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「ごちそうさまです」

「いやー、うまかった! 満足満足! ありがとな、お嬢ちゃん達」

「いえ、ご満足いただけたなら何よりです」


 各々、テーブルの上のランチプレートを完食し、一息を着く。

 お腹も膨れたし、少し眠くなってきたな……。

 出そうになったあくびを噛み殺しながら、ワズディンさんに「いえいえ」と返す。


 それを見て、ワズディンさんは形容しがたい変な顔で笑った。少し行儀が悪かったかもしれない。もう少しお嬢様らしく振舞わなければ。(と思いながら、実際には何をしていいのか分からないので変化はない)


「アリスお嬢様、この後はいかがなさいますか?」

「そうですね……」

「なんだ、特に決まっていないのか? だったら俺の行きつけに行くのはどうだ? お嬢ちゃんにも役に立つかもしれないぞ」


 考えあぐねる俺に、ワズディンさんはちょっと得意げに勧めてくる。

 俺にも役立つ? 何が役立つのだろうか。

 気になるのでワズディンさんの続きの言葉を待つように顔を向けるが、ワズディンさんはもったいぶるように口を止めてしまう。


「何が役立つんですか?」

「それは行ってみてからのお楽しみだ!」


 ワズディンさんはさらにじらしてくる。

 む、気になるな! まあでも、「行ってからのお楽しみ」と言ってるし、ワズディンさんなりに俺を驚かせたいのかもしれないな。行き先も決まっていないし、ワズディンさんに任せてもいいか。


「そこまで言うなら、ワズディンさんの行きつけに行きます」

「さすがはお嬢ちゃん! 後悔させないぜ! さて、じゃあ早速行こうか!」


 言いながらワズディンさんは立ち上がる。

 それを見てクロハさんは、「待って下さい」とワズディンさんを引き留めた。


「どうした?」

「いえ、一つお尋ねしたのですが、ワズディンさんの行きつけとは酒場ではないですよね? もしそうだとしたら私は反対させてもらいますよ」


「アリスお嬢様の悪い影響を与えかねませんから」とクロハさんは言葉を続ける。


 ああ……なるほど、確かにその線はありそうだ。

 ワズディンさんって、なんとなく酒場で飲み歩いてくだを巻いてそうなイメージするもんな。酒場=行きつけと言われても違和感がない。


 ワズディンさんの事だから、「お嬢ちゃん! ここで大人の社会勉強だ! 役に立つぞ~!」なんて言いそうだ。……凄くありそうだ。


 そう考えると、クロハさんの言う事も的を得ているかもしれない。

 これは行き先を考え直す必要があるかもしれないな。


 などと思案していたのだが、


「酒場? そんな昼間から行くわけないだろう。――安心してくれ、別にお嬢ちゃんに悪影響を与えようとは思っちゃいないぜ! それに言ったろ、『役に立つかもしれない』って」


 ワズディンさんは即座に否定した。


 クロハさんと俺はお互いに顔を合わせてから、視線だけで「違うんですね……」と意思疎通してしまった。すっかり信じ込んでいただけに拍子抜けだ。


「そ、そうでしたか。疑ってしまって申し訳ありません」

「いや、別に構わないさ。それに酒場が行きつけなのも間違ってないしな」


 あ、やっぱり行きつけなんだ。

 イメージ通りで安心する。

 やっぱりワズディンさんと言えば酒場だもんな(一回も見たことないけど)


「ワズディンさん、似合ってますよ(偏見)」

「? そうか、なんか照れるぜ!」

「お引止めしてすみません。それでは行きましょうか」


 クロハさんは会計を済ませて、店を出る。


「ありがとよ、また来ておくれ」



 ◇◇◇



 パイ屋を出てから徒歩5分。

 俺は見知らぬ大通りへと足を踏み入れていた。


「なんだが……強そうな人たちが多いですね」


 見渡すと、いや、見渡すまでもなく。

 全身鎧で身を包んでいる人達や色々と武装をした人たちが目立っていた。

 なんだか遺跡の前で会った人たちみたいなのが、たくさん歩いているなー。


「そりゃー大抵は冒険者だからな。俺みたいに、俺みたいに!」

「なんで二度言ったんですか……」

「ワズディンさん、まさかと思いますが目的地はこの通りの何処か――」

「着いたぜ! ここが俺の行きつけだ!」


 クロハさんの質問を遮るように、ワズディンさんが到着を告げる。

 ある意味答えたともいえるのか? 目的地を聞こうとしていたみたいだし。


 看板を見ると武器屋と書いてあった。

 ん? 武器屋? 


「どうしたお嬢ちゃん、ボーっとして」

「いえ、もしかしてここですか?」


店の入り口の前で俺はワズディンさんに尋ねる。

その時、店の中から屈強そうな男が出てきて横切った。


「そうだが? なにか問題でもあったか?」

「いえ、問題は特に……」


無いとは言えないのが本音だ。

……俺の場違い感が半端ない。

さっきの男の人も俺を二度見していたし! 明らかに俺の来るところじゃない!


「なら入ろう。お嬢ちゃんにも似合いの物があるはずだぜ!」


 言いながら親指をサムアップした後、ワズディンさんはやや強引に(けれども気遣っているのか軽く)手を引いて店へと連れ込んだ。


「まさかと思いましたが、……武器屋ですか」


 後ろでクロハさんの短いため息を漏らした気がした。

 ――多分気のせいじゃないよな……。


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