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 どうやって食べるのだろう?

 伸ばした手でスコーンを掴みながら、ふと思う。食べ方とかあるのかな?


 そのまま噛り付く? ……大きくて食べにくいな。それに持ちづらい。

 なら、小さく千切る? ……ボロボロしそうだ。う~ん……。


 一体どうやって食べるのが正解なのだろう……。

 気にするなと言われていたが、醜態はなるべく避けたいし。


 ジャムとかもあるし、色々と目まぐるしい。

 どうすればいいのだろう……?


「どうかされましたか?」


 スコーン両手(大きすぎて片手じゃ持てない)に頭を悩ませていると、クロハさんがスコーンを二つに割きながら怪訝な顔で尋ねてきた。

 なるほど、そうすればいいんですね!


「い、いえ! ありがとうございます!」

「? お礼を言われるようなことは別に……? まあ、食べましょうか」


 クロハさんはスコーンを割いた後、ジャムをスプーンで掬い、スコーンの上へと乗せた。

 更に、白色の何かをその上に乗せる。山盛りだ。

 ああやって食べるのかー!


「あの……アリスお嬢様、そんなに見られますと……」

「えっ? あ、すみません! そ、その、その白いのは何かなーって思いまして!」


 食べ方がわからなくてじっと見ていたとは言えず、しどろもどろに答えてしまった。

 へ、変に映ってないといいけど。


「これですか? クロテッドクリームです」

「クロテッドクリーム?」


 初めて聞いた。クロ? 全然黒くないけど……。

 テッド? クマのぬいぐるみかな? 確かに黒い。(見た目に反して)

 ……ともかく、クリームと言っているし甘いのかもしれない。

 聞きなれない言葉に頭を悩ませていると、クロハさんが察して言葉を続けてくれた。


「例えるなら……そうですね……、バターと生クリームの中間のような物でしょうか」

「なるほど……」


 全然なるほどではなかったけど、取り敢えずそう呟いた。

 うん、実際食べてみればわかるだろう。考えても仕方ない。

 俺もクロハさんの真似をするように、スコーンを割き、ジャム類を乗せていく。

 こんな感じかな?


 比べようとクロハさんへと視線を移すと、スコーンを一口食べた後、ティーカップに手を伸ばし、紅茶を飲んでいた。よし! やってみよう!


 まず、スコーンを一口――。

 お、美味しい!! こ、これがスコーン!! 


 ジャムとクロテッドクリームをたっぷり乗せたおかげかスコーンのパサパサとした感じが全然しなかった。見た目とかすっごくパサパサしてそうなのにすっごいしっとりだ!

 赤いジャムはイチゴみたいな味がした。甘くて少しだけ酸っぱいが口いっぱいに広がって「ん~~!!」と思わず声が漏れそうになる。けど、それもクロテッドクリームがあってこそだ。

 クロテッドクリームのバターのような塩味がジャムの甘さを引き立てている。二つが合わさることによって口の中が幸せ! ジャムのしつこさをクロテッドクリームが和らげていて凄い良い塩梅だ! もう最高! 何個でも食べられそう!


 続けざまにもう一口――。

 やばいなこれ……。止まらない!!

 俺は衆目も気にせず、スコーンへと齧り付く。

 半分に割いたスコーンはあっという間に無くなった。


「あ、あんなに大きかったスコーンが一瞬で……」

「ふふ、アリスお嬢様、紅茶と一緒に召し上がりますとまた違った趣がありますよ」


 俺の食べるところを一部始終見ていたのか、クロハさんは楽しそうに笑った。

 み、見られていた!? は、恥ずかしい……。

 今、鏡で自分の顔を見たら赤面になっている気がする。

 それぐらい恥ずかしかった。けど、それでも食べたいくらい美味しかった。


 俺はスコーンの片割れにジャムとクロテッドクリームを乗せていく。

 こ、今度は落ち着いて食べよう! さすがに少しは気にしないと!


 クロハさんに勧められたまま、スコーンを口に頬張り、紅茶を流し込んでいく。

 あ、本当だ……。面白い!


 紅茶を口に流し込むと、クロテッドクリームが紅茶の熱で溶けてまた違った味がした。舌に油分が全然残らない代わりに、紅茶の甘さがスッっとめぐり身体へと染みわたっていく。不思議な感覚だ。それに……。

 紅茶の熱と相まって気持ちまで温かくなる。すごいな……、食べ方一つでこうまで変わるんだ……。スコーンってすごい。


「どうでしたか?」

「すごく面白いです! 食べ方一つでこうも変わるんですね」

「面白い、ですか? ふふ、アリスお嬢様は独特の感性をお持ちなのですね」


 美味しいものを食べているお陰か、クロハさんの口角も大分下がっている気がする。

 声音も柔らかいし、笑みも零れている。


「そうですか?」

「はい、ですがそれが魅力だと思いますよ」 


 最近も驚かされてばかりですから。

 そう付け足して、クロハさんは意味深に笑った。


 クロハさん、楽しそうだ……。


 少なくともワズディンさんが居た時はこんな表情はしていなかった。

 いや、イノリお姉ちゃん達の前でも見たことがないか?

 ここまで砕けていると言うか、ラフな感じはかなり珍しい。


 俺の知らないクロハさん。なんだか少し、……ドキッとするな。

 本当に親しい人にしか見せないそんな笑み、な感じがする。


「あはは/// おかわりです///」

「ふふ、どうやら問題なく食べきれそうですね」


 細く見つめられた目線にどうしていいのかわからず照れながら、俺はもう1つのスコーンへと手を伸ばした――。


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