘れることはなかった。距離が離れようとも恋心は消えませんでした」
「そ、んなこと言われても……わたくし……」
「えぇ、いきなりこんなことを言われても直ぐに返事を返すことはできないと思います。ですから、口説きますね」
「………………え?」
「身も心も僕のモノにしたい。だから、口説き落としますから……覚悟しておいて下さい」
そう言ったレイファンは再び彼女の手の甲にキスをして。
そんな中でもミュゼとラグナも二人っきりの世界に旅立ち……残された国王、カルロス、リオナは遠い目をしていた。
「目の前で息子が聖女を口説き始めたんだが……」
「あはは、レイファン様、情熱的っすね‼︎ありゃあ肉食獣の目だわ」
「うぅぅぅぅ……甘い…甘すぎる……誰かこの甘い世界から救い出して下さい………」
とうとう両手を組んで祈り始めたリオナに、カルロスは「じゃあ?」と悪戯っ子のような笑みを見せる。
「リオナ様はオレと酒飲みでもして発散でもしますか?」
「……………はい?」
「余り者同士、仲良くしましょう」
ニコッと微笑むカルロスに、リオナは悟る。
カルロスは、同じ独り身だと言っていたが攻略対象達に負けず劣らずの顔立ちをしている。
だから、彼は女性に困らないだろうし、普通に恋人だっているはずだ。
そうなると、この中で唯一独り身になるのはリオナのみ。
そんな自分を哀れんで、お酒でも飲もうと励ましてくれたのだと。
「…………あはは、慰めてくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
「え?」
「カルロス様はお優しいですから、こんな寂しい独り身を心配して下さったのでしょう。でも、恋人さんを悲しませたら申し訳ないのでご遠慮します。そもそも、教会から出れませんしね」
「……………」
苦笑するリオナに、カルロスは瞳を瞬かせて……何か考え込む。
若干、意識を遠くしていたリオナは気づかなかった。
彼が「まぁ、後戻りできなくさせればいっか」なんて不吉なことを呟いていたことに。
そして……そんな空間で、それぞれのカップル(?)を見ていた国王は、静かに呟いた。
「…………シナリオの話はしないのか?」
そんな三者三様のカップル(?)達が話をできる状態になったのは、それから数十分後のことだった………。
多分、周りの人々(特に従者。何故、そのフラグを立てた?著者も自分で書いててこうなると思ってなかったので、びっくりしてます)目線を入れるかもしれませんね。
タイトル的にも気になる方がいらっしゃるかもなんで。




