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「この武器とかカッコイイです!」


 移動した先に、俺の想像していた通りの両刃の剣が立て掛けてあった。

 全長は70~80センチくらいの幅広の刃。柄は地味な銅色でどこにでもありそうなデザインだけどそれ故に惹かれるシンプルさ。THE剣! って感じがする。いいなこれ、欲しいかも。

 武器名を見るとブロードソードと書かれていた。なんか聞いた事がある!


「ブロードソードですか。一般的な片手剣ですね」


 察してクロハさんが答えた。

 どうやら珍しくも何ともない普通の剣らしい。

 まあ、そうか。地味だしな。

 だが、カッコイイのにはかわりない。俺はそっとブロードソードに手を伸ばした。


「いやいやお嬢ちゃん、それも無理だ思うぞ。他のにしたほうがいいぜ」

「や、やってみないとわからないじゃないですか!」


 大槌は重たすぎてそもそも持ち上げることすら出来なかった。

 けれどもこれはそんなに重たそうには見えない。俺にだって持つぐらいは出来るはずだ。


 柄を掴み、刃を上に向ける。

 ……何とか持つことが出来た!


「ど、どうですか……! ちゃんと持てましたよ……!」

「お嬢ちゃん、手が震えてるぞ~」

「アリスお嬢様、その辺で……」


 クロハさんは控えめに止めに入ってくる。

 ワズディンさんの言う通り、手がプルプルだ。

 だいぶ危なっかしく映っているに違いない……。


 ブロードソードは見た目の割に意外と重かった。

 もっと軽いものかと思っていたが、刀身がずっしりと重たさを感じさせる。

 クロハさんは片手剣と言っていたが、実は両手剣なんじゃないか?

 実際、俺は今ブロードソードを両手で持っている。これ絶対に片手は無理だ……。


 持つ前は、「カッコよく振り回してみたい!」なんて夢想していたが、そんな余裕はない。

 気を抜くと離してしまいそうだ。


 ――と思いながらも刃先が徐々に下を向いていく。


 その動きと連動して俺の体も自然と前のめりになるのは言わずもがな。身長の半分超の刀身を前にはどうしようもなかった。


「お、お嬢ちゃん!? なんで刃先をこっちに向けるんだ!?」


 体勢を立て直そうと、身体がよちよちと千鳥足。

 ちょうど刃先がワズディンさんへと向いた。

 距離にして1メートルもない。あと一歩踏み出せばかなり際どい。

 ここでトドメをー!! と、ふざけている場合ではない。マジでやばい!!


「人に刃物を向けてはいけませんよ」


 クロハさんの声が聞こえると、刃先が上へと上がっていく。

 振り返ると、後ろ手でクロハさんが俺の手ごと柄を握りそっと支えていた。

 き、危機一髪だ。危うくワズディンさんを成敗するところだった……。


 ほっと溜息が二人分漏れる。


「た、助かったぜ……」

「た、助かりました……」

「アリスお嬢様、ブロードソードはさすがに無理かと」


 クロハさんは平素と変わらぬ声音で優しく論す。

 その方がいいかもしれない。まともに扱えないし……。


「そうですね……あきらめます」

「ま、まぁ……お嬢ちゃんにはもっと似合いの武器が他にあるぜ!」


 危うく殺されかけたというのに、ワズディンさんは落ち込む俺を励ましてくれる。

 トドメー! とか思ってごめんなさい! ワズディンさんは良いハゲです! 少し見直しました。


 ワズディンさんに続くようにクロハさんも口を開く。


「そうですね、アリスお嬢様には他に似合いの武器があります。ただ……ブロードソードは止めましょう。あと他の剣類もです」


 剣類禁止令が出されてしまった。

 もしや、密かに『バスタードソード』とか『サーベル』と書かれた剣に手を伸ばそうとしていたのがバレていたのか!? 


 ……なんだか刀狩り令を出された農民の気分だ。いや、実際は知らないけど。

 おのれ豊臣秀吉! 我が野望を邪魔しおって!(クロハさんを恨みたくなかったので代わりに恨んでおく)


 クロハさんが言わんとすることは分かるので大人しく従うことにした。


「はい……」



 ◇◇◇



 クロハさんの背中を追うように後ろを着いて行く。

 なんでもおすすめの武器があるようだ。


 剣類が置いてあるコーナーから歩くほど数十歩。

 明らかにさっきよりも長物の武器が目につく。


「クロハさん、これって……」

「はい、槍です」


 クロハさんはあっけらかんと答えた。

 いや、見ればわかりますけど……。


 目の前には色々な種類の槍が飾られていた。


 木製の棒の先端に短く刃がついてるもの。

 刃先が斧のようになっているもの。

 薙刀のような片刃のもの。

 三日月型? みたいな変わり種みたいのもある。


 他には……三角錐の槍があるな。

 商品名を見てみるとランスと書いてあった。なるほど、っぽいな。

 と眺めていると、ワズディンさんが遅れて口を開く。


「ほほ~槍か。けどお嬢ちゃんに扱えるのか?」

「なんだか重たそうです」


 見るに、どれも先程のブロードソードよりも大きいものばかりだ。

 身長より大きいものしかないし、とてもじゃないが持てそうには思えない。


「いえ、そんなことはありませんよ。これとかは比較的に軽い方です」


 言いながらクロハさんは俺が一番最初に見た、シンプルな槍を手渡してくる。

 本当に軽いのだろうか……。

 試しに受け取り持って見る。どれどれ――


「さ、さっきのよりは重くはないです!」

「おお! ちゃんと持てている!」


 手にずっしりとした重みはあるものの、持てないということはない。

 先程のブロードソードのようなにふらつくこともないし、大分マシだ。


「重い金属部分が少ないですからね。先程のブロードソードよりかは軽いはずですよ」

「なるほど!」

「だからか、普段使わないから知りもしなかったぜ!」


 そういえば、クロハさんは昔は槍使いだったと言っていたな。

 道理で詳しいはずだ。経験則も混じっているだろうから説得力がある。


 けれども……、槍は俺には合っていないかもしれない。


「動かしにくいです……」


 軽く取り回そうと動かすが、身体がふらついてしまう。

 槍が長すぎて動かすと自然と体が引っ張られてしまうのだ。


「あわわ~」 


「駄目みたいだな……」

「そうですね……、これ以上軽いものもありませんし、致し方ありません」


 クロハさんは少し残念そうに俺から槍を受け取り、元の位置へと戻した。


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