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 パイ屋を選んだのには理由がある。


 一つ。――行ったことがあるから。


 知らない店に入るのは少し勇気がいる。

 現に装飾品屋では、店内の雰囲気を知らずに入ってしまい、気まずい思いをしてしまった。

 あの経験はなるべくしたくない。初見は避けるべきだ。

 なので、唯一知っている(行った事のある)食事の出来る場所。すなわちパイ屋である。


 二つ。――離れた距離にあるから。


 パイ屋はこことは少し離れた大通りにある。

 なので、自然と移動ができ、ワズディンさんとの合流がしやすい。

 ここから離れたかったし、都合も合う。


 三つ。――近辺に飲食店が無いから。


 現在俺達が居る大通りが、仮にいうならば服飾関連の大通りだ。(ちゃんとした名前があるかもしれないので仮)

 服飾関連の大通りには名前の通り服飾関連のお店ばかりで飲食店が無い。

 なので、どのみち食事をするために移動しなくてはならなかった。


 ちなみに移動先は……食料品の大通り(仮称)。

 以前、ラビとおつかいをした(後をつけた)付近だ。


 食料品の大通りは、名前の通り食に関する店が大体揃っている大通りだ。

 食品関連のお店や飲食店が立ち並んでおり、食事をするならここに行けば何とかなると思う。

 当然というか、目的のパイ屋もこの大通りの一角にある。


 四つ。――単純に食べたかったから。


 以前食べたチキンパイは、シロハさんがオススメするだけあってもの凄くおいしかった。

 パイはサクサクだし、お肉はジューシ!

 ……あの時は密かに小さい胃袋を呪ったなー。

 ホント、たくさん食べられるシロハさんが羨ましい……。

 ……ともかく、また食べたい、また行きたいと思っていた。


 以上、四つの理由があって俺はパイ屋を選んだ。

 理由付けの優先度があれば大体こんな感じ。



 4≧3>1≧2



 うん、ワズディンさんはかなり優先度が低いな。まあ、チキンパイと比べると仕方ないよね。


 そんな訳で、俺たちは服飾の大通りから食料品の大通りへと移動した。



 ◇◇◇



 食料品の大通りまでの道中、俺はチラリと後ろを振り返る。


「ちゃんと着いてきてますね」

「そのようですね」


 振り返ると、予想通りワズディンさんはコソコソと後ろをつけていた。

 ここなら、さっきまでと比べて人通りもかなり少ない。声を掛けるなら今だな。


「ワズディンさん!」


 俺はクロハさんから離れて、ワズディンさんの元へ駆け寄る。

 するとワズディンさんは驚愕しながら俺を凝視してきた。


「か、完璧に隠れていたはずなのに見つかるとは! ……さすがはお嬢ちゃん、やるな」

「……あれで隠れていたんですか?」

「ああ、どうやらお嬢ちゃんには通用しなかったようだがな!」


 どうやらワズディンさんはあれで隠れていたつもりらしい。

 どこら辺に隠れている要素があったのだろう?

 頭なんか日光が反射して輝きまくっているのに……。

 それに俺以外もばっちり視認されていたと思う。

 馬鹿みたいに悪目立ちしていたし。


 まあ、そんなことは今はいい。本題に移ろう。


「そんなことよりワズディンさん、一緒に食事をしませんか?」

「へ?」


 ワズディンさんは予想だにもしていなかったのか、アホ顔で呆ける。

 まあ、一度は同行を断っているし(クロハさんが)、誘われるなんて思ってもみなかったのだろう。

 そんなことを思案していると、ワズディンさんは思い出したかのように(でもアホ面のまま)口を開く。


「い、いいのか?」

「はい、いつまでも不審……後ろを着いて来られると困るので」


 危ない危ない。思わず不審者と言いかけてしまった。

 あの様子じゃ自覚は全くないみたいだし、不審者に見られた事実は知らない方が良いだろう。


「お、おう、そうか、すまなかった。……ん? 不審?」


 納得しきれていない顔をしながら変なところに感づく。

 ワズディンさん! 聞きたいのはそんなことじゃないです!


「ともかく! 来るんですか! 来ないんですか!」

「い、行く! 俺も同行させてくれ!」

「ならコソコソしないで一緒に並んで歩いてください。クロハさんもそれでいいそうですから」


 確かめるようにワズディンはクロハさんの顔色を窺うよう。

 それを見てクロハさんは笑みを浮かべることはせず、短く「構いませんよ」と告げた。


 クロハさんの言葉に安心したのか、ワズディンさんは再び俺に向き直る。


「へへ、俺はてっきり『着いて来ないでください!』と言われると思ったぜ!」

「声真似が気持ち悪いです。やっぱり着いて来ないでください」

「わ、悪かった! 勘弁してくれー!」


 踵を返してクロハさんの元へと戻る。

 背中の方から情けない声が聞こえるが無視しよう――


<通りすがりの親子>

「お母さん、ハゲが泣いてるよ」

「こら、見ちゃいけません!」


<一部始終を見ていた老夫婦>

「情けないのう」

「情けないですね~」


<クロスト在住の住民。窓より>

「うっさいぞー!」

「子供が起きちゃったじゃない!」

「うぎゃぁぁぁあああ!!!」


<ハゲディン>

「お嬢ちゃん~! 待ってくれ~!」


 ――などと思っていたが、ワズディンさんが悪目立ちし始めたので、


「アリスお嬢様。放っておきますと、その……」

「はぁ~、仕方ないですね……」


 最終的には同行を許可した。


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