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 店内をうろつくと色々な武器が置いてあった。

 刃物類、槌類、銃器類、よくわからない物まで、多種多様だ。


「クロハさん! ワズディンさん! 色んな武器が一杯です! 持ってみてもいいですか!」


 なんだか見ているだけでワクワクする!  

 例えるなら……そう! 初めて遺跡に入った時みたいな感覚だ!

 未知の世界に触れるというか、冒険心をくすぐられるような高揚感。

 さながら新しいおもちゃを手に入れた少年のように俺ははしゃいでいた。


「お、おう? そのぐらいならまあ……、おやっさんも怒らないと思うし大丈夫だが……」

「アリスお嬢様がはしゃいで…………、は! アリスお嬢様! 危ないですので気を付けてください!」


 クロハさん達は目を見開きながら俺の行動に驚いていた。まあ、無理もない。さっきまでは帰りたいムードを出していたのに、実際に武器を見たらこの態度だもんな。動揺しないほうがおかしい。

 けれども、俺にとってそんな二人の動揺は些細なことだった。


 男の俺にとって(注・体は女です)、目の前の武器の数々は興味が尽きない。

 ただ見ているだけでも「カッコいい!!」とか思っちゃうし、それを試せる、もとい手に持つことが出来るのなら、やる以外の選択肢はない。飽くなき(悪無き)探求心というか意欲関心が振り切ってしまうのだ。「か、身体が勝手に~!」とかそういうレベルで。


 だって武器だよ! 剣だよ! 憧れを抱かないわけがない!(俺談)これぞ男のロマンだ! 

 ――子供の頃に傘を使ってチャンバラごっことかしていたのが懐かしいな……。まさか本物を、実物を、目にして、触れるなんて……、感動だ――。


「おいおい、お嬢ちゃんが武器を目の前にして遠い目をしてるぜ……」

「アリスお嬢様、もしや記憶を――」


 言われて「はっ!」気が付く。なんだか昔の出来事を思い出していた気がする……。けれども依然として自分の名前などは思い出せない。精々「こんなことがあったなー」と断片的に頭に浮かんだだけだった。


 なので、俺にはその問いに、良い返事を答えることは出来ない。何一つ伝えられない。だから、お茶を濁すようにはぐらかすのが関の山だった。


「い、いえ! つい見とれてしまって!」

「そうでしたか……。……そうですよね、突然の変わりように驚きを隠せませんでした。申し訳ありません」

「なんで謝るんですか?」


 謝られるなんて思ってもみなかったので、ついつい聞き返してしまう。

 でも、なぜか疑問に思ってしまった。気になってしまった。

 どうしてクロハさんは謝ったのだろうと――。


「……いえ、何でもありません」


 しかし、クロハさんは俺の問いに目を逸らし、はぐらかすように答えた。

 何となく理由を知りたい。けれども俺もはぐらかしてしまった以上、強くは言えない。咎める気にはなれない。

 それに――。


「なあ? 何の話をしているんだ? 正直置いてきぼりなんだが……」


 ハゲディン、じゃなかった(あってるよ!)ワズディンさんがぽかーんと俺達の顔を右往左往しながら覗き見ていた。話題に着いて来れず言葉通り置いてきぼり状態になっている。

 まあ、所詮ワズディンさんだし無視すればいいだけの話なのだが、さっきみたいに雰囲気が悪くなるのは望ましくない。

 ただでさえ結構な精神的ダメージを武器屋の店主にもらっていたせいで余裕はあまりない、これ以上はオーバーフローしてしまう。


 なので、俺はこれ以上の追及はしなかった。


「……なんでもないですよ! それより武器です! 私これとか持ってみたいです!」


 言いながら手を泳がせて、適当に指をさす。


「おいおい、お嬢ちゃん。さすがにこれは無理だろう~」

「え?」

「そうですね。さすがに無理があるかと」


 ワズディンさんは僅かに小馬鹿にするように。

 クロハさんは口角を少し上げ苦笑いをするように。

 ――見るからに重そうな大槌を一瞥して、笑った。


「わ、私だって持てますよ!」

「おいおいお嬢ちゃん!」

「アリスお嬢様!?」


 笑われたのが癪に障ったので、俺は大槌へと手を伸ばす。

 やってみないとわからないじゃないか! (本音:どうやっても無理そう……)

 だが、男には引けない時がある! ある! ……けど今じゃないな。

 けれども一度伸ばした手は容易には引っ込められない。半ば意地みたいなものだった。


「ん~! ん~! びくともしないです~」

「まあ、持てるわけがないないわな」

「アリスお嬢様、他の武器にいたしませんか? それはその……、似合ってはいるのですが、どう考えても無理があるかと……」


 クロハさんは言葉を選ぶようにして、俺から大槌を放すように勧めてくる。

 クロハさんも言う通り、やっぱり無理だった。

 女の子の華奢な細腕では、持ち上げるのはおろか、動かすことさえ出来ない。いや、男の身体でも多分同じことになっているとは思うけど。

 というわけで、当然のごとく、あっさりと(意地はどこへいった!)大槌から手を放した。


「少し悔しいです!」

「あはは! 気にする事はないぜ! 俺も持てないしな!」


 それは何となくわかってた。ワズディンさんはだし。

 仮に持てたとしたら偽物と疑うレベルだ。それぐらい想像がつかない。


「ほ、他のを試してみてはいかがですか。こちらとかおすすめですよ」

「……そうします」


 クロハさんは気遣ってだろう、明らかにサイズの小さい武器を勧めてくる。

 それを見て俺は不貞腐れながら了承した。


「ドンマイだぜお嬢ちゃん! あはは!!」

「もぅ、笑わないでください!」

「ワズディンさん、お嬢様を馬鹿にするとはいい度胸ですね。もう一度縛られたいですか? バイ――」


「わ、悪かった! 勘弁してくれ! あれは二度とゴメンだ!」


 ワズディンさんは、クロハさんを前に情けなく狼狽する。

 それを見て、幾分かの留飲を下げながら、別の武器のもとへと向かった。


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