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 店内で放心するように立ち尽くすこと数分。ワズディンさんはゴミ捨てを終え、店内へと戻ってきた。


「ふぅ、つかれた疲れたぜ」

「ちゃんと捨ててきたんだろうなぁ?」


 入って来るなり、武器屋の店主の訝しむような声音がワズディンさんを迎えた。

 ワズディンさんは背筋をキリッと伸ばし、敬礼する。


「も、もちろん! 抜かりはないであります!」

「ならいい、好きに見ていけ。なんだったら買っていけ」


「そこのメイドとお嬢もな」と付け足し、武器屋の店主は店の中心にある定位置?(作業場なのかな?) と思われる場所へと戻っていった。


「……嵐は去ったみたいだな」

「怖かったです……」


 武器屋の店主が見えなくなるのを確認して、ワズディンさんは身体を弛緩させる。

 それを見て、俺も自然と肩の力が抜けていた。飛び火がこっちに来るかもと思って、見てるだけで少しハラハラしたよ……。


「嵐? ですか?」


 クロハさんだけ、意味がわからないように首を傾げる。どうやら、クロハさんは無傷のようだ。

 ワズディンさんが嵐って言うのが何となくわかる気がする。ただ店に入っただけなのに、精神的に多大なダメージを受けたしな。被害尋常、まさに嵐のような出来事だった。

 もっとも、元々は俺達が店を荒らしたのが悪かったのだけども……。(原因は武器屋の店主の誘拐発言だった気がするけど)

 ……店を荒らして嵐を呼び寄せてしまったというところだろうか。……上手くもないし、酷い話だ。聞く人と聞いたら座布団を没収しかねない。(元からないのでその心配は無用だけど……)


「クロハさんが少し羨ましいです……」

「わかる! わかるぞ~お嬢ちゃん!」

「? なんの話ですか? もしや、また意味わからない系の生まれ変わらせてもらった系の話ですか?」


 頭にはてなを浮かべるクロハさんを他所に、俺とワズディンさんは顔を見合わせる。そして俺達は短くため息をこぼした。



 ◇◇◇



「……それで、ワズディンさん。私達はどのような目的で武器屋に連れてこられたのでしょうか?」


 気を取り直してクロハさんがワズディンさんに尋ねる。

 確かに、俺もそれをずっと知りたかった。


 『行ってみてからのお楽しみだ!』なんて大事(おおごと)を言っていたのに、実際は精神的被害を負っただけだ。楽しみなんて今のところ一つもない。


 もっと言うならば『後悔させないぜ!』とも言っていたが、俺は既に後悔しているし……。正直、「来るんじゃなかった……」と愚痴をこぼしかねない勢いすらある。期待していただけに、肩透かしというか拍子抜けだ。


「ああ! おやっさんのせいですっかり忘れていたぜ!」


 頭を掻きながら、ワズディンさんは「そういえばそうだったぜ!」と言いたげに笑う。

 いや、忘れちゃまずいだろう。気持ちはわかるけど。


「それで目的は何なんですか? 私の役に立つとか言ってましたよね」


 長居をあまりしたくない、という思いを込めながらジト目でワズディンさんを見つめる。

 役に立つ云々の話も、もう信頼ゼロだった。


「ああ、それなんだがな……、実はお嬢ちゃんの武器を探そうと思ってたんだ」

「私の武器ですか?」

「アリスお嬢様のですか?」


 クロハさんと俺は同じ疑問を浮かべる。

 どうして俺の武器を探す必要があるんだ? 

 それに答えるようにワズディンさんは言葉を返す。


「遺跡に行くんだったら、お嬢ちゃんも武器の一つでもあった方がいいと思ってな」


「我ながら天才的発想だぜ!」と言いたげにワズディンさんは鼻下を指で擦る。

 確かに! 武器があれば戦えるし、いいかもしれない!

 実際、アジーン遺跡では何もできずに足でまといになっていた。

 武器を手にして、俺も戦うことができるようになるなら、みんなの役に立てる! ある意味願ったり叶ったりだ。


 けれどもクロハさんはそれを良しとしなかった。


「それはお嬢様を戦わせるということですか」


 クロハさんは冷たい声音でワズディンさんに問う。

 どこか棘のある言い方だ。

 ワズディンさんはたじろぎながら答える。


「い、いや~、そんなつもりはない! 身を守るために持っていたら役に立つんじゃないかなーって、な! ハハハー!」


 最後のほうは笑って誤魔化していた。さすがワズディンさんと言ったところだ。ブレブレ。

 そんな軽い言葉を受けて、クロハさんはワズディンさんを一瞬だけ射竦め、笑みを浮かべる。


「そうでしたか。身を守るために。いいかもしれませんね」

「そ、そうだろ! ――いや~我ながら天才的な発想だ! お嬢ちゃんもそう思うだろう?」

「いや、天才的ではないと思います」


 俺がそう答えると、クロハさんとワズディンさんは微笑を浮かべ、どこか張りつめた空気が払拭された。な、なんだろう、この店は気まずくなる名所か何かなのだろうか?


「まあ、と言う訳だ。折角だし、お嬢ちゃんにお似合いの武器を探してみないか?」

「いかがなさいますかアリスお嬢様?」


 ワズディンさん達は一応気を使ってか、尋ねてくれる。

 断ることもできるんだろうけど、なんだか断りづらいな……。


「そうですね、折角ですから」

「かしこまりました」

「よし、決まりだな! さっそく見てみるか!」


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